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カカの天下  作者: ルシカ
391/917

カカの天下391「白い日の天罰?」

「困った」


 こんちは、トメです。突然ですけど困りました。


 何が困ったかといいますと、今日は日曜日なのですよ。


 みんなが待ち望んでいた、世間の大体の人が休みの日。


 こんな日は妹で遊ぶに限るんだけど……悲しいかな、カカはお楽しみ会の準備に夢中で付き合ってくれません。


 え、つまりは何が困ってるのかって?


 あれですよ。


 暇なんです。


 さぁ困った。何をしよう。


 いつもなら適当にのんびりダラダラするところだけど、近頃ずっとカカと遊んでないからちょっと刺激不足なんだよね。


 誰かに電話でもして遊びに誘ってみるかな。


 携帯をいじりいじり……こういうときに一番誘いやすいのってやっぱテンか。ポチっとな。


 数回のコール音の後、相変わらず無愛想なテンの声が聞こえてきた。


『おう、何だ』


「よ、テン。今、暇か?」


『あぁすんごく暇だ』


 よし、暇つぶし相手ゲットかな。


「や、僕もカカが構ってくれないから暇で暇でさー」


『お楽しみ会の準備だろ? おまえんちのカカがなんでも仕切ってくれてるからこっちは大助かりだよ。だからオレが暇になる』


「うんうん、そんなに暇か」


『おう、暇で暇で仕方なくてな。誰かの誘いを待ってたくらいだ』


「よし、じゃあ遊びに行こ――」


『でもトメとは遊ばねぇ』


 プツッ。ツー、ツー、ツー……


 あ、れ?


 切られましたよ?


 あの、あれでしょうか。そんなに暇で暇で仕方なかったのに僕のお誘いを断るということは……もしや、先日のホワイトデーのこと、まだ怒ってらっしゃる?


 うーむ。ゲームのためとはいえ、せっかくチョコくれたんだし……姉くらいの誠意を見せるべきだったかな。


 ちなみにその姉、実は先日僕と飲んだ後に『ホワイトデーに皆に渡すお返しを用意するために旅に出る』とか言って街を出て以来、ずっと音信不通だったりする。


 まぁよくあることなので心配はしていない。姉は遅刻はしても約束は破らないタイプだ。近々「遅れてごめーん」などと言いながら皆へのお返しを持って現れることだろう。


 さて、そういうわけで姉も暇つぶし相手にはならない。あとは……うーん、サエちゃんやサユカちゃんもお楽しみ会で忙しいだろうしなぁ。


 ……サラさんにでも連絡してみるかな。


 コール中。ん、つながった。


『もしもし』


「もしもし? サラさん、今何してる?」


『女の対決中です!!』 


 暇、じゃなさそうね、コレは。


「そ、そっか。頑張ってね」


『絶対負けません!』


「う、うん。じゃあね」


 すごい燃えてた。なんか恐かった。何やってんだろね一体。


 ま、いいや。そんなことより重要なのは、もう誘うアテがないということだ。友達少ないんだよね僕。


 んー。


 たまには父さんと交流してみるとかはどうだろう。あの人、大体は暇だし。


 ぴっぽっぱ、っとコール開始。


 なかなか出ないな。


 まだかな。


 あ、やっと出た。


「もしもし、父さん?」


『なんだ息子よ――ちょっと待て――今取り込み中で――』


 妙に途切れる声。何やってんだろこの人。


 電話の向こうの音に耳を澄ませてみる。


 これは、走る音? 


 そう、たくさんの人が走ってる音がする。


 銃声がする。


 爆発音がする。


 知らない男の人の声がする。えっと、なんて言ってるのかな?


『銃より刀のほうが強いだと! 馬鹿な!? ぐはぁっ』


 くぐもった男の声が聞こえ、さらに爆発音。ってぇ、ホントなにやってんですかお父さん!?


『――これで十二人目っと、すまない。いま仕事中でな。何の用事だった?』


「え、えーと」


 まさか「さびしいから相手をして」などと、十二人以上の誰かさんを相手にしてるっぽいお方に言えるわけもなく。


「あ、えっと、うん。お仕事がんばってね」


『そんなことを言うために電話してきたのか? はっはっは、可愛いところもあるじゃないか。この仕事が終わったら寿司でもおごってやろう』


「うん、ありがとー。ハハハ」


 会話しながらも電話の向こうから聞こえてくる『げはっ!!』とか『隊長! 手榴弾はどこですか!?』とか『ヤツが使用中だ! 誰だおめおめと盗みを許した愚か者は!?』とか『たった一人に……我らが、全滅?』とか、なんともコメントしがたい内容の声が聞こえてくる。なんか日本語じゃない言語も混じってた気がした。


 忍者って大変なんだね。


 電話してたせいで命を落とされてはたまらないので、適当に話を切り上げて電話を切る。


 さてさてさて。またもや暇に逆戻りなわけだけど。


 あとは……母さんか。


 あの人は基本的に忙しいからなぁ。日曜日といってもきっと……や、でも。息子としてたまには声を聞かせてあげるのも大事だよな、うん。


 でも母親に電話するのって、なんか恥ずかしいな。


 よし、部屋の掃除してからかけよう。


 ……よし、掃除終わり。


 さぁかけよう、と思ったけどお昼ご飯の時間だ。向こうも昼食かな。ご飯食べてからにしよう。カカはサエちゃんサユカちゃんたちと一緒に食べるらしいから、一人で昼食だ。


 もぐもぐもぐ。


 よし、今度こそ!


 と、思ったそのとき。ピンポーンと鳴ったので玄関へ行くと、新聞の業者が。


「今ならいらない新聞紙をつけるよ?」


 新聞に新聞つけてどうすんの。 


 あしらったと思ったら今度は宗教の勧誘が。今なら幸せになれるケロリンがもらえるらしい。いらん。何教だよ。


 次は占いの押し売りが。明日は80%の確率で晴れる! と断言していた。携帯で天気予報を見ると70%だった。それを見せると「惜しい!」と呟いて帰っていった。


 さらに化粧の販売員がなぜかとてもしつこく勧めてきた。ケンカ売ってんのか。 


 最後には地獄への勧誘者という方がとても熱心に死後の世界を語ってくださった。ノーコメント。


 そして、なんだかんだやってるうちに時刻は夕方。


「なにやってんだ僕は……」 


 妙に疲れてトボトボと居間に戻る。さて、今度こそ電話しよう。恥ずかしいなんて言ってられない、こんな寂しい日は母さんと話して癒されるに限る。


 そう思って携帯をいじっていると、不意につけっぱなしだったテレビが目に入った。


『笠桐結乃、特別インタビュー。生放送!』


「お仕事ご苦労様です!!」


 とりあえずテレビを蹴った。


「孤独だ……」


 呟いた瞬間、携帯にメール着信が。


『今日はサエちゃんちで夕飯食べるね』


 夕飯も、僕一人?


「僕、何か悪いことしたかな」


 さらにメールがきた。


『やっぱこっち泊まるわ』


 マジで今日ずっと一人か。


 泣ける。


「友達……増やそうかなぁ」


 そんなことを呟きながら、母さんのインタビューをぼけーっと眺める僕でしたとさ。


 はぁ、寂しい。


 幸せになれるケロリン、もらっとけばよかったかな。


 いつも恵まれてるトメ。

 誰かしら相手がいてツッコんでるトメ。

 そんな彼にもこんな日があったりするのです。


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