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カカの天下  作者: ルシカ
388/917

カカの天下388「白い日のアイテム 前編」

「問題は衣装か……」


「うん。タケダ君にネット通販とかで探してもらったんだけどー、なぜだかそういうのってすっごく高くて買えなかったんだってー」


「なんで高いんだろね。ほしいのは魔法使いの衣装とか、普段使わないような服なのに。使わないなら安くしてくれてもいいのにね」


 ども、首を傾げつつお昼を休んでいるカカです。


 今日も今日とてお楽しみ会の相談中。そろそろサユカンくるかな?


「や、やっほ……カカすけサエすけっ」


 お、噂をすれば。って、あれ。なんでもじもじしてるのサユカン。トイレ?


「あのさ、朝から聞こう聞こうと思ってたんだけどっ」


 トイレを?


「今日のトメさんって、どんな様子だった?」


 違った、惜しい。


「どんな様子って……いつもどおりにおいしい朝ごはん作っていつもどおりにダルそうに会社行ったけど」


 なんでごはんは喜んで作るのに会社は面倒そうなんだろ、あの兄。


「あ、いいなートメお兄さんの朝ごはん。煮物とお漬物がおいしいんだよねー」


「トメ兄ってそういうの寝る前に用意しとくからね、味が染みてるんだよ」


「わ、わたしも食べたい――って、そんな場合じゃなくてっ」


「そうそう、衣装をどうするかが問題でさ」


「衣装ならわたしにアテがあるからっ! それよりも! 今日が何の日だかわかってるのっ!?」


 今日?


 何かあったっけ。


「あー、そういえばそうだったー。今日ってああいう日だったねー」


 ああいう? サエちゃんの視線の先を追うと、そこには。


「はいはーい皆さん! アイドルアヤへのプレゼント受付はここですよー!」


「はい、受付しますので並んで並んでー。渡したらこの名簿に丸してね。丸ついてない人に後で回収しにいかなきゃならないから。すげーだりぃけど」


 他のクラスから違う学年までぞろぞろと集まってくる男子たち、その中心にいるアヤちゃんとその下僕、ニシカワ君。あぁ、そっか。


「今日ってホワイトデーだったんだ」


「バレンタインデーのときにお姉さんにチョコを全部食べられたし、関係ないと思って忘れてたー。危ない危ない、ちゃんとお姉さんから何かもらわないとー」


 おお、そうだ! 姉に何か貢がせるんだった。


「教えてくれてありがとサユカン。じゃあ何をたかるか相談しよっか」


「そんなことはどうでもいいのよっ」


 はて? じゃあ何が問題なんだろう。


 私たちって結局お姉にしかチョコあげれなかったのに。


 唯一トメ兄にあげれたのはテンカ先生で――って、あ。


「トメ兄、テンカ先生に何あげるんだろ」


「それよっ!!」


「あー、そっかー」


 なるほど、サユカンにしてみれば今日のトメ兄の行動でテンカ先生との仲が進展しないかどうかが心配なわけだ。


「そういえば昨日、トメ兄あてに通販でクッキーが届いてたような」


「ど、どんなクッキー!?」


「形がハートだったらアウトだねー」


「形は普通だった。だけど、たしか、『びやクッキー』って名前で」


「びや……? 変な名前ねっ」


「たしか小さく『びやく入り』って書いてあった」


 びやく、ってなんだろう。私はわからない。サユカンもきょとんとしているところを見ると知らないらしい。


 サエちゃんは――あれ、なんか、すんごい驚いてる?


「び、びやくぅー!?」


「どしたのサエちゃん。びやくって何か知ってるの?」


「う、うんー。びやくっていうのは魔法の薬でね、飲んだ人は飲ませた人のことをメロメロに好きになっちゃうのー」


「魔法っ!? ば、バカねぇサエ。そんなのあるわけ――あ、でもわたしの持ってる漫画にもチラッと名前だけ出てきたことあるかもっ。たたた確か、こんな漢字よねっ」


 サユカンは私のノートを勝手に取り出してサラサラーっと『媚薬』という漢字を書いた。


 むずっ! こんな字書けるなんてサユカンすごいなぁ。


「そうそうー、この間お父さんが持ってた通販カタログを暇つぶしに読んでたら、それがあったんだよー。その薬は本当にあるんだよー」


「じゃ、じゃあトメ兄がそれをテンカ先生にあげたら……」


「どうなるのよっ」


「私の想像だけどー。きっとー……」




『トメ……オレ、なんだか身体が熱い』


『へぇ、なぜだい?』


『オレ、おかしくなっちまったのかな。トメを見てると、なんだか……ぽっ』


『はは、僕なんかテンに会ったときからずっと胸が熱くて熱くて困ってるんだぞ?』


『そ、そうだったのか』


『ほら、僕の胸を触ってごらん』


『すごい熱さだ……じゃあオレの胸も触ってくれ』


『あぁ……愛してるよ、テン』


『オレも愛してるぜ、トメ』


『アイラブユー、テン』


『ミートゥー、トメ』


『我愛称、テン』


『謝謝、トメ』


『イッヒリーベディッヒ、テン』


『ダンケ、トメ』




「きっとこんな具合に世界各国の言葉で愛してるって言い続けることにー!」


「気持ち悪いぃっ!! そんなトメさんヤダ!!」


「テンカ先生も気色わるっ!! 『ぽっ』ってなに!?」


 大変だ。


 なんか私の周りの世界が崩壊する勢いで大変だ!


「学校終わったら集合だね。トメ兄がそのクッキーを渡すの、断固阻止するよ!」


「わかったわっ!」


「おーっ!」


「ヤー!」


 いま、私たちの世界を守る戦いが始まる。


 あまり前編後編と続けたくなかったのですが……ホワイトデーだから仕方ないですね!

 しかし今回のトメとテン……自分で書いててこんなこと言うのもなんですが。


 きーもーちーわーるーいー笑


 いやまぁそれが良いって人もいるでしょう! 多分^^ちなみに最後のサエちゃんの「ヤー」はドイツ語で「はい」という意味です。

 

 ところで今回のアイテムはこちら


『びやクッキー』 未鑑定


 このアイテムを鑑定しますか?


→ はい

  いいえ


 鑑定結果まであと一日お待ちください。

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