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カカの天下  作者: ルシカ
384/917

カカの天下384「チェンジ! 前編」

「ただいまー」


 今日は土曜日だけど休日出勤でした。たまった仕事を片付けた僕は、少々お疲れながらも無事に帰宅したところです。


「おかえりさいー」


「ふぅー、今日は疲れたよ」


「お疲れさまー」


 疲れたー、というのを強調するように目のまわりを指でぐりぐりマッサージ。


「どうしたのー?」


「や、ほんと疲れたみたいでさ。目が」


「変なものでも見えるのー?」


 うん、なんかありえないものが見えるんだ。


「カカ、しばらく見ないうちにちょっと背が伸びたな」


「そうかなー?」


「髪はすんごく伸びたな」


「もう腰まで届くよー」


「喋りかたも伸びてるな」


「こればっかりは直らなくてー」


 皆様、もうお気づきでしょう。


「……なんでサエちゃんがカカの服着てここにいるんだ?」


 サエちゃんが遊びに来ているだけなら特におかしなことはない。でもいつもロングスカート派なサエちゃんがカカのジーンズをはいてるのは違和感がある。喋り方も心なしかカカっぽい気がするし。


「それはですねー、演技の練習なのですよ」


 サエちゃんの話を要約すると。


 お楽しみ会の劇に向けて演技の練習がしたい、だから一日だけカカがサエちゃんを、サエちゃんがカカを演じてみよう、ということらしい。


「一日ってつまり……このままカカのマネしながらうちに泊まるのか?」


「そのとおりですー。カカちゃんは私のうちに泊まります。ちゃんと知らせてありますよー」


「サユカちゃんはその練習しないのか」


「サユカちゃんはセリフが多いのでー、もう台本を渡して覚えてもらってますー」


 そっかぁ。


「気になりますかー?」


「や、おまえらの今までのノリなら、こういうときはサユカちゃんがきそうだなーと思って」


 あ、あれ。なんか睨まれてる?


「トメお兄さん……物事には限度ってものがあるんですよー?」


「え。あ、はい、すみませんでした」


 思わず謝ってしまったが、なんで怒られてるのかはよくわかってなかったりする。


「サユカちゃんばっかりいい思いするのもズルいですからねー」


「なんか言ったか?」


「なにもー。さ、いつもどおりに過ごしてください。私は今から改めてカカちゃんになりますのでー」


「あ、ああ。わかった。まぁサエちゃんちの人らが納得してるなら、いっか」


「どうせ最近のカカちゃんはお楽しみ会にかかりきりで、トメお兄さんは構ってもらえなくて寂しかったんでしょー。そのぶん私が慰めてあげますから。よしよしー」


「たまに思うんだけどさ。サエちゃん、歳ごまかしてないか?」


 図星だけどさ。




 さて、部屋で着替えながら考える。いつもどおりとは言ってもサエちゃんはサエちゃんだし。せっかくだから何かおもてなしをしてあげたいとこだけど……


 思いつかない。ま、とりあえずはカカとして扱ってみるかな。


「おーいサエちゃ――じゃなくてカカ。買い物いくか?」


「いきますー、じゃなくて、いくー」


 うーん、なんか変な感じ。


 そう思いながらも玄関へ、そして靴を――あれ。


「靴がない」


「隠したー」


 振り向くとニコニコ顔のサエちゃん(カカ中)。


「カカちゃんならこういうことするでしょ?」


「……たまにな」


 そしてよほどの思いつきが無い限りは大抵こういう簡単なところに隠す、と棚の影を覗くとビンゴ。


 手に取った靴の中には一枚の紙。


 書かれた文字は『はんばーぐ』


「……今日の夕飯希望か?」


「はいー」


 さすが親友。カカっぽい。 

 



「卵と牛乳持ってきてくれるか? あ、牛乳は二番目に安いのな」


「はーい」


 スーパーについた僕たち。「手伝うよー」というサエちゃんの申し出はカカらしくないけど、せっかくなのでお願いすることにした。


「あ、そういや食パンきれてたな、頼む。薄くて枚数多くて一番安いの」


「はいはーい」


 ぱたぱたと走り回るサエちゃん。いつもは静々と歩いてるからボーイッシュな格好も相まってすごく新鮮に映る。カカを意識してるんだろうけど……こういう活動的なサエちゃんも可愛いもんだな。


 そんなことを思いつつレジカウンターへ――あれ?


 ……首をかしげながらも会計を済ませる。


「おかしいな」


 スーパーの袋に入れる前にかごの中をあさりながら、もう一度首をかしげる。


「どうしまし――じゃなくて、どしたー?」


「僕の見立てより200円くらい多かったんだよ。計算違いかな」


「バレたかー。さすがはトメにぃー」


 あ、カゴに入れた覚えの無いお菓子を発見。


「これ、いつのまに入れたの」


「牛乳とか食パンの影に隠していれたー」


「……全然気づかなかった、なかなかやるな。たしかにカカならお菓子をこっそり入れようとはするだろうけど、そんなにうまくやらないぞ?」


「じゃーこれからやるってことでー」


「教える気か。教える気かその技を! やめてくれよ!? 200円って結構バカにならないんだからな!」


「トメにぃーのケチ」


 う、自覚はしてたがやっぱりそうなのか。半額の値札がつく時間を狙ってスーパーにくるようになったあたりからそんな気がしてたんだ。


「じゃー、これ。返品?」


 う……


「トメにぃー」


 そ、そんなに悲しそうな顔を、され、たら……あーもう!


「はいはい、今日は特別におっけーにしますよ」


「やたー!」


 カカ相手なら慣れてるから軽くあしらうんだけど、サエちゃんのおねだりにはまだ耐性がなかった。子供って卑怯だ。


「お礼にこのお菓子、あとで少しあげるねー」


『梅こんぶ、抹茶味』


 何味だよ。


 子供ってわからない。




 そんなこんなで夕食どき。


 さてハンバーグ作るかー、と準備していると背後に気配。


「む、現れたな」


「…………」


 今度は何をしかけてくる気だ!? 身構える僕。


 しかし――


 何か企んでいるかと思われたカカ中のサエちゃんは、なぜかぼんやりとこちらを見つめていた。


「えっと、カカ?」


「…………ん」


「さ、サエちゃん?」


「…………ん」


「え、えっと、一緒に作るか?」


「…………ん」


 こく、と静かに頷くサエちゃん。


 な、なんなんだ?


 その後、僕とサエちゃんは二人でハンバーグを作った。


 サエちゃんはハンバーグを作ったことはあるのか、慣れた手つきでハンバーグの形をペタペタと整えていた。


 その間、無言。


 たまに僕が話しかけても生返事しか返してこない。


 さっきまで楽しそうにしてたのに、一体どうしたんだ?


 僕、何かしたかな?


 今日のことを思い返してみる。


 ……何かされた記憶しかないな。


 本当、どうしたんだろう。このあとの夕食どうなるんだ? お通夜みたいにならなきゃいいけど……


 今回のお話。

 ……書いてみたら予想以上に長くなってしまいましたので続きものに。よくあることですが^^;

 さてさて、サエちゃんはどうしたのでしょうか……続きは明日〜

 あ、今日は日曜日じゃんとかいうツッコミはなしでお願いします笑 必ず一話の中で一日経ってるわけではないので^^;

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