カカの天下382「こだわりのカレー」
ふー、夕食のコロッケおいしかった。あ、カカです。
今日も今日とてお楽しみ会の準備で大忙しだった学校を終えた私。トメ兄お手製の夕食で満腹になり、機嫌よく自分の部屋のベッドにダイブしました。
はぁーおなかいっぱい、布団ふかふかー。
しばらくボーッとしながらゴロゴロしてると……机の上で光ってる携帯が目に入った。
もうちょっとゴロゴロしたかったけど仕方なく立ち上がり、手にとってみる。メールきてるね。カレーの人からだ。
『ねーねー、ちょっと愚痴聞いてよー。今うちの学校でお楽しみ会の準備してるんだけど』
ふむ、カレーの人ってメール相手の私がカカだって知らないんだよね。つまりこれは、同じクラスの人には言えないような文句を聞くチャンス!
仮にも指導者っぽいことしてるし、そういう不満はちゃんと受け止めていかないとね。えっと続き続き。何が不満なのかな?
『――でね、要望出したんだけど……全然カレーが出てこないんだよ! 他の人の要望はちゃんと入ってるのに』
……あ。そいや忘れてた。カレーどっかに入れるんだっけ。
うーん、でもこの人カレーを武器にするとかいって小道具作ってたし、それでいいんじゃないかな? でも要望は全部入れるって言っちゃってるしなぁ。仕方ない、どこかに入れるかな。
返信は……えっと、『きっと大丈夫だよ。なにしろカレーっていうすばらしく大切な要素なんだから、その台本書いてる人もとっておきにして隠してるんだよ、多分』
よし、送信っと。あとは明日、どっかに入れるって発表すればオッケーだね。バレないように自然を装って言わないと。
次の日。
ニシカワ君が演じる西の国の勇者、その西の国の名前をカレイ王国にしてみた。
これで満足でしょ、とその日の学校を終え、帰宅してしばらくすると再びカレーの人からメールがきた。
『ごめん、また愚痴聞いてくれないかな』
……あれ。
ちゃんと要望叶えたのにな。
首をかしげつつもニ、三、やりとりしてカレーの人の言いたいことはわかった。
つまりこういうことだ。
『カレイとカレーは違うのよ! あんな片寄った魚と完璧なカレーを一緒にされちゃ困るわ!』
どっちでもええやん。
そう言えたらどんなに楽だろう。でも悲しいことにこのお人はそんな言葉に聞く耳持たず……だからと言って明日いきなり『カレイ王国じゃなくてカレー王国にします』って言うのも不自然だし。バレるかもだし。
仕方ない。
その次の日。
「これさ、トメが竜を食べにいくって話だよね。実はさ、竜をどう料理するかというと……カレーの具にしちゃうんだよ!」
新たな設定の発表! 劇のクライマックスっていう結構いいシーンに登場することになるし、これなら文句ないでしょう!
一つ問題をクリアした。達成感に満ちたまま家に帰った私。
その私を待ち受けていたのは、一通のメールだった。
曰く。
『具だけでカレーができるわけないでしょ!!』
や……それは、そうだけど、さぁ。
だからと言ってルーを探し求めるシナリオ作るのはやりすぎな気がするし。
うー、うー、どうするべきか。
一人のわがままにいつまで付き合うのはどうかと思う。でも、みんなには出来る限り楽しんでもらいたい。だから要望はなるべく叶えたいんだけど……
ルーかぁ。
ルー……
ううう、るー、るー、るー。
あ。
またまた次の日。
「ねね、アヤちゃん」
「なによカカ」
「あのさ、最後に竜をカレーにするシーンなんだけど……BGMの音を『ルールールー』にしてくれないかな」
「いいけど、最後のはまだ決まってなかったし。それにしてもルールールー? カレーのルーとかけてるの? カカにしてはあんまり面白くないわね」
「ほっといて」
これくらいしか思いつかなかったんだよ! でもこれでカレーの具もルーもそろったから万事オッケーさ。
やるだけのことはやった! 私頑張った、頑張って考えた! お疲れ様、私!
意気込んでその日の学業を終わらせ、帰宅。
そしてメールを見る。
『ご飯がないわ』
もう勘弁してくれ。
『それに私は辛口がいいのよ!』
うん。
もー知らん。
「カカ、今日の夕飯カレーでいいか?」
「カレーはもう見たくもない!!」
「は? カカ用にちゃんと甘口買ってきたんだぞ」
「辛口がいいんだそうだよ」
「……は?」
はぁ。行事の中心になるって、大変なんだね。
こだわってる人って言い始めたらキリがないんですよねぇ……
カレー食べたくなってきました。