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カカの天下  作者: ルシカ
380/917

カカの天下380「女の対決 社会のダメ人間編」

 また……クビに、なっちゃった。


 あ、いきなり暗くてすいません、サラと申します。


 私って、わたしってぇ……なんでいつもいつもお仕事が続かないんでしょうかぁ!? うう、しくしくしく……


 こんなときは公園で一人ブランコに揺られながら、リストラにあったサラリーマンごっこをするに限りますね……こうやってみんな俯きながらも頑張ってると思うと、不思議とやる気が出てくるんですよね……ゆらゆら、ゆらゆら。


「はぁ……」


「はぁ……」


 あら? なんだか隣から同じようなため息が聞こえてきたような。


 横のブランコを見ると、そこでは見知らぬ女性の方がブランコをぶらぶらしていました。いつの間に……全然気づきませんでした。


 しばらくして私の視線に気づいたのでしょうか、その女性は俯いていた顔をこちらに向けました。


「あららー、こんにちはー」


「あ、はい。こんにちは」


 どこかで見た人のような気がするけど……気のせいでしょうか?


「あなたもリストラごっこですかー?」


 柔らかく微笑むその女性の質問に、私は目を見開いた。


「あなたもっていうことは、まさかあなたも! い、いるところにはいるんですね! もしかして流行の遊びなんですかコレ!?」


「これが流行ってたら日本は悲しいですねー」


 あぅ! たしかに。


「で、でもまさか仲間に出会えるなんて思っていませんでした!」


 嬉しかった。情けないけどすごく嬉しかった!


「私、私、いっつもいっつも仕事をクビになって……一人でこんなところでたそがれて、夕日に向かってエイエイオーしたり、花びらで『私の明日は晴れるかどうか』を占ったり、もういくつ寝るとお正月、というかどれだけ寝るとお正月かなのかを昼寝する可能性も考慮して分単位で計算したり、そんなことして元気出してたんです……でも、やっぱり空元気で……」


「わかりますわかりますー」


「本当ですか!? うう、感激です。まさか私と同じような人が、こんな近くにいたなんて! お互い仕事がなくても頑張っていきましょうね!」


「わたしは仕事ありますけどねー」


 ……え?


「し、仕事があるって……私の気持ちわかってくれるって言ったのに! まさか私を騙したんですか!?」


「いえいえー。わたしも昔はそうだったんですよー。でも今はありますー」


「ずるい!」


「人間ずるくなきゃ生きていけませんよー」


「卑怯者!」


「うーん、心地いい褒め言葉ですー」


「悪魔!!」


「そう呼ばれたこともありましたー」


「そんな歳でまだ仕事があるなんて!」


 カチン、という音が聞こえました。


「そんな歳ってなんですかー! 私はまだ29ですよー!」


「もう三十路も同然じゃないですか!」


「3000円の品物は2999円じゃ買えないんですよー!?」


「値切ればいいじゃないですか!!」


「プライドにかけて値切りませんー!」


「嘘つき! だって最近の野菜って高いでしょ! 値切らないとやっていけません!」


「それはまー確かにわたしもこの間、傷んでたじゃがいもを30円値切りましたけどー!」


「それと一緒じゃないですか!」


「わたしをじゃがいも呼ばわりする気ですかー!?」


「その丸っこい顔と、賞味期限が危ういのは一緒でしょう!」


「むー! 働いてなくて商品価値もないあなたに言われたくないですー!」


「うぐっ! だ、だいたいこんな平日の昼間にブランコにのって、ホントに仕事あるんですか!?」


「サボってるだけですよー!」


「いい歳してサボらないでくださいよ!」


「わたしがいると仕事が進まないと思ってあまり行かないであげてるんですよー!」


「なんでそんなお荷物っぽいのにクビにならないんですか!?」


「クビになると家族も友達もいないわたしは路頭に迷って飢え死にするし遺書の用意もあるって脅してあるから向こうもできないんですよー!」


「タチ悪いですねアナタ!!」


 ぜー、はー、ぜー、はー……


 怒鳴りあって疲れたので一旦休憩です。いつの間にか立ち上がって睨み合っていた私たちは、どちらからともなくブランコに座りなおしました。


 深呼吸して、少し落ちつきます。それは向こうも同じようでした。


「ほらー、この歳だと女性の再就職難しいでしょー? そこにつけ込んだわけです」


「と、歳で怒ってたわりに利用するところは利用するんですね」


「言われるとムカつきますけどー、事実は事実で武器は武器。使えるものは使うのですよー」


 な、なるほどです。勉強になります。


「女なんて存在自体が武器なんですからー、あなたももっと自分の使い方を覚えて成り上がるように頑張るんですよー?」


「……はい、そうですね! 一緒に下から成り上がりましょう!」

 

 にっこり微笑みかけると、女性はニコニコ顔のまま首をかしげた。


「あらー? わたしも一緒にですか?」


「はい!」


「人生の底辺にいるあなただけじゃなくてー?」


「人格の底辺にいるあなたも一緒に」


 ビキッ、とでっかい青スジマークを頭に浮かべながら、私とその女性は仲良く笑いあった。


「ふふふふふふ」


「ほほほほほー」


 そう。


 とても、仲良く。

 

 女性って基本的に怒ると怖いですよね。

 そして相性悪い人っていますよね。

 

 と、いうわけで……意外な組み合わせな話です笑

 

 この後、二人はどうしたのか……それは誰にもわからない。

 延長戦にもつれこんだのではないかという説が一番有力です。

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