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カカの天下  作者: ルシカ
379/917

カカの天下379「目指すは高み、進路はぐねぐね」

「えー、お集まりのみなさん。これから会議をはじめまーす」


 教壇に立った私の声に、はーい! と元気よく手をあげるクラスメイト一同。小四にしては子供っぽい気もするけど、お楽しみ会へのやる気に満ちているということで良しとしよう。


 あ、私カカね。ただいま昼休み。


 一応お楽しみ会の準備用に空けてもらえる授業もあるんだけど、他クラスの助っ人も交えてお話したかったから、クラスの皆にあらかじめ知らせて休み時間に集まってもらったのだ。


「先に紹介しておくけど、今回私たちのクラスの助っ人をしてくれるのはこの二人。まずはサユカン」


「あ、えっとっ、きき岸村サユカです! 別クラスですけど、その、よ、よろしくお願いしますっ!」


 こういうのは慣れていないのか、カチコチなサユカン。でも意外な声援がその緊張を崩した。


「知ってるよー!」「うんうん」「寂しがり屋で有名なサユカちゃんだよね!」


「ちょっと待ってっ!! 誰がどうしてどうやってそんな風に有名にっ!?」


「え、だって毎日このクラスきてるし」「別のクラスなのに大好きな友達に会うためにわざわざ……」「前は給食まで一緒にしてたわよね」「テレ屋でも有名だよなー」


 予想外の知名度で盛り上がるクラスを呆然と見つめるサユカン。人気者だね!


「わ、わたしって……もしかしてすごく目立ってた?」


 うん、めっちゃ。


「それにしたって寂しがり屋とかテレ屋とか……そ、そんな」


「サユカン。テレてるの?」


「テレてないもんっ!!」


 ほらテレ屋じゃん。


「じゃあ寂しいのか?」「岸村さん、私でよければ抱っこしようか?」「あ、あたしが先よ!」「お、おれも……」


「するかっ!! もういい、紹介終わりっ! うぅ……なんでこんな恥ずかしいことに……」


 なんでと聞かれれば、たぶん教壇に立つ私の隣に座ってニコニコしているお方の差し金だと思うけど。


「カカちゃん、なにかー?」


「ぐっじょぶ」


「なんのことやらー」


 隣のお方は今日も絶好調だ。


「あともう一人、えっと名前なんだっけ」


「そりゃないよカカ君! こほん、俺の姓はタケダ! 名は――」


「彼はみんなのお財布です。自由に使ってね」


「……カカくぅん、それは、あまりに、あんまりではないか?」


「余ってるならいいじゃん」


「そ、それもそうか! そうかそうか……余ってるから……え、なにが?」


 さぁ?


「さて! もう時間もあんまりないことだし、ちゃっちゃと劇の準備を進めていくよ!」


 隣に目配せすると、今まで生暖かい目でクラスを見守っていたサエちゃんがようやく立ち上がった。 


「えーとー、劇の内容については台本を人数分作ってから配るからー、配役と、やらなきゃいけないことだけ伝えてくよー」


 まずはー、とサエちゃんは主役や敵役の名前を黒板に書いていく。私やサユカンの名前だ。


「役は私たちのほうで勝手に決めちゃったけど、文句は?」


「後が怖いからありませーん」


 ニシカワ君の意見に「うんうん」と頷くクラスメイト一同。


 劇がどうでもいいのかな、と少し不安に思ったけど、耳を傾けてみるとボソボソと「あの二人に任せれば面白くなるだろ」「ていうか絶対変なのになるわよねー」「でもそれがいい」という好意的な意見が聞こえてくる。どうやらやる気は問題ないみたいだ、というか期待されてる私ってすごいね。ふっ!


 意地でも全員が楽しめる劇にしなければ。


「主役はこれくらいだねー」


 サエちゃんが書き終えた黒板には、次のように書かれている。


 主役名、トメ。配役・笠原カカ。


 説明、つっぱしる。


 脇役名、西の勇者。配役・ニシカワ。


 説明、西。  


 魔法使い役名、サエ。配役・サエ。


 説明、黒い。


 竜役名、モンキードラゴン。配役・岸村サユカ。


 説明、食われる。 


 謎の役名、謎車。配役・謎。


 説明、渋い。


「ちょっとちょっとカカすけ君サエすけ君? ツッコみどころ山盛りで迷うけど、とりあえず自分のとこツッコんでおくわ。なによドラゴンって! 食われるってどういうことよっ!!」


「そうそう、そんな感じで吼える練習しといて」


「だいたいモンキーってなによ!」


「可愛いでしょー。モキーって鳴くんだよー」


「モキイイイイイ!!」


 キュートなドラゴンが誕生したところで次いこ次。


「主な役はこんな感じだけど、もちろんまだまだ皆にも協力してもらうよー。えっと……君と、君と、君かな。あ、ニシカワ君もだけど」


 私はテンカ先生から借りた『運動神経いい人リスト』を見ながら適当な男子を選出していく。


「ん、これだけかな」


「あ、あの。僕らは何をすれば?」


「飛べ」


「無茶なっ!!」


「大丈夫、あとでちゃんと練習に付き合ってあげるから」


 言葉足りなかったかな、なんか皆妙に怯えてるけど……ま、いいや。


「次は……アヤちゃん」


「ふふふ、きたわね!」


「アヤちゃんは劇の主題歌をお願い」


「さすがカカ! わかってるぅ!」


「あとBGMもお願いね」


「へ? びーじーえむ?」


「劇の中での音楽。めんどいから全部声でやって」


「まさか、劇の最中ずっと声出してろっての!?」


「うん。作曲もお願いね」


「え、ちょっと! いくらなんでもそんな」


 私はわざとらしく「ハン」と鼻を鳴らした。


「できないの? いつも偉そうなこと言ってるから、てっきりこれくらいは」


「やったろうじゃないの!」


 ちょろい。


「さて、次は……ん? みんなどしたの」


 いつの間にかザワザワしているクラスの皆様、いかがなされた?


「あ、あのさ。カカちゃん」


 その中でおそるおそる手を上げる女子さん。


「も、もしかしてすごくレベル高い劇しようとしてる?」


「レベル低くして何が楽しいの」


 よくわかんないこと言う人だ。


「あ、そうそう。ちなみにテーマは消費税を失くすことと税金を減らすことについてだから」


『レベルたけええええええええ!!』


 なんで皆が合唱してるのかよくわかんないけど、チームワークは問題なさそうだ。


 ……ん? あ。


「ごめん、唐突に思い出した。えーとぴっぽっぱ……あ、もしもしトメ兄? あのね、好きな数字教えて、うん。そか、ありがとー。じゃね、仕事がんばりー、あいあい……と」


「カカちゃんどしたのー?」


「設定し忘れてたよ。主人公のトメ、6歳ね」


『さらにレベル高っ!!』


 うんうん、いいクラスのまとまりだ。


 さー、これからバシバシ練習するぞ!


 まずは男子を飛ばさないとね。


 レベルが高い。

 なんのレベルでしょうか。


 難易度? 難解度?

 道外れレベル? カカの頭のレベル?

 変レベル? 混沌レベル?


 ……全部か。

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