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カカの天下  作者: ルシカ
377/917

カカの天下377「ある日、暇の中」

「あー……暇」


 日曜日だというのにやることも無く途方に暮れているトメです。


 カカはお楽しみ会の準備があるとか言って出かけてるし、テレビも面白いのやってないし……昨日はいい番組やってたんだけどなぁ。『海亀の産卵日誌』とか『アトランティスの謎』とか。


「どうしよ」


 掃除でもするかなー、とお風呂場に向かい、気づいた。


 そういえばシャンプーがきれてたんだった。


 今朝の新聞に挟まってた広告で特別安いシャンプー載ってたよな、それいこう。醤油もきれかかってたような。


「……買い物にいくかな」


 僕、今年でまだ25歳なんだけどなぁ。なんか所帯じみてて虚しい。や、一応は保護者してるわけだし仕方ないんだけどね。




 さて。虚しいと思いつつ、やってきましたいつもの商店街。


 えーと、広告にあったのはここの薬局か。


「いらっしゃいませー」


「ましたー」


 小さく呟きつつ店内探索。シャンプーは……お、あった。


 商品名『隣に置いてある製品よりいいシャンプー』


 なかなかケンカ腰なシャンプーだ。


 でも隣にある置いてあるの石鹸なんだけどな。石鹸よりいいシャンプー、石鹸とシャンプーがどんな対決してるんだろ。見てみたい。


「あら、トメさん!」


「ん?」


 振り向いてみると、そこには見慣れた顔が。この人ほんとに転々といろんな仕事してるなー。


「えーと」


 この人……


「……えーと」


 この人は……


「うーん」


「あ、あの? もしかして私の名前忘れたとか?」


「いや……皿売っててサラさん、鍋売っててナベさん、お釜売ってて以下省略。じゃあシャンプー売ってる場合は誰になるんだろう?」


「で、ですから! 私は売り物で名前が変わるわけじゃ」


「プーさん!」


「何を『これだ!』って目を輝かせてるんですか! 違います! 私はどこぞのハチミツ好きなクマじゃありません!」


「ハチミツ嫌いなの?」


「大好きです」


「よかったね、プーさん」


「だから違うんですって!」


「や、最近このネタ使ってなかったじゃん? たまにはいいかと」


「なんだか今日のトメさん、カカちゃんみたい……」


 だってカカいないしー。ちょっと寂しいしー。


「……うぅ、早く人間になりたい」


「まま、そんな気を落とさず」


「どうせ落ちたら割れる皿ですよ……」


「大丈夫、プーさんそんなにヤワじゃない」


「だからぁ!」


 おお、たまにはこうやって人をからかうのも楽しいもんだ。


「ところでプーさんや」


「もう知りません、ふん!」


 あ、怒った?


「あのさ、ごめん、言い過ぎた?」


「フン」


 ぷいっ、とそっぽをむくサラさん。これはまずいか。


「あ、あのさサラさん、ごめん!」


「フンだ」


「何を踏んだの?」


「……私の心を。トメさんが」


「あああごめんごめんサラさん! ちょっと言い過ぎた、反省してる!」


「フーンだ」


「どうしたら許してくれる?」


「デートしてください」


 うわまたきたこれ。


「……なんでサラさんってそんなに僕とデートしたがるのさ」


 前から不思議に思っていた疑問をぶつけてみると、サラさんは頬を赤らめてモジモジしながら答えてくれた。


「えっと……ほら、トメさんって」


「な、なに?」


「若いじゃないですか、それに、その、男の人だし」


「若い男なら誰でもいいんですかアナタ」


 婚期を逃して焦るオバサンじゃあるまいし。


「すす、すいません、私、口べたで……で、でも大丈夫です! 私の口がヘタなだけで、その、トメさんにはいいところ、たくさんありますよ!」


 なぜに僕が慰められてるのかね。


「きっと!」


 しかも希望形かい。


「……たぶん」


 不安になるな!


「いい加減にしないとお風呂の商品売ってるってことでフローラって呼ぶぞ?」


「いいですね、それ」


 えっ!?

 



 なんだかんだとあったものの、無事にシャンプーを購入。


 わざわざ店の外まで出てきて見送ってくれたフローラに手を振って別れる。バイバーイと手をひらひらさせながら、フローラの背後でゴゴゴゴって感じに『仕事サボりやがって』オーラ出してる人ってたぶん店長なんだろうな、なんて彼女の未来を心配しつつ、そこをあとにした。


 そして。


「ふふふー」


 ものすごく満足そうにニヤニヤしているサエちゃんに出会った。


「あ、あれサエちゃん。こんにちは」


「こんにちわふふー」


 新しい挨拶をかましてくれたサエちゃんの笑顔の意図がわからない……や、サエちゃんは基本的にいつも笑顔だけど、今日は含みのある笑顔だ。


「ど、どうしたのかな、サエちゃん」


「わふふー」


「あ、あの?」


「わっふっふー」


 妙に笑いながら「バイバイ」と手をひらひらさせて、サエちゃんはそのまま去っていった。


 なんだったんだろ。


 ――あ! せっかく話し相手見つけたのに逃してしまった!


 くそー、仕方ない。一人でお醤油買いにいくかぁ。


 でもホント、なんだったんだろ。


 ある〜日♪ 森の中♪ クマさんに♪ 出あ〜った♪


 サブタイトルはそういうことです。

 はい、それだけです。

 すいません。

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