カカの天下37「妖怪雪降らし」
ポク、ポク、ポク。
「うーん」
こんにちわ、トメです。
僕はいま、朝の布団の中という聖域にて至福の時を過ごしています。いや、冬の毛布って言葉にできない気持ちよさですよね。
ポク、ポク、ポク。
「うーん」
気持ちよすぎて、この時期になるとなかなか布団から出られませんよね。特に早く起きる必要のない、今日みたいな日曜日なんかは。
ポク、ポク、ポク。
「うーん」
ええ……布団から出たくないんですよ起きたくないんですよ。
でも、でも……
ポク、ポク、ポ――
「いいかげんにせんかーい!」
たまらず僕は身体の上に馬乗りになっていた妹カカを、布団ごと吹っ飛ばした。
コロン、とうまく転がって受身をとり、カカはてくてくと僕に歩み寄ってきた。
「で、朝から人の頭を木魚みたいに叩いてくれたのはどういう了見だ?」
「や、この叩くやつがたまたまあったから」
「なんでそんなもんがたまたまあるんだ」
「お姉が持ってきたんじゃない?」
ありうる。あの生物はなんとなく気になったものを拝借して我が家に置いていくという習性がある。ただ、それが人のものだろうと拝借してしまうことがあるのが困りものだ。
なんでああも常識を無視して自分の感性に正直に生きられるのか、フシギでしょうがない。
「ま、それはいいとして。僕を起こした理由は?」
「にゃい」
「おやすみ」
「うそうそー」
布団を被りなおした僕を再びカカがポクポクと叩いてくる。別に痛くは無いが、地味に邪魔でなんとなくムカつくな、これ。
「はいはい、なんの用だよ」
「あのね、相談にのってほしいの」
「はぁ、なんの」
「昨日のことなんだけど」
「昨日……って、なんで昨日のことを今日の朝に言うんだよ」
「さっき思い出したから」
「……そか」
忘れてたくらいなら大した相談じゃないのか?
「私、ずっと疑問に思ってたんだけど」
「うん」
「雪って、なんで降るの?」
……少し、思考が止まった。
考えてみれば気象関係の話なんて小学校低学年じゃまだやらないか。
雪の降る理由……ねえ。
簡単に言えば上空で冷やされた水蒸気が凍って、それにまた水蒸気がひっついて――って固まってったものが雪。
で、重くなって降る。
降ってるうちに溶けたら雨になって、溶けなかったら雪のまま降る……とかいう感じだったと思うんだけど……
説明めんどうだ。
「あのな、雪を降らせてるやつがいるんだよ」
だから僕は適当にでまかせを言った。
「誰が降らせてるの?」
「姉だ」
「あー、降らしそー」
カカは姉を妖怪かなにかと勘違いしてる節があるので、案の定納得した。
「じゃあ、今度お姉に聞いてみるね。なんで雪を降らしてるのか」
「うん、聞いてみてくれ。なんて答えたかまた教えてくれな」
さーて、なんて答えてくれるかな?
その後。
カカは姉に聞いてみたらしい。そうすると、困惑しつつも一応答えてくれたそうだ。
なぜ雪を降らすのか……その答えは。
「冬だから」
ごもっとも。