カカの天下347「初恋デートは実るのか? 前編」
こ、こっここ、こんにちは、サユカでしゅ! あぁ噛んだ……ぐすん。
いきなりすいません、緊張しすぎてるせいでうまく喋れないのでしゅ――ですっ! あーもう本当にしっかりしろわたし!
そう、今日はと、ととと、トメさんとデートなのよっ。
あぁ、デート……なんて甘美な響き……
……デート……デート……デート……はっ!? い、いけない、あっちの世界に行ってる場合じゃなかった!
鏡を取り出し、朝から何度もやった身だしなみチェックをもう一度。
髪型……よし。服は……うん、昨日買った花柄ワンピにカーディガンも問題なしっ。
え? サンタ衣装はどうしたのかって?
ひ、ひみつよっ! あれはまだ――あ!
トメさんだ! トメさんが歩いてくる!
落ち着くのよサユカ! こういうときは大抵「待った?」って聞いてくるものよねっ、そしてわたしが――
「やぁ、サユカちゃん。待――」
「待った!!」
今考え中なのよっ! ええと、そしたらわたしが「いいえっ、いまきたところです」って答えるのねっ! 実際は三時間以上待ってるけどっ! ああ、なんて定番なデートの流れなのっ? よし、もう大丈夫、あとはトメさんに「待った?」って言ってもらえば――
「…………」
カモン!
「…………」
まだかな。
「…………!」
ってわたしが先に言っちゃったじゃないのっ!!
「えと、あの、サユカちゃん?」
「あ、その、ご、ごめんなさいっ! ちょっと考えごとをっ」
「あー、ごめん。そんなに待った?」
まずいっ! わたしがトメさんの「待った?」っていう質問を先読みして「待ったわよっ!」って答えたみたいな感じになってる! すぐにフォローを! ええと、『いいえ、いまきたとこです』よ!
「いえいっ、いたこときすでま」
何言ってるのわたしっ!?
「イエイ、イタコとキス手間?」
何訳してるのトメさん!? 「いえい」ってイタコとキスして喜んでるのっ!? ちなみにイタコっていうのは巫女の一種よっ、トメさんって巫女さんフェチなのかしらっ!?
「あ、あのー。サユカちゃん?」
「トメさん!!」
「は、はい」
巫女さんなんかに負けてたまるかっ!
「これ、デートですよねっ」
カカすけとサエすけが考えてくれたデート必勝プログラム! まず最初は――トメさんにこれがデートだと認識させることっ。
「んー……うん」
にこっ。
「デート、だね」
きゃああああっ! ピッピー! イエローカードー! トメさんは優しい笑顔禁止!!
「サユカちゃんの服、可愛いし。それだけおめかしして一緒に出かけるのにデートって言わないんじゃ、失礼だよね」
きゃあああああ!!! ピッピー! レッドカードー! わたしの顔が超レッドー!! トメさんは嬉しい言葉禁止ー!! もっと言ってーっ!!
「じゃあ、手でもつなぐ?」
きゃあああああああああああああ!! ピッピッピー!! デッドカードー!! わたしの心が超デッドー!! トメさんはもうトメさんを禁止ー!! トメさんトメさんトメサントメ産止め三度目酸……
「……サユカちゃん、突然しゃがみこんでどうしたの?」
「タイムッ!!」
頭がバグったわっ。
「あ、ああ」
すーはーすーはーすーはーすーはー!!
……よし、落ち着け私。ピーピーピーピーと、わたしの頭はいつから禁止用語の嵐になったのよ。いや、ピーな妄想もたまにはするけど、今するべきじゃないわっ。
「ご、ごめんなさいトメさん。その、緊張して」
「あ、僕がデートなんて言ったからかな。ごめんね」
「違いますっ! 最初にそう言ったのはわたしだし、その、これがデートだったらわたしも嬉しいですぴょん!」
ぴょん?
ああああ! なんで! なんでせっかく勇気を出して言ったのにまともに言えないのっ!?
ううぅ……もうヤダ。わたしってなんでいつもこんなにダメなのっ。これじゃトメさんにも嫌われて――え。
「ほい」
「ぁ」
手が。
「デートだろ? ならいいよな、このくらい」
手が、つながってる。
トメさんと。
「……落ち着いた?」
わたしの痴態をすべて受け入れてくれる、優しい笑顔。
ほんとに、優しい、その瞳。
頬が熱い、胸が熱い。
触れている手が、熱い。
でもなぜか慌てていた心は落ち着いて、わたしは静かに頷いたんだ。
「じゃ、いこっか。上映時間まであんまりないし」
「……はい」
わたし、本当にトメさんが好きなんだなぁ。
映画が終わるまで持つかな、わたしの心臓……
ついに始まりました、トメとサユカのデート!
……や、初っ端からトバしてますねーサユカちゃん笑
まだ映画館にも入ってませんが……書いててやたらと楽しいのはどうしてくれよう(爆