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カカの天下  作者: ルシカ
346/917

カカの天下346「サユカの任務、デート準備編」

「べ、べつにこんなことしなくてもっ」


「いいからいいからー」


「トメ兄に可愛いって言ってもらいたいでしょ?」


「トメさんに……え、えへへ」


 うあ、なんて愛らしい笑顔だろう。あ、こんちは、カカです。


 ここは近所のデパートの洋服売り場、試着室前でございます。お降りの際は忘れもの等ございませんようお願いいたします、などと電車で聞こえてくる声っぽく言ってみる。実際に何か着忘れて降りたりしたら大変だからね。


「ほらー、そういうわけでちゃっちゃと着替えるー」


「わ、わかったわよっ」


 急かすサエちゃんに押され、しぶしぶ試着室に入っていくサユカン。これがどういう状況かというと――サユカンが明日着ていく服を私たちで選んであげようというのだ。


 明日に何があるかって?


 よくぞ聞いてくれました。


 なんと明日は、トメ兄とサユカンの映画デートの日なのです!


 クリスマスに約束してからずーっとサユカンが心待ちにしていたこのイベント! 私とサエちゃんも協力して考えたデート必勝プログラムも、今日の服選びを持って完成なのだ!


「サユカちゃん、まだー?」


「ま、まだよっ」


「早くしないと覗くよ?」


「やめさいよっ、バカッ!」


「む、バカだと」


 ちょっとムカついた私は試着室に近づき、入り口にかかっている分厚いカーテンの隙間から中を覗き込んだ。


「うへへ、おねーちゃん今どんなパンツはいてんの?」


「本気でヘンタイか君はっ!!」


 ムカムカっときた私はカーテンを閉め、後ろを振り返った。


 大きく息を吸って――


「皆さん聞いてください! いまここに入ってる女の子のパンツの色は黒です!」


「ちょっ! カカすけぇっ!?」


「さらにこの女の子の好きな人は――」


「ごめっ、わるかったっ、わたしが悪かった謝る謝る! だからもうやめてぇっ!!」


 ふむ、この後さらに『この子のパンツはその人のために――』とか続くんだけど、なんかサユカン泣きそうな顔してるからやめといてあげよう。


「なんてこと言うのよぅ……それにわたしのはピンクよぅ」


 わざわざ申告ありがとうございます。


「うぅー……ど、どうよっ」


 やがてカーテンが開き、恥ずかしそうに頬を染めたサユカンがニューファッションで現れた。可愛らしいけどちょっと大人っぽい黒と白の花柄ワンピースに、お洒落なフリルつきのカーディガン。落ち着いた色と綺麗なシルエットでいつもと違うあなたを演出だ!


「おー、いいんじゃなーい? さすが私のコーディネイトー! コーディネイトは?」


「こーでねーと!」


「カカちゃんナイスあしすとー」


 お約束だね。そしてサエちゃんが選んだ服が黒いのもお約束。


「よ、サユカン! 顔赤くしちゃって、初々しいね!」


「誰のせいよっ」


 あ、さっきの私のせいか。


「でもこれ、ちょっと寒いかもしれないわねっ。カーディガンは長袖だけど、この時期にワンピースは……」


「何言ってるのーサユカちゃん。寒い格好してトメお兄さんに温めてもらうんだよー。それを理由に最低でも手くらいつなげるよー?」


「そ、そか。なるほど……」


 サエちゃん……策士だ。


「じゃさ、サユカン。いっそのこと服で隠すの胸の部分だけでよくない?」 


「……はぁっ!?」


「だってワンピースでしょ」


「パズルの1ピースじゃないんだからっ」


「そうすれば寒そうなとこ隅々までトメ兄に温めてもらえるかもなのに」


「ぼんっ」


 あ、サユカン真っ赤になって爆発した。


「と、とにかくっ、そんなクリスマスのときの服みたいなのは、もうこりごりなのっ」


「「えー」」


「そろって不満そうな声あげるなっ」


 つまんないつまんない! よーし、そっちがその気なら。


「サユカン、ダメだよ、そんなんじゃトメ兄は落とせないよ!?」


「な、なによ、急にっ」


「いい? サユカン。あのクリスマスのときのトメ兄の言葉を覚えてる? すごく似合ってる、そう言ったよね?」


「い、言ったと思う、けど」


「トメ兄が服のこと褒めるなんて滅多にないんだよ? 長年一緒にいる私だってほとんど聞いたことないんだから!」


「そ、そうなの?」


 そうだったような気がする、多分。このさい事実はどうでもいい。


「つまりね、サユカン。トメ兄はあのエロサンタの衣装しか可愛いと思えないんだよ!」


「な、なんですってぇ!?」


「もうヘンタイにしか聞こえないねーその言い方」


「だからサユカン! 着るんだよ! 封印していたあの衣装をもう一度!」


「う……で、でも」


「トメ兄に可愛いがられたくないの?」


「ぅ」


「トメ兄の目にはあのエロサンタの衣装しか映ってないんだよ?」


「ぅぅ」


「トメお兄さんどんどんヘンタイ化ちゅー。やん♪」


「あれを着てトメ兄をメロメロにするんだよ! 好きな人のために、それくらいできないでどうするの!」


「……! そ、そうねっ! わたしが間違ってたわカカすけ! トメさんのためなら、わたし――」


 よし、これでおもしろくなった。


 早速サンタ衣装も含めて作戦の練り直しだね!


 たーのーしーみー!

 とうとうサユカちゃん、デートです。

 トメは果たしてどう出るのでしょうか。サユカちゃんはどう暴走するのでしょうか。

 次回をお楽しみに^^

 皆さん、うまくいってほしい……ですよね?

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