表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
345/917

カカの天下345「おひさしぶりです、がんばれタケダ」

 諸君、あけましておめでとう! タケダだ!


 なに? 「いまさらあけましておめでとう言うな」だと? 仕方ないだろうが、今年に入ってからほとんど出番がなかったのだから! しかし真打というものはいつも後から登場するものだ。今こそこの俺の真の力を発揮してくれる!


「なぁカカ君」


「誰?」


「ぐはっ」


 見たか俺の力を! ふがいなさすぎて泣けるぜ!


 ……しかし人生とは七転八倒のちに七転八起! 七回転んで八回倒れてこそ、さらに七回転んだときに八回起き上がることができるのだ! 転びすぎだという文句は受け付けん!


「か、カカ君! 俺の顔を忘れたのか? クリスマス会にも出たし、年賀状も送ったこの俺を」


「そんな前のことは忘れたよ」


 たしかに最近出番なかったけどさぁ!!


「と、とにかくだ! どうだカカ君。俺たちのクラスの劇を手伝ってみないか?」


「む?」


 劇というのは、今学期末にあるお楽しみ発表会でのMyクラスの出し物のことだ。


 お楽しみ発表会では基本的に各クラス単位で発表するのだが、数人くらいなら他のクラスから助っ人をお願いしてもいいことになっている。もちろん四年生以上は全員何かしらの出し物に参加するため、助っ人してもらう=その人は発表をかけもちする、ということになる。やることが倍になり忙しくなること確実だからと、よほど元気が余っている者以外はあまりしないそうだ。


「でも私忙しいんだよね」


「そこをなんとか! カカ君のためにとっておきの役を空けてあるのだ!」


「へー。何の劇のどんな役?」


「劇は『水戸黄門』で、印籠の役だ!」


「やりたいっ!!」


 ふっ、やはりな。『印籠を出す役』ではなく『印籠そのものの役』というのがポイントだ。カカ君なら絶対に食いついてくると思った! フィーッシュ!


「この印籠が目に入らぬかーってやつだよね! ……んー、でもなー。やっぱりこっちのを完璧にやりたいしなぁ」


「そこをなんとか! 印籠役は目立つくせに楽だぞ? なにせ後半で周囲の人の目に入ればいいだけなのだから」


 物理的に目に入ってはイケナイぞ!


「そうだね、それくらいなら……いっか」


 よっしゃぁ! カカ君との共同作業げっと!


「カカちゃーん」


「お、サエちゃん。うん、サエちゃんの顔を見たらやっぱ自分たちのを中心にやりたくなった。印籠やめるね」


 なぜにぃぃぃぃぃ!?


「サユカちゃん勧誘してきたよー」


 サエ君の声が聞こえて振り返ると、言葉の通り勧誘したらしいサユカ君の手を引っ張ってこちらへ歩いてくるところだった。


「あれー? タケダ君久しぶりー」


「誰だったかしらっ?」


「サエ君! 俺を覚えてくれているのは君だけだ!」


「あははー、自分のおもちゃを忘れるはずないじゃないですかー」


 聞かなかったことにしよう。


「タケダ君も私たちの劇、手伝うー?」


「おおっ、いいのか!?」 


 再びラッキーチャンス! 結局はカカ君といる時間が増えるじゃないか!


「サユカちゃんもいいよねー?」


「わ、わたしはまだ手伝うとは言ってないわよっ」


「そっかー。じゃ仕方ないけどサユカン、しばらく遊べないから一人で遊んでね」


「……ぇ」


「うんうんー。私たちお楽しみ会の打ち合わせで忙しいからー」


「……ぁ」


「私たちは放課後もがんばるから、一人で帰ってね」


「……ゃ」


「じゃーカカちゃん、まずは何を話しあおうかー……あれ、サユカちゃんまだいたのー?」


「や、やるわよっ、やればいいんでしょっ!!」


「いいよ無理しなくても」


「やりたいって言ってるのっ」


「なんでやりたいのー?」


「……ぅ」


「寂しいから?」


「ち、ちがっ」


「寂しいと死んじゃうんだよね、ウサギみたいにー」


「そうじゃなくてっ」


「あそ。じゃあ行こうかサエちゃん」


「そだね」


「あーん、もうっ! そうよっ! 寂しいのよっ! どうせわたしはウサギよっ! ぴょんぴょんっ! 仲間に入れてよぅ!」


 ニヤ、といやらしい笑みを浮かべるカカ君とサエ君。三人仲が良いのはいいんだが……置いてかれてるな、俺。しかし「ぴょん」とはなんだ。ウサギのつもりか。


「二人ともきらーいっ」


「よしよし、だぴょん」


「なでなでーだぴょん♪」


 うーむ、声をかけづらいが……


「け、結局俺は、手伝っていいのか?」


「んー? そだねー……じゃあ試験しよっかぴょん。タケダ君が役に立つかどうか調べるんだぴょん!」


「サエちゃん、どうやるぴょん?」


 なぜ「ぴょん」がデフォルトになっているかは謎だが、このタケダ。カカ君と少しでも一緒にいられるのならどんな試験でもクリアしてみせるぴょん!


「じゃータケダ君」


「おう!」


「ジャンプしてぴょん」


「……おう?」


 言われたとおり、その場でジャンプしてみる。


 ぴょーんぴょーん。


 ポケットの中にある財布の小銭がちゃりーんちゃりーん。


「合格だぴょーん」


「ちょっと待て!? どこのカツアゲだこれは!!」


「期待してるぴょん」


「期待されてるのは金銭面としか思えないのだが!?」


 い、いやしかし! 古今東西、恋愛には金がかかるもの!


 これも愛のためを思えば……仕方ない! 何はともあれカカ君と共同作業できることになったのだから!


 サエ君、加減……してくれぴょん? 


 はい、久々のタケダでした。って、あれ? なんかタケダ恵まれてない? 結局カカとの共同作業はゲットしてるわけだし……うーん、今年のタケダがやるかもしれませんね。


 え? 金ヅルにされてるのはどうなんだ、って?

 その程度の扱いなら充分恵まれてると言えるでしょう。タケダのくせに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ