カカの天下341「首のないアナタ」
「雪だ! 雪だるまだ!」
「えっほ、えっほ」
ころころーっとカカです!
一昨日から降っていた雪が積もり、私とサエちゃんとサユカンは放課後のグラウンドで雪だるまを作ることになりました。
「わぷっ」
「サユカン、またコケたの?」
「ううぅーっ、転がしてた雪だるま潰れたぁ」
雪の上を歩くのに慣れていないのか、サユカンは足を滑らせまくっていた。
「カカすけはよく転ばないわねっ」
「歩き方にコツがあるんだよ」
「そーそーコツがあるのー、私だって一回も転んでないでしょー?」
「サエすけはベンチにずっと座ってるから転ばないだけでしょっ」
「うん、だから雪の上を歩かないのがコツー」
歩くなら雪の上を歩いたほうが滑りにくいんだけどね。危ないのは雪が無くて凍ってる場所だ。
「サエちゃんも雪だるま作ろうよ」
「うーん、ちょっと考え事しててー……あ、そういえばトメお兄さんが、カカちゃんは創作話が得意だって言ってたっけー」
「創作? ハテ」
そんなんしたことあったっけ?
「なによサエすけ。最近ボーっとしてると思ったら、そんなこと考えてたわけ?」
「うん、ちょっとお話を考えなきゃなんないんだよー。だからカカちゃん、もしそういうの得意だったら、ためしにお話作ってみてくれないかなー?」
「得意ってわけでもないと思うけど……じゃあやってみよか」
「どんなお話?」
「じゃあ、コレが主人公ってことで」
私は自分の手元、作りかけの雪だるまに視線を落とした。
昔々、とあるところで雪だるまが生まれました。
その雪だるま君、略して雪Dとしましょう。
雪Dは生まれつき、障害を持っていました。
なんと、首がないです。
「深刻な障害ね、生きてるのが不思議だわっ」
「作るの途中でやめたのかな」
彼は首が無くても可愛がってくれる子供たちに恩を返すため……自分の首をさがし出す旅に出ます。ちゃんとした雪だるまになって、改めて子供たちと遊びたいと思ったのです。
「脳みそも無いのにけなげなこと考えるのねっ」
雪Dはゴロゴロ転がりながら旅を続けます。
「移動は楽そうだねー」
雪Dは街中を転がりながらも宣伝を欠かしません。
「首、首、首をさがしておりますー! 誰か、いらない首をお持ちではありませんかー? 使い古しでも構いません」
「こわいわっ」
「首をよこせええええええぇぇぇぇぇ」
おどろおどろしい声をあげながら街中を転がる、人々の通行にひたすら邪魔な雪球。首のかわりに石が飛んできたのは言うまでもありません。や、もし首が飛んできたら怖いですけど。
それでも雪Dはゴロゴロ転がります。
「な、なんだあれは!?」
「怪物よ! 首をとられるわ! みんなおうちに入って!!」
こんな風にへそをとる雷様みたいな妙な怪談話を作ったり、
「ママー、タマタマがー」
「あらあら坊や、坊やのタマタマがどうかしたの?」
「ゴロゴロしてるー」
「坊やのタマタマがゴロゴロ!? びょ、病院へ!!」
こんな風にたまたま妙な患者を作りながらも、雪Dはひたすらゴロゴロ。
そんな長い旅路の末、ついに理想の首の形をした雪球に会うことができました。
「ヘイ、そこの生首! オレっちと合体しないかぁい? キラーン☆」
「妖怪の口説き文句ってそんな感じなのかなー?」
これで旅が終わる! 喜びに胸を熱くした雪Dはその部分を若干溶かしつつ、愛しの首へ向かって突進しました。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロどっかーん!!
雪Dと首だるまは衝突し、粉々になりました。
「……あれ、終わり?」
「えーと、恋は当たって砕けろという話でした」
私が話し終わると、サエちゃんもサユカンもポカンと口をあけてこちらを見ていた。
「どったの?」
「カカすけ、変」
「へへん」
「なぜに誇らしげっ?」
どんなことでも変なほうがおもしろいもん。
「サエちゃん、どうだった?」
「うーん……私って考えすぎなのかなー。カカちゃんの思いつきパラダイスのほうが面白そう……でもハチャメチャになりそうだし、うーん」
なんか悩んでる。いったいどうしたんだろう?
「サエちゃん、何を悩んでるのかはわからないけど、いつでも相談にのってね」
「うん、ありがとーカカちゃん!」
「さ、サエすけ! その、わたしもいるんだからっ」
「んー、サユカちゃんは雪Dの首を潰した張本人だしなー」
「責任とって恋は当たって砕けてよ?」
「な、なんでそうなるのよぉっ!!」
サエちゃんの悩みも気になるけど、サユカンとトメ兄のデートももう少しのはずだ。
はてさて、どうなってくことやら。
私はとにかく変なEND希望。
えーと、自分でつけといてなんですがサブタイトルこわっ!笑
しかし変なENDが好きというわりには雪D物語をきちんと〆ているカカなのでした。