カカの天下339「食べ物で遊んじゃいけません?」
「「いただきます」」
召し上がれ自分、召し上がれカカ。どうも、トメです。
ただいま夕飯どき。天ぷら盛りあわせとご飯とお味噌汁という和風な献立です。
「むぐむぐ、うん。今日もいい仕事してるね」
「お褒めに預かり恐悦至極」
「ご褒美にエビの天ぷらとかぼちゃの天ぷらを交換してあげよう」
「ありがたき幸せ。で、どっちがほしいんだ?」
僕の皿にもカカの皿にもそれぞれの天ぷらは一つずつ。つまりどっちかを二つ食べるということだ。僕はどっちも好きだから別にいいんだけど。
「……自分で言っておいてなんだけど、どっちも好きだから決められないや」
食べ物の好みが合うのはやっぱ兄妹だなー。
「じゃあここは天ぷらさんに聞いてみよう」
またおかしなことを言い出したよこの妹は。
「私はエビの天ぷら役やるから、トメ兄はかぼちゃの天ぷら役ね」
「は? あ、あぁ、まーいいけど」
僕かぼちゃね。
「このドテかぼちゃ!!」
「おまえそれ言いたかっただけだろ」
「このおたんこなす!」
「あ、ナスの天ぷら食べたかったか?」
「うん、今度お願い」
「わかった」
うん、相変わらずよくわからん話の流れだ。
「ところで天ぷらの『ぷら』ってどういう意味だろ」
「おい、エビの天ぷら役とかいうのはどうした」
「あ、そうだった。コホン……おいおいかぼちゃの天ぷらさんよー、いつまでもプラプラしてないで働けよ!」
『ぷら』をそこに持ってきたか。えーと。
「なんだよ、そっちこそプリプリ怒るなよな」
「エビがプリプリで何が悪い!?」
悪くないね、むしろすばらしいねプリプリ食感なエビさんは。
「プリプリがダメとかいうんならブリブリしてやるんだからね」
「何をブリブリするかは知らんがやめてくれ」
その音なんとなく食欲なくなるだろうが。カレーのときにアレを言うのと同じだぞ。
「ん、飽きた」
「もうかい。自由にぷらぷらしてんのはカカじゃんか」
「我こそはお味噌汁!」
ほんとフリーダムだねこの子は。
「ご飯さん、私、あなたのことが好きなの!」
「太るぞ」
「素で返さないでよ!」
あーはいはい。えーっと、そうだな……
「ごめん、僕は他に好きな人がいるんだ!」
「えぇ!? そ、そんな……あなたとはベストパートナーだと信じていたのに!」
うん、たしかに白いご飯と味噌汁は名コンビだね、でも……よし、ノッてやろう。
「でも、でも僕は……お茶のほうが好きなんだ!」
ビバお茶漬け!
「おっちゃんが好きなの!?」
そうきたか、なんの!
「そうだ! 悪いか!?」
さぁどう返してくる?
「だからトメ兄って彼女がいないのかー」
「ぅおい! そっちこそ急に素に戻るなや」
「彼氏ならいるの?」
「いてたまるか! なにが良くておっちゃんなんか好きにならにゃいかんのだ」
「収入」
確かにおっちゃんの収入は良いからそれは魅力的、じゃなくて!
「あのね、彼氏彼女っていうのはお金なんか関係なくてね」
「トメ兄お茶漬けにするつもりなんだね」
聞けや人の話。
「……おぅ、おまえは猫まんまか」
「やっぱこれだよねー。あ、梅干とってきてあげるね」
「お、気が利くね」
んー、言葉遊びしつつも波乱なく夕飯が進んでいく。楽しいねー、和むねー。
「我こそは梅干!」
「はいはい、お一つくださいな」
「ごめんなさいご飯さん、私、他に好きな人がいるの!」
あれ、まだ続いてたのか。しゃーないな。
「そ、そんな! 一緒にお茶しようよ梅干さん!」
「ごめんなさい……私、トメ兄が好きなの!」
あん?
「トメ兄……キス、して……」
えーと、皆様。
誤解しないでいただきたい。これは兄妹の禁断の愛なんかではなく、単に梅干のセリフなのです。ほら、キスしようと迫ってくるのはカカじゃなくて真っ赤な梅干です――え、梅干?
「ぶちゅー」
「んむむむ!!」
酸っぱいじゃないかぁ!!
や、ただそれだけなんですけどね。
「あは、してやったり♪」
梅干を離してもいまだに口に残るすっぱさに口をすぼめる。その顔がおかしいのか、けらけら笑うカカ。このやろー、どう仕返しすべきかっ。
ちょっとした応酬をしながらも、楽しく美味しくご飯をいただく――今日は、こんな夕飯。
はい、今回は初心に戻って(?)なんでもない場面をダラダラーっと書いてみました。
基本はやっぱこれですねー。なにげなーくほのぼのーっと。
あなたのご飯さんはお味噌汁とお茶、どちらを選びますか? ちなみに私の今日のご飯さんはお茶を選びました。