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カカの天下  作者: ルシカ
337/917

カカの天下337「新年あけまして湯煙殺人事件!? 解決編」

 どうもーサカイですー♪ んまんまー。


 何がんまんまーかというとですね、京都といえば有名なお豆腐を食しているからなのですー。その名も豆腐どんぶり! とろとろあんがかかった豆腐とご飯が美味しいのー!


「はぐはぐ……うめぇ、けどさサカイさん。本当にこんなことしてていいのか?」


 がつがつとご飯をかきこみながらも、テンカちゃんが心配しているのはカツコちゃんのこと。彼女が捕まってから一日、わたしたちがしたことと言えば食べて歩いて寝たくらいだ。


「いいのいいのー。カツコちゃんだって言ってたでしょー、大丈夫だから楽しめって」


「そう、だけどさ……」


「テンカちゃん。実際の事件やドラマは二時間なんかじゃ終わらないんだよー? もうちょっと気長に考えなくっちゃ」


 一応女将さんとかを丸め込んでおいたけど、そんなに滞在はできないだろうしー。今のうちに楽しんでおかなきゃねー。アレだってすぐに見つかるだろうし。


 と、思ってたんだけどー。


 次の日。


「あぁーぼたん鍋っておいしいですねー」


「うめぇ! うめぇぞこの肉! いやぁ姐さんにも食べさせてやりてぇ」


 次の日。


「今日はうどん巡りといきましょうかー」


「オーケーぼす!」


 次の日。


「本場の甘味処の八橋は違いますねー」


「がつがつがつがつ!! おかわり!!」


「おー? 頼んでないものが来ましたね。これがぶぶ漬けですかー」


「甘いものばっかだったからちょうどいい! はぐはぐはぐ……さて、もいっちょ八橋おかわりー!」


「テンカちゃん、京都でぶぶ漬け出されることの意味知ってる?」


「知らないことにしておく、おかわり早くもってきやがれ!! あ、ついでにぶぶ漬けももう一つ追加で!」


 さらに日はすぎ……


「はぁー……好きなときに食って好きなときに風呂に入り、好きなときに寝て……なんて幸せなんだろう……」


「ですねー。でもそろそろお仕事も始まっちゃいますねー」


「そうだな! じゃあ帰るかサカイさん!」


 ……うすうす気づいてはいましたがー。


「テンカちゃん。途中からカツコちゃんのこと忘れてない?」


「…………ぇ、あ、ああ!! そ、そんなことないぜ!」


「堕落した生活って、怖いよねー」


 ニート時のわたしもすごかったー。どんどん色んなことがどうでもよくなるんだよねー。


「い、いや、ほら。よくよく考えたら、姐さんって心配するようなキャラじゃないじゃん?」


「それはそうかもねー。ギロチン落としても首で受け止めそうなイメージあるしー」


 でもさすがに放ってはおけないよねー。わたしたちの後が怖いから。


「そろそろ助けてあげようかー」


「でもどうすんだよサカイさん。オレたち食ってばっかりで全然事件のこと把握してねーぞ? かといって今から事件調べる時間はないし」


「謎は全て解けた!」


「はやっ!?」


「テンカちゃん、コケーさつさんと被害者の彼女さん呼んでー」


「ほ、ほんとに解けたのか? わかった、呼ぶよ」


 電話へと駆けて行くテンカちゃん。


 そして、暗くなる照明。


 わたしに当たるスポットライト!


 えー……この事件はですねー、意外と簡単なものですー。確かに被害者さんの周りには怪しい人がたくさん座ってましたーし・か・し。考えてもみてください。


 このお話は、コメディです。


 果たして何がどうだから誰が犯人だー、などという奇抜な推理が必要でしょうか? んー特に必要ではないと思われますーなぜなら。


 面白ければ、それでいい。意表をつければ、それでいい。


 それが原則だからです。つまり犯人は……んふふー、もう少し後のお楽しみですー。


 それでは。酒井にんざぶろーでしたー。




 なんちゃって、ふざけてみたところで解決編でも始めますかー。


「なんだいきなりこんなところに呼び出して! タイホするぞ?」


「あの……私のLove男事件の真相がわかったって、本当ですか?」


 すごいヤな名前の事件ですねー。


 ともかくわたし、テンカちゃん、コケーさつさんとストーカー女の四人がそろいました。


「それで、サカイさん。わざわざこの人らを集めたってことは、この中に犯人が――」


「いませんよー」


「「「……は?」」」


 お約束の展開を期待していたらしい三人は、呆気にとられた顔になる。


「でも事件の真相は……ここにありますー」


 わたしの指差す先には――


「……む? この俺がどうかしたのか女!」


「ちょっと後ろ向いてください」


「こうか?」


 ペリ、と。


 わたしはコケーさつさんの背中に貼ってあるソレを取りました。


「それ……封筒か?」


「えぇ、遺書って書いてありますね」


「「「……はいいいぃぃ!?」」」


 そう、この事件は自殺なのですー。


 タイトルに殺人事件って書いてあるのに! と思ったそこのあなた。ちゃんと『!?』って疑問系になってるでしょー。


 伏線がどうとか無いのか! と思ったそこのあなた。知りませんよそんなの。


「コケーさつさん、あなた多分、初めて現場に入ったときにコケたでしょー?」


「あ、ああ」


「そのときに背中にくっついたみたいですねー」


 三人は完全に呆然状態。


「みなさんの気持ちはわかります。わたしだって……いくら封筒が警官の制服と同じ色をしてたからって、まさかいつまで経っても誰も気づかないなんて思ってませんでしたから」


「そ、そういえば背中に黒い文字っぽいものが見えるなーとは思ってたんだが……てっきりいつものようにコケたときに犬のフンか何かを潰したのかとばかり」


 じゃー洗いなさいよ。


「わたしが毎日一度は警察に顔を出していたのも、あなたの背中を確かめるためですー」 


「き、貴様! これに気づいていたのか!? だったらどうしてすぐ知らせない?」


「すぐわかると思ったのでー」


「わかるか!!」


「いや、わかれよ」


 テンカちゃんの意見に賛成。


「しかしサカイさん、なんで事件当日にそのこと言わなかったんだ? 姐さんが捕まる必要あったのか? もしかして」


 宿代タダで長く居座るためにこんなことを? とさすがに口には出せないながらも目で伝えてくるテンカちゃん。もちろんそれも少しあるけど――


「い、いしょ……かして、かしなさいよっ!!」


「はい、どうぞ」


 ひったくるようにして遺書をわたしから奪ったストーカー女さんは、猛然とその封筒を開き始めた。


「わたしが遺書のことを言うのを遅らせたのは、あの女性の方の心を落ち着けるためです」


「落ち着ける……あぁ、そういや暴走してたよな、あの女」


「あんなカツコちゃんレベルな暴走する子が、好きな人に『おまえがうざいから俺死ぬわ』なんていう手紙をもらってみなさいー。きっとその場にいる皆巻き込んで爆発しますよ」


「単に頭の中身が爆発して暴走するのか、本当に爆発するのか……どっちもありえそうでこえぇな」


「時間は心を癒してくれます。多少なりとも時間を置いたあとに、あの女性が遺書を読むことになるように……わたしとカツコちゃんは時間を稼ごうと話し合ったんです。あとを追おうなんていう浅はかな考えに走らないように」


 そう、現実のドラマは二時間程度じゃ終わらない。


 落ち着くにはもっと時間が必要なんだから。


「ところでサカイさん。あんた遺書の内容を断言してたけど、読んだのか?」


「いえー。でもそれしかなくないですか?」


 適当に言っただけですが、もしかしたら違うかも? ストーカー女さんの様子を見てみる。


「……『いままで愛をありがとうLove美、なんだかんだ言ったけど、君の愛は嫌いじゃなかったよ……』ですって!? じゃ、じゃあなんで自殺なんか!?」


 あれを嫌いじゃないってすげー。ていうかLove美って。もしかしてそういうあだ名で呼び合ったんですかねー。ださいですねー。イタイですねー。


「……『でも僕には君を幸せにする資格がない。なぜなら僕は……今まで黙っていたけど、実は――君の生き別れの兄を、殺してしまったのだから!』ですって!? そ、そんな……小さいころに別れた、お兄ちゃんを」


 おお、意外な展開が!


「で、でも私の愛をみくびらないでほしかった。ちゃんと話してくれれば、私は……あれ、まだ続きが。『さらには君の生き別れの妹と弟も殺してしまったんだ』そ、そんな。でも私はそんな子知らないもん! 知らない子のことなんて別に……ま、まだある。『さらにさらに君の生き別れた従兄弟三人と従姉妹五人と叔父さん五人と叔母さん八人とはとこ十五人を殺したんだ!』って、え、えぇと……」


 あなたどんだけ彼女の一族に恨みあるんですか。


 それにそこまで遠縁となると生き別れって言葉が当てはまらない気がしますがー。


「……『そんな僕に君を愛する資格なんてない!』って」


 同感ですー。


「……『だからこんな僕のことは気にしないで、君は生きて、幸せを見つけてくれ!』と、これで、終わり……?」


 最後だけいい言葉でしめましたねーって、ん?


 ああ、そういうことー。


「やりますねー、亡くなった男のかた」


「は? なにがだサカイさん。オレはもう何にツッコんでいいかわかんねぇぞ。トメを呼んでご教授願いたいくらいだ」


「いえいえ、よく考えて書かれた遺書だなーと」


「何も考えてないようにしか聞こえなかったが」


「いえいえいえいえー、思い込みの激しい方には効果てきめんですよー。見てください」


 ストーカー女さんに注目。


「……私、事件の真相がわかったら、愛するあの人のあとを追って死のうかと思ってた……いや、でも、こんな男のために……いやいや、これ嘘かもだし……でも自殺する理由はあったはずだし……えぇと? 愛せばいいの恨めばいいの? どっち?」


「……混乱してるな」


「そう、混乱してます。だからその場の勢いでLove男さんを追うこともなく、恨んでいいのかどうすればいいのかわからないまま、結局あの子は生きていくでしょう。あれが嘘か真か、もしくは単にあの子がうざくて自殺したのかはわかりませんが、あの子に考える時間をあげるには最適な文章ですよー」


 亡くなった男の人の真意、彼女がこれからどうしていくのか。


 それはわからないし、わかる必要もない。


 現実はドラマのように二時間じゃ完結しないから。二時間じゃ全てはわからないから。


 だからわたしたちは、必要なことだけわかれば、それでいいのだ。


 そう、この場合は……カツコちゃんが無罪ということさえわかれば、それでいい。


「それじゃーコケーさつさん。カツコちゃんを釈放してくださいな……コケーさつさん?」


「いたた……ボケた発言が出るたびにコケていたから忙しかったぞ」


 地味にコケてたんですねー。気づかなかったー。


「とにかくわかった。この女をタイホすればいいんだな!」


「あんた話聞いてねぇだろ!」


「とにかくカツコちゃんを釈放してくださいー」


「む、そうなのか? わ、わかった……しかし、じゃあ俺は誰をタイホすればいいんだ」


「自分でもタイホしてやがれ。罪状は『バカだから』ってことで」


 まったくもー。この人本当に警察官なんでしょーか。


 ともあれ、これで事件は解決ですね! てっきり事件当日、コケーさつさんが署に戻ったときに誰かが背中の遺書に気づいて事件解決! と思ってたんですが……ずいぶんと長い間カツコちゃんを放っておくことになってしまいました。


 ……ん?


 ああ。


 いいこと思いつきました♪


「コケーさつさーん」


「な、なにかね」


「これ、カツコちゃんのところへ持っていってくれませんかー?」


「それは構わんが……あの女は今すぐ釈放だぞ。迎えにいってやればいいではないか」


「いいんですいいんです。とにかくこれ渡してください」


 ふふふー、事件なんか起こっちゃって確かにおもしろい旅行にはなりましたが……


 わたしはまだ、事件を起こしてないんですよねー。


 あのゲームせっかく思いついたのに、つまらないですよねー。


 『わたしたちらしい』旅に、なってないですよねー。


 だから――旅の最後に、どかんと一発事件を起こそうじゃありませんか。


 ……にしても何か忘れてるようなー。

 事件解決! なのになんとまだ続きます!笑


 えー本話で古○さんっぽいところがありましたが……みなさん知ってますよ、ね?笑 


 あと、事件の真相はいろいろとツッコミ所満載でしょうが……ツッコみながら読んでもらうつもりで書いたので問題なしです笑 


 次回も心おきなくツッコミながら読んでくださいまし^^

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