カカの天下331「サカイさん劇場」
どうしよっかなー……と悩み中のカカです。
読書感想文。本を読んで感想を書く。ただそれだけのこと。
でもいざ本を読もうとなると、いったい何を読んだらいいのやら……
「たまにしか読まないんだよね、本って」
漫画は却下って言うしなぁ。ライトノベルとかだったら昔に買ったのが少しあるけど、うちにある本の感想文は去年とかにもう出しちゃったし……
「せっかくサエちゃんやサユカンの誘い断ってまで帰ってきたんだから、なんとか今日中に終わらせないと……でもなぁ」
トメ兄の部屋にいって物色でもしようか。そう思い始めたとき、玄関のチャイムが鳴った。
「はいはーい」
がちゃっと扉を開けると、そこにはサカイさんが立っていた。
「あけましてー」
がちゃ。
「しめましたー」
扉が閉められた。え、や、何やってんの。
「というのは冗談でー」
再び扉を開けてニコニコ笑うサカイさん。
「新年の挨拶、ちゃんとしてなかったでしょー。ですから改めまして、あけましておめでとうございますー」
「あ、そういえばそうだね。あけましておめでとうです、今年もよろしく!」
こないだの挨拶は「ハァハァ」だの「ぜーぜー」だの「シュコーシュコー」だのだったからね。
「よろしくですー。トメさんはいないのかな?」
「まだ帰ってませんね。待ちますか? 私はちょっと宿題しなきゃなんないんで相手できませんが」
「えー、さーびーしーいー! 相手してよーカカちゃん」
子供かこの人。
「宿題って何やってるのー?」
「読書感想文ですけど、その……何の本を読むか迷ってて。今週中に出せって言われたけど、私そんなに早く本読めないし……」
「よし! おねーさんに任せなさいっ。カカちゃん、読書感想文で本を読むのが面倒だったらね、本を読んだ人の感想を聞いて、その感想を書けばいいんだよー」
な、なるほど。なんかズルい気もするけど……
「もしくは、そうだね。自分で適当に話を作って、こんなの読みましたーこう思いましたーって全部それっぽい嘘で塗り固めるとかー」
なんかサカイさんってサエちゃんに似てるなぁ。
「でも私、自分で話なんて作れませんよ」
「ふふふー。じゃあおねーさんが作ってしんぜよー。トメさん来るまで暇だしー」
やた、強力な助っ人登場!
私はサカイさんを自分の部屋まで通して、早速話を聞くことにする。
「それで、どんな話を作ってくれるんですか?」
「待ってねー……ふふふ、伊達に引きこもってアニメとかゲーム三昧だったわけじゃないのよー……むむ、きたきたー! わたしはジョーイ!」
いきなりジョーイに変身した(別に見た目は変わらないけど)サカイさんは、ノリノリで一人芝居を始めた。
「ヘイ! ちょっと聞いてくれよマイケル!」
「オゥ、どうしたんだい? ジョーイ!」
ちょっと声色を変えたマイケルサカイさんの問いに、頭を抱えて嘆くジョーイサカイさん。
「実はワイフが今、家に男を連れ込んでるんだよ!」
ワイフって……あ、妻のことか。
「あぁ、大丈夫。それは単なる友達だ」
「なぜそう言い切れるんだい、マイケル!」
「俺もさっき君の家をちらりと見たが、君のワイフがその男と一緒に焼き芋を食べていたからさ!」
「それがどうしたんだい!?」
「好きな男の前でおならを連発する女なんかいないだろう? HAHAHA!」
え……………………と。
「なんですか、それ」
「えー? マイケルとジョーイのお話。続きはまだあるよ?」
「い、一応聞く」
世にも微妙なサカイさん劇場。再び開幕。
「ヘイ! ちょっと聞いてくれよマイケル!」
「オゥ、今度はどうしたんだいジョーイ?」
「またワイフが男を連れ込んでるんだ、今度は別の男を!」
「さっき君のワイフが大量に焼き芋を買い込んでるところを見たが、今度も心配いらないんじゃないかい?」
「それが、食べながらふんばって我慢してるんだよ!」
「オゥ、それはデンジャーだ! 本気でその男を愛してるのか、本気でブラボゥなおならを溜めてるのかどちらだろう? HAHAHA!」
なぜそこで笑うのかまったく理解できないんですけど。
「まだあるよー」
「き、聞く」
微妙に続きが気になる。
「Hey! ちょっと聞いてくれよマイケルサカイ!」
「Oh、どうしたんだいジョーイサカイ!」
ちょっとアレンジ入りましたー。
「実は、俺っちってばワイフの心がわからないんだよ!」
「ならワイフの気持ちを確かめればいいんだYo!」
「どうすればいいんだYo!?」
Yo! Yo!
「簡単さ! 一緒に焼き芋を食べてワイフの反応を見るのさ!」
「なるほど! 早速試してみるぜ!」
「数十分後……」
あ、これナレーションか。
「HeyHey! 聞いてくれよマイケル!」
「OhOh! どうしたんだいジョーイ!」
ノリノリだねぃHeyHey! OhOh!
「一緒に焼き芋を食べてたら俺っちが屁をこいちゃってフラレちまったよ!」
「そいつぁやられたな! HAHAHA!」
……や、だからなんでそれで笑うのさマイケルサカイさん。
「計画通りだ! 君の奥さんはこのマイケルがいただくZE!」
「Oh!? Noooooooooo!!」
そういうことか!?
「ふふふー、どうですか? わたしのお話は!」
「サカイさん、焼き芋食べ過ぎちゃダメだよ」
「な、なんでわたしのお昼ご飯知ってるんですかー!?」
そんなことだろうと思った。
「ともかくー、これで感想文が書けるねー!」
「え、今ので、原稿用紙二枚も、感想を書けと?」
「もちのろーん」
う、うーん……
翌日。
「先生、どうですかその感想文」
「延々とおならの感想が書いてあるんだが」
それしか書くことないもんよ。
「……まぁいい。この本のタイトルは?」
「えっと……おなら物語?」
「なんで疑問系なんだよ。で、作者は?」
「サカイさんです」
「なるほどな、うん。却下!!」
「なぜ!?」
「本を読んでねーからだよ!」
Oh!?
「ヘイ、ちょっと聞いてもいいかいマイケル!」
「オゥ、どうしたんだいジョーイ?」
「聞けば俺っちのワイフを東京湾に沈めたそうじゃないか!? なぜだい! 俺っちから奪うほど愛してたんじゃないのかい!?」
「それは違うさジョーイ! このマイケルが奪いたかったのは……君さ、ジョーイ」
「Oh! Oh!? Noooooooooo!!!」
以上、今回の没案でした。