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カカの天下  作者: ルシカ
328/917

カカの天下328「雪の妖精選手権」

 こんにちは、カカです!


 とても楽しくてすごく面白くてなぜか頭が痛かったサエちゃんちのお泊り会も終わり、ただいまサユカンと一緒に帰り道です。


 他愛のない話をしながら歩いていると、不意に首筋がひんやり。空を見上げると、はらはらと舞い落ちてくる白い粉。


 雪が降ってきた。


「綺麗ねっ」


「ホコリみたいだね」


「「…………」」


「もう、カカすけはロマンがないわねっ」


「だって雪が降ったら車は滑るし電車は止まるんだよ?」


「め、珍しくまともなことを」


 別に内心「わーい」なんて思ってないよ?


 ホントだよ?


 ……実はわーいわーい!


「いいじゃない雪! なんだか雪が降るとさ、一緒に何かが訪れたりしそうな気がしない?」


「訪れるって、風邪とか事故とか不幸とか?」


「違うわよっ。ほら、たとえば……その、雪の妖精さん、とか」


 またメルヘンなことを……でも絶好のからかいネタだ。そう思ってサユカンにニンマリと笑いかけようとして――ソレが目に入った。


「きっと……青く光ったり白く光ったりして、ふわふわしてて儚い妖精さんなんだろうなっ。会ってみたいわっ」


「サユカン。あれじゃない? その妖精さん」


「えっ、ど、どこ!?」


 私が指差した先には――この寒いのにランニングしてるおじいさんが。


「……あのじーさまのどこら辺が雪の妖精なわけ?」


「顔が青白いよ?」


「寒いからでしょっ!」


「頭が光ってるよ?」


「つるっぱげだからでしょっ」


「ふわふわしてるよ?」


「あれはふらふらよ! 歳なんでしょっ」


「老い先短いから儚いよ?」


「かわいそうでしょっ」


 や、わりかしサユカンもかわいそうなこと言ってるよ?


「わがままだなぁ。ちゃんとサユカンの条件満たしてるのに」


「全部こじつけでしょっ。大体ね、妖精っていうのは羽が生えてるもんなのっ」


「お亡くなりになったらきっと羽が生えて昇ってくよ」


「だからそういう寂しいこと言わないのっ」


 そんな感じでサユカンと言葉遊びをしていると、新たな妖精候補が走ってきた。


「あ、じゃあサユカン。あの人たちは?」


「あの走ってくる二人? どこらへんが雪の妖精っぽいのよ」


「服が白い」


「それだと夏の方が雪の妖精増えるじゃないの」


「夏はカキ氷の妖精ってことにすれば――あれ?」


「あらっ」


 よくよく見ればその白いコートのお二人さん。テンカ先生とサカイさんだ!


「こんにちはー。京都から帰ってきたんですね。そんなに走ってどうしたんですか?」


「ちょっと遅いですけど、あけましておめでとうございますっ」


 そんな私たちの挨拶に返ってきた答えは、


「ゼーハーゼーハーゼーハーゼーハーゼーハーゼーハー!!」


「はぁーふぅーはぁーふぅーはぁーふぅーはぁーふぅー!!」


 この人ら日本語忘れたの?


「ゼーハゼー……ハー!?」


「はぁーふ!」


 まるで犬みたいな会話を交わしたテンカ先生とサカイさんは、私たちに「悪い、また今度」みたいな視線を送ったあと、再び走りだした。


「な、なんだったのかしら」


「さ、さぁ……暑苦しい雪の妖精だったね。きっと今降ってるこの雪は、あの二人が滝のように流した汗が結晶化して」


「気色悪いこと言わないでよっ。それより――あの二人が帰ってきたってことはお姉さんも帰ってきたんじゃないの? 事件に巻き込まれたみたいなこと言ってたけどっ」


「そういえばそだね……お?」


 三度私たちの方へ向かって走ってくる雪の妖精候補。


 ……や。


 あれは雪男の仲間だ、きっと。雪女でないところがポイントだ。


 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!


「な、なによあれっ」


 相変わらずバカみたいに速いなー。すれ違いざまに声かけよ。


「おーい、そこの雪男」 


 キキィィィィィィィィィィ!!!! と急ブレーキをかける爆走雪男。


「久しぶり、お姉。無事に帰ってこれたんだね」


「シュコーシュコーシュコーシュコーシュコー!!」


 どうやら雪男は未知の言語を話すらしい。


「ん? ああ、何があったかは今度話す? 今は忙しいの? わかった。いってらっしゃい」


「プシュー!!」


 なんだか機関車っぽい音を立てながら、雪男もどきは再び爆走していった。


「な、何があったのかしら、京都で」


「うーん、お姉がテンカ先生とサカイさんを追っかけてるように見えたね」


 本当にいったいなんだったんだろう。今度ちゃんと聞いてみる必要があるね。 


 ま、それはそうと。


「どれが一番雪の妖精っぽかった?」


 個人的にはお姉かな。雪男っぽいとは思うけど、『ご近所の雪は姉が降らしている』という伝説をどこかで聞いた覚えがあるからだ。どこで聞いたかは覚えてないけど。


 サユカンはうんうん唸って……やがて呟いた。


「雪の妖精なんかいるわけないでしょっ」


 サユカンがそれ言っちゃおしまいでしょ。


「じゃあ間をとってサユカンが雪の妖精ね。この前のエロサンタ姿で雪降らしてきてよ」


「それを思い出させるなーっ!!」


 ぽかぽかと殴りかかってくるサユカンをあしらいながら、適当に言ったわりに意外とハマってるかも、なんて思っていた。


 だってさ、ぶっちゃけ妖精なんて、可愛けりゃいいじゃん?


 だったら先の三つの例はなんだったんだっていう意見もあるかもだけど、それはそれね。


 ……もう一回くらいアレ着てもらおうかな。ふっふっふ。


 三学期までになんとか帰ってこれた姉天酒の三人は果たしてなにをしてきたのでしょうか。この危険なお酒のお話は近日公開です。

 それにしても通りすがりのおじいちゃん、うちの子らが失礼なことを言って申し訳ありませんでした><

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