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カカの天下  作者: ルシカ
327/917

カカの天下327「真夜中の決闘」

「……さむ」


 自分の身体の震えで思わず目が覚めてしまったカカです。


 もうすぐ冬休みも終わってしまうとのことで、今日はサエちゃんの家でお泊り会を開いてみました。適当にゲームして遊んで、疲れて、サエちゃんの広いベッドで三人仲良く眠っていたのですが……


 しょぼしょぼする目をこすりながら、私はむっくり起き上がりました。


 ボーっとする頭で周囲を見渡す。


 自分にかかっていた毛布がない。道理で寒いわけだ。


 隣を見る。サユカンが寝てる。こっちも毛布をかぶってない。


「……しゃむい」


 サユカンが呟く。同感だ。


 そしてサユカンの向こうにはサエちゃんが寝ているんだけど……


 毛布をかぶってる。三人してかぶっていた大きい毛布を独り占めしてる。


「むー、なにしてんのー」


 まったくもー……私はのろのろとサエちゃんの方へとはいずり、毛布を引っ張る。


 サエちゃんはちょっと抵抗したけど、見事毛布の奪還に成功。サユカンにもかけて、私にもかけて、と。


「あったきゃい……」


 うむ、同感。


「よし……これで……ねれふ……むにゃ」


 意識がくらーくなっていくぅ……ん?


 耳元でなんか聞こえる。


「――沈む、沈むー、海に落ちたー海に落ちたー」


 むにゃ……落ちたの……? そいえば身体が重いような……


「沈むー沈むーどんどん沈んでくー浮き上がれないー。着ているものを捨てなければー」


 そ、そだね……まずは、なんか身体にかぶさってる重い布を跳ね除ける!


 ゴン。


 なんか引っ張ったものが意外に簡単に引っこ抜けて勢いあまってベッドから落ちたような音が聞こえたけど、とにかく軽くなったー。


 じゃ次は服を……もぞもぞ……あれ、なんも聞こえなくなったなぁ。でも身体は軽くなったしこれで浮き上がれる……助かる……水が冷たいから早く上に……上に……


「って、寒いわ!!」


 この後の展開に身体自身が危険を感じたのか、妙な夢を振り切って飛び起きる。


 脱ぎかけてたパジャマを着なおし、ぐりんと首をまわす。視界に入るのは――


「ちゃむい」


 ふるふる縮こまっているサユカンと、毛布でぐるぐる巻きになってぬくぬくしてるサエちゃん!


「……ゆるさん」


 私はサエちゃんの耳元に口を近づける。


「よいではないかーよいではないかー。あーれーお代官様お戯れをー」


「あ、あーれー」


「あれーれー。帯を引っ張られてぐるぐる回るー」


「ぐ、ぐるぐる回るー」


 私は毛布の端をつかみ、思いっきり引っ張った。


「ぐ、ぐるぐるー」


 夢でも回ってるおかげであっさりとぐるぐるゴロゴロ転がっていくサエちゃん。


 ゴン!!


 あ、ベッドから落ちた。まぁいいや。天罰天罰。


 さ、サユカンにかぶせて。


「あたかー」


 うんうん、さ、寝よ……あれ、そういえば私好きな子にこんなことしていいのかな……いいや、眠いし。


 さて……ぬくぬく……ぐぅ。


「場所は洞窟、外は吹雪。いつ助けがくるかわからない絶望的な状況で、やってきました運命の選択!」


「……にゅ?」


「洞窟の中で震えるカカちゃんとサユカちゃん。そんな中、見つかった一枚の毛布。これをかぶっていれば一人は助かる、一人は凍死、さぁどうするー?」


「にゅー……さ、サユカン使って」


「か、カカしゅけこそ」


「わ、私はいいから、サユカン生きて、これ使ってー」


「い、いいからカカすけが使いなしゃいよー」


 あれ? 押し付けあってた毛布がなくなった。


 よかった、これで二人一緒に凍死して、一緒にいられる……


 一緒に……


「凍死してたまるかぁ!!」


 ガバッと起き上がり、愛しき毛布の行方を追う!


「おのれ下郎! その毛布を誰のものと心得る!?」


 毛布を取り戻そうとサエちゃんに向かって飛び掛り――サユカンにつまづいた。


「んにゃぃっ!?」


「わわわ」


 そのままサエちゃんに衝突して、二人してベッドから落ちた。


 ゴン!!


 いい音ともに意識はブラックアウト……


 ……や、寒い。


 寒い!


 再びガバッと起き上がり――




「……あれ、朝だ」


 のそのそと起き上がると、ちょうどサユカンやサエちゃんも起きだしたころだった。


「ん……おはよ、カカすけサエすけ……なんかわたしらすごい寝相ね」


「んー、めちゃくちゃー……あと、なんでか頭痛いしー」


「あれ? わたしはわき腹が痛いわ」


「あれ、そういや私も頭が痛い……なんでかな。それに寒い」


 よくよく見れば、私たちは三人とも毛布をかけていなかった。誰が跳ね除けたのか、愛しき毛布は机にかかっている。何ぬくぬくしてんだ机のくせに。


「寒いねー……毛布毛布」


「カカちゃん、かもーん」


「あ、わたしもわたしもっ」


「よーし、三人であったまろー」


 私たちは三人仲良く毛布にくるまってくっついた。


「あたかー」


「あたかーいねー」


「あたかいわーっ」


 三人してほのぼの毛布に丸まりながら、無意味にごろごろ転がった。


 ごろごろ。


 ごろごろ。


 あ、ベッドから落ちる。


 ゴン!!


「……痛いわっ」


「なんでだろう、またかって思うのは」


「わかんないー、けど私も思ったー」


「頭ぶつける夢でも見たんじゃないの?」


「なんだかそんな気がしてきたー、覚えてないけど」


「私も」


 どんな夢だったっけ? 忘れちゃった。


 ……温かいし眠いし、ま、いっか。

 寝ぼけてるときの記憶って曖昧ですよねぇ。


 これは、そんなお話。

 

 毛布の取り合い、兄弟いる人には覚えがあるのではないでしょうか。まぁここまではやらないでしょうが^^;

 ……んー、でもやるとこはやるのかな笑

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