カカの天下326「カカ天クエスト Ep3」
注意:このお話はカカ達がゲームのキャラになりきりながらRPGを進める話です。話の内容はゲームの中ですが、『もしもカカ達が異世界にいたら』みたいな感覚でお楽しみください。
ステータス
カカ ボケ勇者 レベル1 へん
サエ 悪の魔法使い レベル1 はらぐろ
サユカ 手の平の踊り子 レベル1 さびしんぼう
トメ ツッコミ レベル1 つっこみ
前回、レベルを上げようとスライムへ挑み、あっさりと返り討ちにあった勇者一行。相手のレベルが上がって手ごわくなったにも関わらず、もう意地だと言わんばかりにスライムへと挑みます。
スライムは火を吹いた。
全滅した。
スライムは火を吹いた。
全滅した。
スライムは火を――
「待たんかいコラァ!!」
トメのツッコミ! スライムはおどろき、とまどっている。
「おぉ、トメ兄すごい」
「そんな技いつの間に覚えたんですかー。レベルも上がってないのに」
「そうだよ! レベルが上がらないのが問題なんだよ! こんなバカみたいに突進→全滅→突進→全滅を繰り返してどうすんだよ!」
「でもトメさん。スライムって一番弱い魔物ですよ?」
トメはにっくきスライムを睨みつけた。
「だいたいな、そこのスライム!」
「あんだよ」
「うわ、喋った!!」
スライムのレベルが上がったことにより、かしこさもアップしたようだ。
「あ、あのなぁ! なんでレベルが一つ上がっただけで喋れるようになったり火を吹いたりとかできるんだよ! 強くなりすぎだろ!?」
「あのなぁ人間。生物としてのレベルを上げる、なんてのは簡単じゃねぇんだぞ? てめぇらだって人としてレベルアップするのは簡単にいかねぇだろが。だがそれでこそレベルアップしたときの成長も大きいってもんだろ」
スライムは正論をはなった!
「で、でもなんでスライムがそんな強いの!」
「なんでってそりゃ、芸人一座に倒されるような魔物ばっかなら街の人も苦労しないからだろ」
スライムの言い分はいちいちもっともだ!
「くそー、ツッコミどころが見つからない」
「がんばって、トメさん!」
「ったく、情けねぇな。おまえら一応勇者なんだろ? だったら最初からそれなりに強いんじゃねぇのかよ」
「うー、私だって好きで勇者になったわけじゃないよ。本当はボケ勇者じゃなくて単なるボケだよ。日々ボケてツッコまれるだけの日々を過ごしたかったさ! それをあの姉が! なんでか魔王になんかなるから! なによ魔王って。わけわかんないよ変だよありえないよ! ある日お姉が魔王になりました? ふざけるのも大概にしろっての!」
カカは混乱している。
「よくわかんねぇが、戦闘再開していいか?」
「うぇ!? ちょ、ちょっとタンマ!」
勇者一行はおびえている。
しかし、そこでただ一人いつも通りほえほえ笑っていたサエちゃんが口を開いた。
「待ってくださいー」
「んだよ、魔法使い」
「ちょっとお聞きしたいのですが、魔物さんってみんなスライムさんのようにお強いのですかー?」
「あん? まぁそうだな。だが俺様ってばレベル上がったろ? さっきも言ったがレベルを上げるってのは大変なんだ。勉強して恋して挫折して、人生経験を積み重ねてようやくできるもんなんだ」
スライムはなんか年寄りくさい。
「そんなレベルアップを果たした俺様は、おそらくこの界隈では一番つえーだろうな!」
「ふむふむ、なるほどー」
サエちゃんは少し考えて、
「ではこうしましょう。スライムさん、私たちに雇われる気はありませんか? 三食昼寝つきでお給金も払いましょう。どうです?」
「俺様は松坂牛が好きだ」
「ごちそうしましょう」
「承諾だ! 仲間になりたそうにそっちを見てやる!」
「仲間にしますー」
スライムが仲間になった!!
「……ぇ、いいのか、これ」
「ふふふー、世の中には魔物使いという芸人さんもいらっしゃいますし、大丈夫でしょー」
芸人一座としてのレベルが上がった!
「そんなもん上がらんでいい!!」
「で、でもサエすけ! 松坂牛ってどうするのよっ、わたしたち、そんなにお金が」
「そうだよサエちゃん! 松坂さんなんて苗字の人は少ないだろうから、すぐにいなくなっちゃうよ!」
「牛って言ってんだろ! 別に松坂一族を献上するわけじゃない!!」
「そのほうが安くあがるよ」
「そういう問題じゃないわっ!」
熱くなるカカトメサユカに、サエちゃんはやわらかく微笑みながら――
「お金ならあるよー、ほら」
懐から、札束を取り出した。
「さ、サエちゃん、それ、どこで」
「あははー、何言ってるんですか。この世の中には生命保険というものが不可欠じゃないですかー」
「え……まさかつまり、僕らが死ぬたびに」
「そう、そのたびに保険金がおりてたんですよー。冒険に出る前に王様とちゃんと契約しましたので」
「……私たちが全滅すればするほどお金持ちになるってこと?」
「そうそう、お金がなくなったら死ねばいいんだよー」
とんでもないRPGだった。
「も、もしかしてサエすけ、今までわざと死んでた!?」
「ノーコメントですー」
「な、なぁ。いいのかなこれ。なんだかルール違反のような」
いまだ心配顔の仲間に、サエちゃんは眩しいばかりの笑みを見せた。
「ルールを破るのが魔法というものでしょー。私、魔法使いだからいいんです」
笑顔でものすごく身勝手なことを言う。
「よし、肉を食わせるがいい! 食った分働くぞ俺様は!」
「あははー、じゃあご飯に行きましょうか」
「お、おう」
「待ってよサエちゃん。まずはスライムさんに名前を!」
「いいの……? こんな展開、いいのっ!?」
強い味方を得た一行! しかし、結局いまだに誰のレベルも上がっていない。こんな調子で魔王までたどり着けるのだろうか!?
次回、『あれやこれやで次の町! レベルは……?』をお楽しみに!
冬休みだし……ということでつけてみたゲーム。
今日も今日とてレベルは上がらず、しかし一歩前進したような気も。
にしても生命保険とかレベルアップのうんちくとか……リアルなんだかファンタジーなんだかワケワカランゲームだ。
きっとプレイしてるカカたちはこんな風に思っていることでしょう笑