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カカの天下  作者: ルシカ
324/917

カカの天下324「言葉の魔力であなたを落とす」

「しかし暇だね」


「でもせっかくみんな宿題終わったんだから、遊びたいわよねっ」


「でもごろごろもしてたいよねー」


 例によってコタツでごろごろ中なカカです。最近こんなの多いなぁ……動かないのはよくないし、トレーニング増やすべきかな。


「ごろごろしながらする遊びってなによ」


「コタツの中でプロレスとか?」


 あ、でもこないだそれやって総理大臣に怒られたんだよね。ダメダメ。


「ふふふー、こんなこともあろうかと、こんな本を持ってきたんだよー」


「なになに……」


 本のタイトルは『いろんな遊び方』


「これなら寝たきりの老人でも一人でハッスルして遊べるよー」


「ベッドの上でハッスルしてるような老人なら誰も近づかないだろうし、そりゃ独りだろうけど……その本おもしろそうだね」


「どんな遊び方があるのっ?」


「待ってねー。えーと……あ。これなんかいいんじゃないかな」


「なになに?」


「殺し文句の言い合い」


 殺し、文句?


「なに、言葉で相手を殺したほうが勝ち?」


「難しいわねっ。でも寂しさで死んじゃう動物がいるんだから、言葉で傷ついて死んじゃう人もいるんじゃないかしら」


「よし、サユカン勝負だ! やーいやーい、サユカンの不器用!」


「な、なんですって! カカすけの変人! あと――」


「突っ走り屋! 慌てん坊! ノロマ!」


「えと――」


「愚図! 下衆! 愚鈍! 孤軍奮闘! 七転八倒!」


「カカちゃん難しい言葉知ってるねー」


「お色気担当! 萌え担当!」


「うぅ……そ、そこまで言わなくてもいいじゃないのぅ」


「今のって傷つく言葉かなー」


 む、最後のは褒め言葉だったか。


「ともかく私の勝ち! と、こんな感じの遊びなのかな」


「全然違うよー」


「ちょっとっ! じゃあわたし弄られ損じゃないのっ」


「いつものことじゃないのさ」


「い、言い返せない……」


 さて、敗者は放っておいて。


「それで、本当はどんな遊びなの?」


「んとねー、殺し文句っていうのはそもそも好きな人を口説き落とすための言葉でー」


「口説き落とす……崖からでも落ちるように誰かを説得するの?」


「また難しいわねっ」


 お、ち、ろ♪ とか可愛く言いつつ谷底へ突き落とす、とかアリなんだろうか。


「そうじゃなくてー、簡単に言えば好きな人をメロメロにさせる言葉みたい。告白の言葉とかもこれに入るみたいだよー」


 ふむふむ。ドラマとかでよくある、くさいセリフのことか。


「まずはキーワードを選んで、そのキーワードの入った、もしくはキーワードに関係する殺し文句を一つ考えるの。それをみんなで順番にやっていって、一番くさくて寒くてニヤニヤできる言葉を作った人が勝ち、だってさー」


 へぇ、おもしろそう。


「サユカちゃんとか、いい練習になるんじゃないかなー。うまく言えばいくら愚鈍で鈍感で魯鈍で愚図なトメお兄さんでもドキっとするかもよー」


「さ、サエちゃ。そっちの殺し文句は意味が違うんでしょ?」


「あ、ついー」


「いくつかトメさんと一緒の文句があったわ。おそろいおそろい♪」


 それでいいのかサユカン。


「じゃーまずはカカちゃんから」


 へ、私?


「キーワードはねー、最初は簡単にいこうか。『君は君のまま』でいってみよー」


 君は君のまま……それで殺し文句、くさいセリフ、好きな人に、えっと、えっと……


「生魚アタック!!」


「……たしかに生魚は焼いても煮てもない、そのままの姿だけどさー」


「それにたしかにくさいわね。生臭いともいうけどっ」


 そんな生魚攻撃で気になるあの人もノックアウト! ってダメか。


「だってさ、よくわかんないんだもん。サエちゃんお手本見せてよ!」


「次は『甘いもの』かー、よし」


 サエちゃんは私の顎を指でクイっと上げて、とろけるような声で言った。 


「私は甘いものが大好きなの。その唇……甘そうだね、いただくよ?」


 流し目炸裂!!


「どうぞお召し上がりを!!」


「カカちゃん?」


「はっ!! や、なんでもない、なんでもない」 


 つい頭に血が昇って口に出してしまった……久々に取り乱したぜぃ。


「じゃー次はサユカちゃんね。キーワードは『愛』だよー」


「これは考えやすそうだね」


 しかし私の言葉とは裏腹に「えーとっ、うーっとぉ」と迷い気味のサユカン。しかしやがて搾り出すように言った。


「あ……愛、お願いしますっ!!」


「なんか募金みたいだねー」


 赤い羽根の人らが募金箱もってお願いしてる感じだね。


「じゃあ次は――」


「ただいまー」


「トメお兄さんでいこうー」


 すかさず頷いた私たちは、三人そろって「おかえりなさい」の言葉と共にこの問題をトメ兄にプレゼントしてあげた。


「はぁ、よくわからんがそういう遊びなんだな」


「キーワードは『図書館』でー」


 おお、難度が高そうだ。 


「サユカちゃん相手にお願いしますー」


「ちょっ」


 トメ兄は少し考えた後、サユカンをこう言わせた。


「えと……よ、ようこそいらっしゃいました! 今日は何をお借りになられますかっ!?」


「君を、無期限で」


 サユカン は しんでしまった。


「……あれ、ダメだったか。サユカちゃん? おーい。なんか顔から湯気出てるけど、なぁカカ、サエちゃん……なんでそんなニヤニヤしてんの、なんでそんな変な目で僕を見るの!? え、ちょっと! 考えてみてって言われたから言っただけじゃん! ねぇ! なんでさっきから僕一人で喋ってるの!? なんか言おうよ、ねぇ!!」


 ニヤニヤがとまらない。これ楽しいね……ぷっ、くくくく……き、君を、無期限てアハハハハ!


 さむっ!! トメ兄の大勝利! 

 本話のくささが部屋に充満した場合、すぐに換気してください。においのしみつき、寒気のしみつき、ニヤニヤのしみつき等が考えられます。

 もしもこのくさい言葉を誰かに言ってみたいと思ったら中毒です。場合によっては病院へ行き、専門のお医者様にご相談ください。

 何の専門に聞けばいいかは知りません。

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