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カカの天下  作者: ルシカ
323/917

カカの天下323「意外と大変な裏方日和」

 やぁみなのもの、元気にしてるか!?


 俺はトメやカカの父親だ! 名前は明かせない。忍者だからな。ん? カツコ? 何を言っている、俺は人間だぞ? あのようなファンタジックな子供などおらんわ。


 さてさて、今日も今日とて俺は仕事の合間に家へと戻り、天井裏から我が娘を見守っていたりするのだが……


「うー……トメ兄いないと暇だー」


 カカはまだ冬休み中だが、トメはすでに仕事始めだ。先程までサエちゃんとサユカちゃんと遊んでいたのだが、用事があるとのことで帰ってしまった。トメが帰ってくるまで暇をもてあましているわけだな。


 なに? 俺が遊んでやればいいって?


 たわけ!


 できるか!! 恥ずかしい!


 こんなストーカーまがいのことをしているほうが人として恥ずかしいって?


 たわけ!


 貴様! 何様だ!?


 俺様だ!


 などと独りで自問自答しているうちに(暗いとか言うな)カカはするべきことを思いついたようだ。


「トメ兄、どうせ正月ボケのまま仕事して疲れてるだろうし……またご飯作ってあげよう」


 なんと!! カカのご飯!! 


 あぁ……娘の作ったご飯……うらやましい……トメ殺す。


「こないだはカップめん作ったし、今度はレベルを上げよう!」


 カップめんの次だと冷凍食品あたりか。いやそれで充分。可愛い家族が用意してくれるならそれに勝るものは――


「ハムエッグに挑戦だ!」


 なに?


 ハムエッグ?


 ハームエッグ? フライパーン? あっぶーら!?


 ファイヤアアアアアアア!! を使うのではないか!?


 いかん、そのような危険な!! 見たところ聞いたところカカが独りでそれらを扱ったことはないはず! となると……あ、あぶ、危ないんじゃ……!!


「えーと、まずはフライパンに油をひいて」


 あ、ああ、そんなドバドバと……もしそのまま火にかけたら――えぇい! シュバッと!


 ピンポーン。


「あ、お客さんだ」


 とてとてとて……とカカが去った今のうちに!


 シュタッと台所に降り立ち、フライパンの中の油をさっと捨ててコンロに戻して、また入れたりしないように油を隠して――って油はもうカラではないか。全部入れおったなあの娘。っと、戻ってきた!


「ピンポンダッシュなんて子供なことするなぁ。私なんか三日前に卒業したよ、まったく」


 シュバッと急いで天井裏に戻った俺は、再び様子見に戻る。むぅ、さすがカカ。油が減ったことにまったく気づいていない。


「火をつけてー、あ、ハムと玉子を用意しないと」


 フライパンを温めている間に用意。まぁいいだろう。しかし……あーあー割った玉子の殻が入っちゃって。食べるのトメだから別にかまわんが。


「私の分とトメ兄の分だから、二つだよね」


 ……ちぃ。シュバ!


 ピンポーン。


「あれ、またか」


 とてとてとて。と玄関へ行っている間にシュタッと! ちまちま殻とって……もっかいシュバ!


 まったく、我が娘の喉に玉子の殻が刺さってしまうところだったではないか。それだけは防がねば……命拾いしたなトメ。


「なんなんだろーもう! えっと、フライパンが温まったからハムを置いて」


 手で置こうとするなフライパンに近い油が飛ぶぞ危ない! えぇい、石つぶて!


「痛っ」


 小石を軽く投げはなち、カカの手にぶつけて持っていたハムを離させる。カカが思わず落としたハムは見事フライパンの上に。しかも二枚とも重ならず、石はきちんとカカの視界の外へ……ふぅ。痛い思いをさせてすまん我が娘。しかし火傷よりはマシだ。


「ここの天井って落石あるんだ……今度トメ兄に教えてあげよう」


 教えておいて自分で落とす気だな。父にはわかるぞ。


「あとはハムの上に玉子を置いて、お塩を」


 ハハハ、なんでこの娘はあるもの全部使おうとすんのカネ。


 わざわざ蓋を完全にあけて玉子の上に落とされた塩は、まるで綺麗な雪山のように積もった。あの山が溶けたら終わりだ!! シュバッ!!


 ピンポーン。


「きた!!」


 玄関のチャイムが鳴った瞬間に身を翻し、ダッシュするカカ。ピンポンダッシュ犯を捕まえたいのか……なかなかの身のこなし。さすが我が娘。しかしピンポンを押した俺はすでに天井裏へと戻ってきている。この神速には敵うまい……っと、塩を処理せねば。


 シュタッと台所に降り立って――


「またいなかったなー」


 戻ってくるのはやっ!? しょ、処理してシュバッ!!


「あれ? なんかさっきと違うような……まぁいいや」


 うぅ……塩辛い……あの山を一口でパックンチョするのは毒に慣れた俺でもキツイぜ……


「次はコショウ……あれ、こんだけしかないのか」


 どうせ全部使うからな。調理一回分だけ容器に残して処理済みだ。俺の口の中にな……うぅ、時間がなかったとはいえ無茶しすぎだ俺……


「あとは、サラダ! 野菜を切って」


 サッラーダ? ほうちょーう? 指っぽろーり!?


 いかん! くらえ、ちょっと手元に残ってたコショウ攻撃!


「あれ? 上から粉が……へ、へくちゅっ」


 いまだ、忍法かまいたち!! シュタタタタっとな!


「あ、あれ。すごい、私くしゃみで野菜切っちゃった!!」


 もうなんとでも思ってくれ。


「まるで姉みたい!」


 やっぱりあんなバケモノは娘じゃねぇ。


 ――と、そんなことを続けてようやくハムエッグとサラダが出来上がった。


 ふぅ、影から父親するのも楽じゃないぜ。じゃあ日向にでろ? カカが眩しすぎて灰になったらどうする!?


 またもや自問自答しているうちにトメが帰ってきた。


「ただいまー」


「おかえり! ねぇ聞いて聞いて!」


 あぁ……これだけ苦労してもトメが喜ぶだけか……野郎を喜ばせて何が楽しいんだ……おのれトメめ……呪ってやる……秘伝の藁人形と五寸釘で!!


「すごいでしょっ、すごいでしょ!!」


「ああ、たしかにすごいな。一人で作ったのか?」


「ううん、お父さんと!!」


 ……へ?


「多分だけどね」


「へぇぇぇぇぇ、父さんと、ねぇぇぇぇぇ」


 なんだよ。


 なんだよなんだよ。


 手伝ったのがバレてたのかとか、天井裏にいるのにトメの妙な視線を感じたりとか、なんかいろいろ思ったことがあったけど――とにかく顔が熱すぎて、シュバッ!!


 に、逃げたわけじゃないんだからな!


 ニヤけてなんかないかならな!!


 な、泣いてなんかないからな!!


 うええええええええええええぇぇぇぇんカカさいこー!!


 世にも珍しいトメ父視点! や、カカとカツコの父でもあるけど言いやすいので『トメ父』採用です笑

 どっかの誰かさんの視点と似たようなとこがありますが、そちらとの血縁関係はありませんのであしからず。

 あと「シュバッ」てとことか「かまいたち」とか細かい質問には全部「忍者だから」という返事をしますんで、それもあしからず笑

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