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カカの天下  作者: ルシカ
321/917

カカの天下321「福呼ばざる笑い」

 こんにちは、カカです。


 今日も今日とて冬休みを満喫中。毎度のメンバー、サエちゃんサユカちゃんと遊んでいる項目は――福笑い! 床に散りばめたばらばらの顔のパーツを目隠ししながら元の位置に戻そうとして失敗するためのゲームです。


「だんだん飽きてきたわねっ」


「そう? 口の中に目があるサユカン」


「ものが食べにくそうだったよねー」


「なによっ、お腹に目があるサエすけっ」


「私の目の黒いうちはー」


「腹黒だね」


 ん、うまいこと言った。


「カカすけなんかお尻に口があったじゃないのっ」


「トイレの大きい方しやすそうでいいじゃん。直通だよ?」


 ともかく楽しかったのは間違いない。


「でも飽きてきたのはあるね。どうしよ、たこでもあげる?」


「私は揚げ物は苦手だよー」


「サエすけ、それマジボケ?」


「油が跳ねるのが怖くてさー」


「や、だからさ」


 そんな感じにじゃれあいながら、とりあえず外に出てみることに。


 何して遊ぼうか、と寒さにも負けず元気に議論していると、サユカンが突然声をあげた。


「イチョウさん発見っ!」


「え、胃腸? 福笑いに臓器はなかったよ?」


「臓器笑いかー。いいかもー」


「胃が肛門にあったら、そこから食べなきゃならないんだね」


「笑えないわよそんなのっ! じゃなくてわたしのクラスのイチョウさんよ! おーいっ!」


 サユカンがぶんぶん手を振る。サユカンの視線を追うと、確かにそこには買い物帰りっぽいイチョウさんがこちらに向かって歩いていた。向こうも気づいていたらしい。


「あけましておめでとうございます、岸村さん、笠原さん、サエ様」


「なんでサエちゃんだけ様!?」


「サエすけっ、君、イチョウさんに何したのさっ」


「いろいろー」


 ……なんで赤くなるのさイチョウさん。


「今年もよろしくお願いいたしますね、お三方」


 相変わらず丁寧なしゃべり方だなぁ。よし、今年は言葉遣いが変わるくらいによろしくしてあげよう。


「イチョウさんは買い物帰り?」


「あ、はい。お姉様にお使いを頼まれまして、ただいま任務完了し帰還する次第であります!」


 や、なんか丁寧というよりクセのあるしゃべり方のような気がしてきた。


「なに買ってたの?」


「ええと、わたくしとお姉様の化粧品なんぞを」


「化粧!? イチョウさん化粧するのっ!?」


「え、ええ。学校以外で外出するときに、たまに少しですが」


 これは驚いた。やっぱりおとなしそうな子ほど裏で何をやっているかわからないもんなんだね。


 私? 私は元気に表で堂々と色々やってるからいいんだよ。


「いいなー、おもしろそー」


「た、たしかに興味はあるわねっ」


「よし、イチョウさん。そのお化粧道具、少し貸してくれない?」


「ええ、構いませんよ」


 数分後。


 そこでは世にも恐ろしいリアル福笑いが展開されていた。


「あはは! サユカン眉毛変! つながってる上に三回転してる」


「か、カカすけこそ口紅つけすぎて口裂け女になってるわよっ」


「ねーねー私はー?」


「「目元が腹黒っぽい」」


「まだ私の目は黒いかー」


 早い話が皆さんすごい顔になっていた。


「どう、イチョウさん! 私たちの変身は!」


「ぴゃ!? え、えぇと、本日におかれましてはお日柄もよく大変気持ちのいい天気ですしここは皆さん仲良く平和にお茶なぞを召し上がるわけにはいかないでしょうか!? えぇ、お茶を飲んで静まりましょう! 静まりたまえ静まりたまえ! おぉ神よ!!」


 なんでそんな怯えてんの。


「ともかく、化粧したからこれで私たちも大人に変身だね!」


「さすがカカちゃん。ヒロインじゃなくて悪役の怪人に変身したんだねー。杖を振ったりポーズ決めたりしないの?」


「サエちゃんが何を言ってるのはわからないけど、せっかくの福笑いだしこのままご近所の皆さんに笑いを招きにいくよ!」


「わ、笑ってくれるかなっ?」


「サユカン、そのぐるぐるアホ眉毛に自信を持って! きっと指差して笑われるから!」


「殴っていいかしら?」


「さー、レッツゴー!」


 手始めに通りすがりのお兄さんに声をかけてみる。


「じゃん!」


「ぎゃああああああああああああああ!!」


 次は通りすがりのお姉さん。


「がおー」


「ばけものおおおおおおおおおおおおおお!!」


 次は通りすがりの警官さん。


「ば、ばあーっ」


「お、おまわりさああああああああああん!!」


 次は通りすがりのおじいさん。


「ポックリ」


 次は通りすがりの猫。


「にゃんじゃこりゃぁ!?」


 あれ、今の猫だった? まぁいいや。


「なにやってんだ、おまえら」


 おっと、ここで通りすがりのトメ兄が。


「さぁ笑え! 福を呼べ!」


「笑えねぇよこえーよ恐怖しか呼ばねーよ」


「笑う加藤には福きたるだよ?」


「加藤さんも逃げ出すよ、その顔みたら」


「トメ兄もやる? 福笑い」


「よしやってやろう」


「もががががががが!?」


「あれー、この顔とれないなぁ!?」


 この後、私はトメ兄にたっぷりと顔をめちゃくちゃにされた。


 近所のほうがもっとめちゃくちゃになっていたから、その報いだそうな。


 にしても手のひらで顔をこすられまくるだけで結構痛いんだなぁ……


 今度やってみよう。 


 今日は少しおとなしめな感じでしたね。もうちょっとはじけさせてもよかったかな。

 福笑いってもうぜんぜんやってないですけど、うまくやれば盛り上がると思うのです。友達の顔とかでしたら……ふふふ笑

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