カカの天下32「続、帰ってきた姉トラマン」
こんにちわ、トメです。
今回は珍しく前回の続きです。姉が急に帰ってきて、どこかで作った子供を僕らに押し付け、懐かしの友達と喧嘩しに旅立ち、戻ってきたところから始まります。
うん、自分で話しててもわけわかんないねこれ。
とにかく姉は衣服に赤い液体を少し浴びながらも、ピンピンして帰ってきました。
「ただいまっ。ったくあいつら喧嘩弱くなってやんの」
「あぁそうですか」
「よかったね」
僕と妹カカはしらけながら適当に答えた。姉のこういう部分に関してはツッコまないほうが無難だと思うから。犯罪に巻き込まれたくないし。
あと、こいつが置いてった子供の世話で僕ら二人は疲労困憊だったので、話す気力が尽きかけていたという理由もあった。
「……なぁ、姉。もうどうでもいいよ。あんたがどこで子供作ろうが喧嘩しようが殺人しようが君の人権の自由だよ」
「だからさ、姉。もうどっかいけ」
「な、なにさっ、そんな冷たいこと言わないでよっ。血の繋がった家族でしょ?」
「どちらさまで?」
「どこかでお会いしましたっけ?」
「これでイッツ他人」
「おぅいえー」
「ひ、ひどいっ!」
グダグダな兄妹の僕らはソファーでぐったりしながら口撃した。
「とにかくさ……ようやくそこのクッションの上で寝てくれたその子供はなんなのさ」
冗談はこれくらいで置いといて……仮にも家族が増えるという重大な話だ。事情は聞いておかなければならないだろう。
「え!? ああ、これは、いや、その」
核心を突かれたら突かれたで慌ててるらしい。
傍若無人に見えて一応は人として何が大事かは(多分)わかっている姉だ。勢いに任せて子供を預けたときに僕らの話を聞こうとしなかったのも、なんだかんだ言って説明するのが怖かったのだろう。
「んとね、なんというか……ああ、もう! うじうじとあたしらしくない!」
まぁ確かにらしくないといえばそうだけど、やはり人間、家族の前ではそんなもんだと思うが……
「めんどくさいことは言わない! ヤればデきる! それだけのこと!」
「いくらなんでもはしょりすぎだろ! なんだその別の意味でつかったら妙に生々しい励ましの言葉は!?」
「ヤれば……デきる? なにをしたらなにが」
「お前は考えなくていいお子様」
「むぅ」
「とにかく。はっきりさせていこう。父親は?」
「……コウノトリ?」
「その子供、どう見ても鳥に見えないんだが」
「鳥人間でさ、いまは人間の姿で」
「いずれは鳥に化けたりできると?」
「そうそう。焼き鳥にしたら美味しいよ」
「おお……すごい。そんな人間が本当にいたんだ」
「いないから。信じるなカカ」
ふう、と姉は観念したようにため息をついた。
「本当の話ね……預かったんだよ」
「は? 誰に?」
「あれはあたしが、クマと喧嘩してみたいって理由で北海道にいたときの話だ」
「まずその時点でツッコみたいが、ひとまず置いとこう」
「クマを探して山奥を歩いていたあたしは、一軒の山小屋を見つけた。こういうところには保存食も置いてあるだろうと思って一泊してしまうことに決めた。そしたらさ、そこには先客がいたんだ」
なんだか話がきな臭くなってきた。この話が子供と、どう繋がるというのか。
「あたしはその先客さんと仲良く酒をかっくらって暴れてた」
なぜ暴れる。
「そしたら足捻った」
アホだ。
「そしてぐっすり眠って……起きたらそこにはもう誰もいなかった。ただ赤ん坊と『そういうわけでよろしく』という置手紙があった……なんか酔ってるうちに約束しちったみたい。覚えてないけど。てへ♪」
「てへ♪ じゃねーよ! わけもわからず預かっちまってこの子供どうすんだ!?」
「もうめんどいから育てるしかないかと」
「そっちのほうがめんどいわ!!」
「んー、まぁ育てるのはお姉だし、別にいいんじゃない?」
「あれ? いいのかカカ。たった今地獄のように苦労したばかりなのに」
「うん、だって世話するのはお姉でしょ?」
「おりょ? カカっち。なぜにそんなものすごい笑顔であたしを見つめるべさ?」
「ん、いいから子供つれてさっさと出てけ」
「し、しどい!! いつからそんな可愛くない子供になったの? 確かにあんたは生まれつき可愛くなかったけど!!」
「出てけ(にっこり)」
「あー、もう、騒がしいな」
姉貴はしばらくこの地に滞在するようだ。
でも僕らの困憊状態をさすがに心配してか、友達(舎弟ともいう)の家に泊まってくれるらしい。
とりあえず暴風雨は去った……のかな?