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カカの天下  作者: ルシカ
317/917

カカの天下317「カカ天式晴れ着」

「はぁ……大凶かぁ」


 どうも、妙に落ち込んでしまってるトメです。あんまり占いとか迷信とか気にするほうじゃないけど、一年の恒例行事であんなのが出たらさすがにちょっとショックだったりします。


「ほらトメ兄、いつまでも引っ張ってないでなんか食べようよ」


 キテレツなおみくじを終え、サラさんと別れた後、僕らはお昼ご飯を食べようと出店をまわっていた。


「そだな……よし、うまいもん食べて元気つけよう!」


「わーい、ごちそうさまですー」


 ん? 話が繋がってないような。


「サエちゃん、ごちそうさまですーって?」


「もちろん奢ってくれるんですよねー?」


 へ、や、そんなことは一言も……


「これくらいのことでケチケチするような小さい人が、大凶の運命を跳ね返せるとでもー?」


「おぉ、たしかに。小さい今日が大きい凶に勝てるわけないもんね」


 ええぃ、もっともなことを!


「まーいいけどさ、それくらい」


「やたー♪」


「何食べよっかサエちゃん!」


 うーん、出費が増えるのは大凶のせいか?


「大丈夫です、トメさん! わたしだって凶だったんですから!」


「でも励まされてたじゃん」


「うっ、で、でもトメさんだって『大好き』って」


「どこぞの小僧が書いたであろう『大好き』という言葉になんのご利益があると?」


「うっ……と、トメさん珍しくスネてる」


「スネてないもん!」


 って子供か僕は! いかんいかん……ちょっと反省しよう。お、いいとこにでかい木が。手をついて、うなだれて――反省のポーズ。


「うーん、トメお兄さん元気ないねー」


「サエちゃんがたかったからじゃない?」


「いやー、ツッコミしてくれれば元気出してくれるかなーとか思ったんだけどなー」


「なにかトメさんの元気が出そうなものは……あっ」


 僕が一人で自己嫌悪に陥っていると、クイクイと服が引っ張られた。


「生まれてきてごめんなさい……ん、なんだカカ」


「そんなディープなあなたのお悩みを解決! あちらをご覧ください」


 カカの指差す先に目を向けると、そこには――なんとも煌びやかな獅子舞が。


「おー、そっか。元旦だもんな……獅子舞くらいやってるか」


「トメお兄さん、そんなに落ち込んでるならちょっと噛んでもらいましょうよー」


「そうですっ、大凶なんか獅子舞に食べてもらいましょうよっ」


 獅子舞に噛まれるのは縁起がいいという。そうだな、大凶なんか初めて出たんだし、いっちょやってみるか。 


「おーい! こっちこっち」


 カカが大きく手を振ると、他の参拝客の相手をしていた獅子舞がこちらを向いた。カチッ、カチッと歯打ちしながらコミカルな動きでこちらに向かってくる――おぉ、近くで見るとなかなかの迫力だ。


「この人噛んでくださいー」


「かぷっといっちゃってっ」


「あ、待った。その前にそこの小娘の頭を噛んでくれ」


 子供の頭を噛んでもらうと賢くなるという。カカの思考が少しでもまともになれば、自動的に僕の災厄も減ると思うのだ。


「お、そう? んじゃ遠慮なく食べられてくるよ!」


「獅子舞さん、ガジリといっちゃって!」


「よく噛んでくださいねー。カカちゃんの頭は固いですよー」


 思いつくことは柔らかすぎるのにな。しかし途端に遠慮ないセリフを……美しい友情だ。


「さぁ、噛め!」


 なぜか偉そうに仁王立ちするカカの頭を目掛けて食らいかかる獅子舞!


 かぷっ、ひょい、ごくん。


「飲んだ!?」


 ごりごりごりごり。


「噛んでるしっ!!」


「おいしー?」


「嫌なこと聞かないでよサエすけ!!」


 おいおいおい! なんかシャレになってないんじゃ――って、あれ?


 ぺっ、ぽと。


 獅子舞に食って掛かろうとした直後、まるで「まずいものを食った」とでも言うかのようにカカは吐き出された。しかもその姿は――


「えっ!?」


「あれー!?」


 かぷっ、ひょい、ごくん。ごりごりぺっ! かぷっ、ひょい、ごくん。ごりごりぺっ! 


 一瞬の早業、気がつけばサエちゃんとサユカちゃんも獅子舞に食われ、咀嚼されて吐き出されていた。


 そして吐き出された三人は――なぜか晴れ着姿に変身していた! カカは青地に色とりどりの蝶が舞う可愛らしい着物、サエちゃんは黒地に赤とピンクの桜柄のしっとりとした着物、そしてサユカちゃんの着物は紫地に優美なちりめん桜……


 似合ってる。それぞれのいつものイメージとは少しだけ違う、しかし新たな魅力を感じさせてくれる姿だった。


「な、なんか獅子舞のお腹の中で着替えさせられたよ」


「こ、これは一体……」


「ふふ、びっくりした? トメ君」


「「「その声は!?」」」


 獅子舞から聞こえてきたのは他でもない、我が母親の声!?


「こんな仕事もたまにはいいかと思ってやってみたんだけど、ちょうどよくトメ君たちに会えてよかったよ♪」


「か、母さん……それ女優の仕事じゃないんじゃ」


「芸能人の仕事としてはアリだよ?」


 それはまぁ、そうかもしれないけど……


「その晴れ着はわたしからのプレゼントだよ♪」


「え、くれるのこれ!?」


「わー、ありがとうございますー!」


「ありがとうございますっ、お、お、お母さん!」


「あらあらー、娘が増えちゃった♪」


 喜びのあまり、袖を振り回しながら獅子舞の周りを走り回るカカサエサユカ。それに合わせてぐるぐる回りながら踊る獅子舞……なにこれ。カカ舞とでも言うべきか。


「しっかし器用なマネするなぁ母さん。その獅子舞の中で着付けなんてさ」


「忍者をなめるな!」


「おまえもいたのかよ!!」


 ……無駄なスキルを持ちまくっている父親を持つと油断ならないぜぃ。


 しかしまぁ、こうやって鮮やかな晴れ着に身を包んだ少女たちの喜ぶ様を見るのは、なんともほのぼのして目の保養になるのは確かだ。感謝すべきなのかツッコむべきなのか。


「よいではないかー、よいではないかー」


「きゃー、お代官さまお戯れをーってぇ、ちょっとぉぉぉぉぉっ」


「天下の往来でなにしてんだ!?」


 いきなりサユカちゃんの帯をほどいてぐるぐるーっとお代官さまごっこを始めるサエちゃん! こんなとこでそんなことしたら晴れ着がはだけてエライことに!!


 ぐるぐるぐるー、ぴた。


 ……へ? 帯をぐるぐるはずされて放り出されるかと思われたサユカちゃんの動きが、止まった。そして。


 ぐるぐるぐるーっと巻き戻って……


「お、おかえりー」


「た、ただいまっ」


 あー、あれだ。あれに似てる。ヨーヨー。


「ふふ、こんなこともあろうかと『ゴムとバネが仕込まれた帯の先を晴れ着にくっつけることにより、どこでもお代官ごっこが出来る――夢の仕様の新感覚晴れ着!』にしておいたの! カカちゃんたちなら絶対すると思って♪」


「どこで売ってんだそんなもん」


「商店街」


 なんでもありすぎだよあそこ。


「むー、私もやりたかったのに」


「はい、じゃあ次はカカちゃんに貸してあげるー」


「さもヨーヨーを貸すみたいに言うんじゃないわよっ! わたしは、わたしは……」 


 あれ? なんかサユカちゃんに見られてる僕。


「どしたの?」


「あ、あの……わたし、トメさんとこれをしたいです!」


「はぃ? これって……お代官ごっこ?」


「はいっ」


 な、なんでわざわざ……ま、まさかサユカちゃん!


 楽しかったのか、今のヨーヨーお代官。


 そうか、男の僕ならもっと早く回せると思ったというわけだな。


「仕方ないな、いいよ」


「やったっ! じゃあお母さん!」


「はい♪」


 かぷ、ひょいっと上へ放り投げられる僕の身体。


 ぇ? ちょ、まさか……僕が晴れ着を着て回されるってこと!?


「こんなこともあろうかとトメ君の分もあるよ♪」


「もちろん女性用だ!」


「準備よすぎだあんたらああああああ!!!」


 ごくん、ごりごりごり……ぺっ。


 ――この先からはトメ君の強いご要望により、音声のみでお送りします。


「と、トメ兄……綺麗」


「化粧までされてるー、ぷ」


「ふふふ、パパ君。カメラの準備は?」


「カンペキだ! さぁいけサユカちゃん」


「か、可愛すぎますトメさんっ。あぁ鼻血でそうティッシュティッシュ……よしっ。せーの――よいではないのっ、よいではないのーっ」


「よくなああああああああああい!!」


 合掌。


 さりげに前回の続き&なにげにまだ続きます笑

 三日まではお正月のお話、許されますよね♪


 さてさて、感想欄に「あけましておめでとう」と書いてくださった皆様、ありがとうございます^^

 ただ、ちょっとした企画を考えてますので――お返事は明日までお待ちくださいな♪


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