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カカの天下  作者: ルシカ
313/917

カカの天下313「サユカの任務、天岩戸編」

 ……こんにちは、サユカですっ。


「おーい、サユカーン」


「ねーねー、顔見せてよー」


「うるさいわよっ! 帰りなさいよっ!」


 わたしは自分の部屋に篭もりながら、扉の向こうの廊下にいるカカすけとサエすけに怒鳴りつけます。


 別にケンカしたわけじゃありません。ただ、ただ――


「サユカンの可愛い顔見たいな!」


「クリスマス以降、一回も見てないよー」


「それを思い出させるなあっ!」


 ……そう、わたしが立て籠もっている理由はただ一つ。


 先日のクリスマス鍋パーティをいまだに引きずっているのです――そうよ、なんであんなに恥ずかしい格好であんな大胆なこと言っちゃったのよわたし! あぁもう思い出すだけで顔が赤くなるわ! そうよ、きっとイヴにニセモノ夫婦のキスなんか見たせいでおかしくなっちゃったんだわっ! じゃなかったらあんな……あんな!!


 鍋パーティの終わり際に「トメさんとなかなか目が合わないわねー」って言ったら「目のやり場に困ってるんだよ」「さっきの言葉のせいで扱いにも困ってそうだよねー」と返してくれたカカすけサエすけの言葉でようやく目が覚めたのよっ。


 わたし、どんだけ全力で好きって叫んでるのよ――って!!


「そりゃもう身体中から叫んでたね」


「あれでわからない人は相当鈍感だと思うよー」


「なんでわたしの心の呟きが聞こえてるのよっ!?」


「心から漏れてるよ。呟き」


「扉ごしにも聞こえるよー」


 いやあああああああああぁ!!


「なるほど、あれから顔見せないし電話しても出ないからどうしたのかと思ったけど」


「そういうことだったんだー」


「うぅ……そ、そうよ。なんか外出るのも恥ずかしくなっちゃったわよ」


 今が冬休みじゃなかったら登校拒否するくらいよっ。


「ふむ、つまり他の人と顔を合わせると――クリスマスのときに大きく開いていた胸元とか水々しいお腹とかモチモチした太ももとかも見られてる気分になっちゃうんだね?」


「ちょっ、わたしがヘンタイみたいな言い方やめなさいよっ!」


「大丈夫だよーサユカちゃん。たしかに開いてたけど、見えるほど胸はなかったからー」


「そこだけ慰めてんじゃないわよっ!!」


 小学生なんだから、なくて当然でしょっ!


「んー、どうしよっかね、サエちゃん」


「そだねー。トメさんがいれば出てくるんだろうけどねー」


「なるへそ。それじゃ――コホン。あーあーあー……よし」


 ……ん?


「やぁ、僕トメ兄!」


「似てないわよっ」


 兄とか言ってるしっ。


「あれ? お母さんに声マネ習ったんだけどな」


 クリスマスイヴにわたしらがカカすけの家に泊まったときのことね。カカすけのお母さんに皆で声マネとか演技の仕方とか教えてもらったのよね。難しくて全然できなかったけど。


「ヘタだなぁ、カカ。声マネはこうやるんだよ。僕を見習いな」


 ……ぇ、トメさん?


「ふふん、僕の声はどうだい?」


「さ、サエちゃんスゴイ!!」


 これサエすけ!? すご、本当にトメさんの声みたい……! 


「サユカちゃん」


「な、なによっ」


 いくらトメさんの声に似てるからって、そう簡単には――


「僕は君がほしい」


 ブッ!!


「さぁ、おいで。君は僕のものになるんだろう?」


「や、ややややややめなさいよぉっ!!」


 なんか変な気分になるじゃないのっ!


「サ、ユ、カ♪」


「甘い声で言うなっ! 呼び捨てするなぁっ」


「愛してるよサユカ。抱きしめてあげるよサユカ。キスしてあげるよサユカ! メチャクチャにしてあげるよサユカ!!」


「とっくにいろいろメチャクチャよ!!」


「さぁ、サユカ」


「あん、トメ様ぁ♪」


「カカすけ!? カカすけでしょ今の!!」


「サユカ……可愛いやつめ」


「トメ様……わたしを好きにして……やん」


「ちょっとおおおおっ! なにしてるのそこで! ていうかカカすけ、わたしの声マネは妙にうまくない!?」


「サユカ……今夜、暇かい? あぁ、でも君はいつも暇だったね。昼休みとか、放課後とか」


「それはあなたに会うためですわ、トメ様ぁ」


「ふっ、そんなこと言っても、トメ、って呼んでくれなきゃキスしてあげないゾ?」


「やん、意地悪な、ト、メ♪」


「よくできました。これはご褒美……」


「いい加減にしなさああああいっ!!」


 ドターン!! と、耐え切れなくなったわたしはついに自室の扉を開け放った。


 その瞬間――


『愛してるよサユカ様ぁ♪』


「混ざってる!? って、やめれえええええええええええっ!!」


 いきなり二人に増えたトメさん(ニセモノ)が抱きついてきて――わたしはメチャクチャにされた。


 どうメチャクチャにされたかというと……そうね。


 ハートが周囲に乱舞していたとだけ言っておくわっ……!


 サユカの任務と言いつつ閉じこもっているのはサユカちゃんという……細かいことはキニシナイ笑


 まぁ結局カカたちに強引に連れまわされているうちに一時的な対人恐怖症は治るのでしたとさ。めでたしめでたし。

 それにしてもサエちゃんのスキルが増えてますね。さらに危険になったような……


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