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カカの天下  作者: ルシカ
306/917

カカの天下306「いろんな真相」

「ただいまー!!」


「おじゃましまーす」


「おじゃましますっ」


 いきなりお邪魔してごめんなさいサユカですっ!


 学校が終わった途端に爆走してきたわたしとカカすけサエすけは、挨拶もそこそこにカカすけの家に上がりこみました!


「おかえりーといらっしゃーい」


 居間から聞こえるトメさんの声。いつもならまだ会社で働いている時間なトメさんだけど、有休を消化するために今日はお休みらしい。即、話を聞きたかったからちょうどよかったわっ!


「トメ兄! ちょっと聞きたいことが――って、あれ」


 勢い込んで入った居間にいたのはトメさんだけじゃなかった。


「おほほ、お邪魔していますわ」


 たしか、コタツ記念日のときにいたオホホおばさん!


「何してるんですかー?」


「ん、ああ。オホホおばさんが見逃したドラマをたまたま僕がビデオに撮ってたからさ、二人して観てたんだよ」


 本人を目の前にして「オホホおばさん」なんて呼んじゃっていいのかしら。


「おほほ、わたくし録画するチャンネル間違えていたのですよ」


 ……いいみたいね。気にしてないようだし。 


「何のドラマ観てたの? って、ああこれか」


 まだ観ていた途中らしく、今でもテレビの中では覚えのある顔が恋愛ドラマを繰り広げていた。


「そう、『初恋は実らない クリスマススペシャル! 〜サンタの初恋の場合〜』だよ」


 び、微妙に気になるタイトルね。あとで観せてもらおうっ。


「そんなことより! トメ兄、昨日デートしてたって本当?」


 カカの質問にトメさんは目を丸くしたあと、「ありゃー」と照れたように頭をかいた。


「まいったな、内緒のデートだったのに」


「ほ、本当にデートしたの!?」


「う、腕も組んでたっていうのはー」


「うん、あはは。恥ずかしかったんだけど、どうしてもって言うからさー」


 そ、そんな……


 そんな、そんな、そんなそんな、そんなそんなそんなそんなそんなそんなそんな――


「そんんなんそそなーそそんなんなんそーなんそーなん」


「さ、サユカン落ちついて!」


「サユカちゃんが壊れたー! 心がそーなんしてる!」


「おほほ、うまいこと言いますわね」


 わたしの頭はソーナン節で支配された。あははっ、ソーラン節の親戚だよ、楽しいよ、あはは……


「もう! トメ兄も言葉と行動には気をつけてよ! 腕組んだってなにさ!?」


「な、なんでそんな怒ってるんだよカカ。たしかにおまえに知らせなかったのは悪く思ってるけどさ」


「ほんと大悪人ですよー! サユカちゃんをこんなにして……そんなにサラさんが可愛かったんですかー?」


「……は? なんでサラさんの名前が出てくるんだ?」


 う? 


 ソーナン節が鳴り止んだ。


「なんでって、トメ兄。サラさんとデートしたんじゃないの?」


「ああ、その件か。や、急にデートなんてできないからさ、とりあえずクリスマスの鍋パーティーに招待するって形で納得してもらったけど」


 ……え?


「じゃ、じゃあトメ兄は誰とデートしてたの?」


「母さんだよ」


「「えええええええええ!?」」


 驚きの声をあげるわたしとサエすけ。カカすけは「なーんだ」と胸を撫で下ろしてるけど……こっちは「なーんだ」じゃすまないわっ!


「ついにトメさんのお母さんが登場なんですねっ」


「そ、それでトメお兄さんのお母さんはー? 校長はどこにいるんですかー?」


 問い詰めるわたしたちの言葉にまたもや眉をひそめるトメさん。


「校長、ってなんのことだ?」


「とぼけてもムダですよー! トメお兄さんの、そしてカカちゃんのお母さんは――貴桜小学校の校長先生でしょー! 違いますか?」


 自信満々に言い放ったサエすけ。


 しかし――


「おほほ、違いますわよ」


 愉快そうな笑い声。なんであなたが否定するのよっ!


「校長はわたくしですもの」


 って、へ? 


 はい?


「「はいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」」


 こ、この人が校長? 


「うん、実はそうなんだよ」


 隠しててごめんね、と笑うカカすけ。


「たまたまノリで呼び込んだ近所のおばさんが校長先生だなんて、夢にも思わなかったけどね」


「おほほ。あのときカカちゃんの前で教員免許を落としたりしなければ、バレることもなかったのですが」


「や、でもそのおかげで勤労感謝の手紙をお母さんにすぐ届けてもらえたんだよ」


「おほほ、ユイナさん――あなたのお母さんとは仲良くさせていただいますからね。もともと一緒になる空港でお茶する予定でしたし、お安い御用でしてよ」


 な、なんだかいろんな話が出てきて混乱してきたわっ。


 えーとっ、えーとっ、つまり、ああそうだ!


「じゃあ、お母さんはっ?」


「そーそー、じゃあトメお兄さんやカカちゃんのお母さんって誰なんですかー!?」


「んー……ま、いっか。二人になら教えても。その人だよ」


 え? まさか後ろに来てるとかっ!?


 誰もいない。


 周囲を見渡しても新しい人影など見当たらない。


 トメさんの指先が示すのは……


 校長先生、ではなく。


 ……テレビ?


「その女優さん、うちらの母親」


 皆様ご一緒に。さんっ、はいっ!


「「ええええええええええええええええええええええええええ!!!」」




 謎はすべて解けた。


 カカすけやトメさんがお母さんのことを公に言えないその理由。


 二人が欠かさず『初恋は実らない』というドラマを見続け、ビデオにまで撮っていたその理由。


 それは彼らのお母さんが――実年齢42歳にして20代の美貌を持ち、歳に見合う演技力で『初恋は実らない』を筆頭に数々のドラマで役をこなしきる驚異の女優、笠桐結乃(芸名)だったからなのだ!!


 そういえばタケダが言ってたっけ。『20代くらいの女性と』って。それにトメさんが『お母さんとデートしてた』って答えたんだから、それで気づくべきだった。


 ――なんてね。


 わかるわけ、ないわよおおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!


 こんな真相、いかがですか笑

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