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カカの天下  作者: ルシカ
305/917

カカの天下305「戦だ、がんばれタケダ」

 このごろずいぶんと寒くなったが、皆のもの元気にしておるか?


 む、俺が誰だって? ひかえおろう! ここにいる俺をどなたと心得る。先の副委員長 タケダであるぞ!


 好きな時代劇の真似事をしてしまったが、皆のものはわかってくれたであろうか? さてさて、なぜに俺がこのような時代劇口調なのかというと……戦だからだ!


 戦、それは男のロマン。


 戦、それは男の生き様。


 戦、それは都合よくなんでも格好よく表現できる言葉!


 そう、たとえ俺が今からやることが情けなくても――詳しく言うと「カカ君、クリスマスまーぜて♪」なんて拝み倒すようなことであっても、これは紛れもなく戦なのだ! 勝たなければならない戦なのだ! 


 というわけで目標を確認。いつもの三人組で戯れている様子。


 さぁ戦だ! 突撃だ!


 最近は名前も覚えてくれたようだし、適当に挨拶してナチュラルな会話で切り込むのだ!


「やぁ! カカ君聞いてくれよ。実は俺、クリスマスに予定がまったく入ってなくてな!」


「あそ。かわいそうに」


 え……あの、それだけ?


 い、いやいや! まだ勝負は始まったばかりだ!


「そ、そうなのだよ! いやぁ冬も真骨頂だな。日本だけでなく、人の心まで寒くしてしまうのだから!」


「かわいそうに」


 あの、ちょっと、本気で寒く……


「な、鍋とか、そういう家庭的で温かいもの! しばらく食べてないんだよ!」


「かわいそうに」


「かわいそうねっ」


「哀れー」


 四面楚歌!? 


 だ、だから俺は――!!


「同情してほしいわけじゃないのだよ!!」


 あ。


 言ってしまった!?


 しかも天高く吼えてしまった!


 か、カカ君の反応は?


 天に向かって叫んだままになっている顔を、おそるおそる下げてカカ君の顔を見る。


 カカ君はもう同情してはいなかった。


「はん、ざまーみろ」


「蔑んでほしいわけじゃなくてさ!」


 ええぃ! もう直球だ!


「カカ君、俺は鍋が食いたいのだ!」


「うらやましいでしょー」


「自慢してほしいわけじゃなくてさ!」


「あ、そういえばそこの戸棚に鍋あったよ。かじれば?」


「鍋自体を食べたいわけでもなくてさ!」


「もー、なんなのさタケダ。見たらわかるでしょ、今は調理実習中なんだよ? 料理されたいの?」


「そうよそうよっ、違うクラスの人は引っ込んでなさいっ」


「サユカちゃんも違うクラスだけどねー」


 そう、今日はカカ君たちのクラスは家庭科の授業で調理実習をしている。


 とは言っても今は休憩時間なので、別のクラスの生徒もちょこちょこ覗きにきたりしているのだ。あわよくばちょっと料理をつまもうなどと企みながら……俺は違うが。


「いいか! 俺はな!」


「これカカすけが切った野菜? ぐちゃぐちゃじゃないのっ」


「トメお兄さんとは大違いだねー」


「いっつもご飯作ってるトメ兄なんかと比べないでよ」


「き、聞いてない……」


 うぅ、そんなに楽しそうにトメさんの話を! いいなぁトメさん。男の嫉妬はみっともないが……む、トメさん?


「そういや母上が、昨日トメさんと綺麗な女性が二人でデートしているのを見たーとか言ってたな」


 ぅお? ポツリと呟いただけなのにカカ君たちの動きがピタリと止まった。


「タケダ、それホント!?」


 詰め寄ってくるカカ君の顔のアップに「やっぱかわえぇ」なんて思いつつ、慌てて頷く。


「あ、ああ! なんでも二十代くらいの、すごく綺麗な女の人と、腕を組みながらショッピングしていたとか――」


「二十代……まさか、サラさん? うー、見逃したなぁ! いつのまにデートなんか」


「さ、サユカちゃーん?」


 はっ、としてカカ君はサユカ君を見る。サエ君も話しかけているが……サユカ君は俯いたまま反応がない。


 いや、反応はある? なんだかぷるぷる震えているような。


 5秒後……サユカ君はどうやら力をためているようだ。


 10秒後……まだためているようだ。


 15秒後……もうちょいのようだ。


 20秒後……プチン。


「ふっざけんじゃないわよおおおおおおおっ!! なによサラって!? どこの皿よっ! いますぐ出しなさい割ってやる!!」


 なんか爆発したようだぁ!?


「サユカちゃん、人間のどこかを割ったら大抵犯罪だと思うよー?」


 と言いつつサエ君が持っているのは包丁ではあるまいか!?


「そうだよサユカン。割っちゃダメ」


 切るのならいい、とでも言いたげにカカ君まで包丁を!


「ふ、ふふふふ……トメさんの腕を……腕を!」


 サユカ君まで包丁持って、しかもそんなことを呟いていたら――腕を切り落とそうとしてるようにしか見えないのだが!?


「とにかく、今日は帰ったら即トメ兄に聞いてみよう!」


「「おー!」」


 騎士が誓いを立てるときのように剣――いや包丁をかかげ、頷きあうカカ君たち……あ、チャイムが。


「トメさんが、トメさんがお皿と!」


「腕を組むとかー、なんか私もちょっとムカつくかもー」


 むぅ、チャイムも鳴ったし自分の教室に戻らなければ! し、しかし目的が!


「カカ君! 君らがやるクリスマスパーティ、実は俺も出席したいのだが――」


「勝手にすれば!?」


 あ、あれ。なんかあっさり了承されたぞ?


「い、いいのか?」


「いいよそんなの! 今忙しいの、あっちいって!」


「まず、サラさんって誰なのー?」


「そうよそれから聞かせなさいよっ」


「実はね――」


 なんだか盛りあがってしまったようで、俺は完全に蚊帳の外だった。


 なんだか納得しかねるが……参加許可は出たので戦は勝ちだ! よしとしておこう。


 ……なぜだろうか、男としてはトメさんに惨敗な気もする。


 次回、急展開! お楽しみに♪

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