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カカの天下  作者: ルシカ
303/917

カカの天下303「お風呂はゆっくり入るもの」

 さーてお風呂だカカです♪


 今日の夕飯の肉巻きポテトおいしかったなぁーなんて思いながら、まずはシャワーをあびあび。


 そして次は頭を洗う――あ、ふと思いついた。


 たまにはトメ兄のシャンプーとか使ってみようかな、どんな感じになるのか。


 勝手にだけどちょっと拝借。適当な量を手の平に出して……うわ真っ黒い。炭とか混じってるシャンプーなのかな。そんなのがこの間デパートに売ってたけど。


 炭かぁ。洗顔フォームやボディーソープも炭入りのあったけど、果たして綺麗になるのだろうか。かえって汚れるだけのような気が……これは試さねばなるまい。


 適当に伸ばして頭につけ、そのままゴシゴシわっしゃわっしゃ。


 わっしゃわっしゃ……むー、なかなか泡立たないなぁ。こういうもんなのかなぁ。


 ……ダメだ。泡出ない。


 ザーッと頭を軽く流して、シャンプーの容器を手に取って説明書きを見てみる。


 なになに。メンズヘアシャンプー……おりょ、炭がどうとか全然書いてない。なんだか普通のシャンプーのようだけど、なんでこんなに黒いんだろ……あれ、この説明書きシール、なんか今にもはがれそう――そう思ったとき。


 ぺリ、とシールはあっさりはがれた。


 はがれた部分にはこう書かれてあった。


『牛肉にかけよう! おいしいバーベキューソース』


「誰が牛肉だ!!」


 私はおいしくなってしまった髪を逆立て、お風呂場を飛び出した!


 適当に身体をふいて猛ダッシュ! 居間でゴロ寝してるトメ兄を怒鳴りつける。


「トメ兄! これどういうこと!?」


「服を着ろ!」


 むぅ、トメ兄最近そういうのうるさいなぁ。こないだまでは素っ裸で歩いてたんだから別にいいじゃんねぇ。


「バスタオル巻いてあるからいいでしょ。それよりこれ」


「なんだ?」


 トメ兄のシャンプーに化けていたソースを突きつける。トメ兄はそれを手に取り、私を――いや、私のべトついた髪の毛を見た。


 そしてトメ兄は私の頭をむんずと掴み、鼻を近づけてくんくんと匂いをかいだ。


「なんで味付けされてんだカカ。お兄ちゃんは夕飯終わって腹いっぱいだから食えないぞ」


「誰も食えなんて言ってない! これはどういうこと!?」


「どういうことって言われても……」


「なんでソースがトメ兄のシャンプーに変装してるの? それともなに、トメ兄は毎日ソースで頭洗ってんの? 毎日味付けして誰に食べてもらってるのさ!? バーベキュー会場はどこ!? おかわりは自由なの!?」


 いろいろ問い詰める私の剣幕に、トメ兄はただ困惑するばかり。


「……あ」


 と思っていたら、何かを思い出したかのようにポンと手を打った。


「そういやさっき姉が来てたんだった。多分僕が目を離した隙にイタズラしたんだろう。僕をひっかけるつもりだったんだろうけど……なぜかカカがひっかかってしまったと」


「うぅー、たまにはトメ兄のシャンプー使ってみようと思って」


「えらい偶然もあるもんだな。ま、代わりにソースかぶってくれてありがとさん」


「私は牛肉じゃないってのに」


「そうだな、牛にしてはボリューム不足だ」


 トメ兄の視線が私の顔から下方――胸へと落ちる。


「……なんでかな。よくわかんないけど妙にムカつく」


「理由はなくてもムカつく、か。こういう悩みって本能で気にしちゃうもんなのかねぇ」


「胸ってどうやったら大きくなるの?」


「そだなー」


 トメ兄は少し考えてから立ち上がり、スタスタと移動し始める。私は後をついていった。


 そして――ぴと、と胸に当たる固い感触。


「とりあえず、これくっつけとけば大きく見えるぞ」


 まな板だ。


 これってあれだよね。


 殴っていいんだよね。


「はいやぁっ!!」


「ぐっ、はぁっ!?」


 回し蹴り&かかと落とし! って、あれ。殴らずに蹴っちゃった。まぁいっか。


「そ、その格好で蹴りはやめ、ろ……てて」


 そういえばバスタオル一枚だった。


「湯冷めしちゃう!」


「あ、頭、ちゃんと、洗えよぅ」


 痛みに悶えながらも小言は忘れないトメ兄でしたとさ。


 さて――冷え始めた身体にシャワーを当て、もう一度髪を洗う。もちろん今度はいつも使ってる自分のシャンプーだ。


 さっさと終わらせて湯船に入るんだ!


 私は気合を入れてシャンプーを頭に付けてわっしゃわっしゃとかき回す。


 かき回す――あはは!


 あははは!


 なんだろうねこの匂い!


 なんかいつも歯みがきのときに嗅ぐ匂いがするよ!


 あはははーちきしょーお姉のやろおおおおおお!!!




 その後、トメ兄が台所の隅に隠されていたシャンプーを見つけ、それを使って三回ほど頭を洗ってなんとか落ち着いた。


 ゆっくりと湯船に身体を沈める。肌に染み込んでくる温かさにホッと一息。


「ふぃー……ぱぱんぱぱんぱんぱん♪」


 トメ兄がよくお風呂で口ずさんでいるメロディを真似しながら、しばしの間ポケーっとする。


 ポケーっとしながら姉への復讐方法を考える。


 どうしてくれよう。ソースかけても食えない人だしなぁ。どうするか、どうするか……


「ぱぱんぱぱんぱんぱん♪」


 あー、どうするかはやっぱり置いといて、とりあえずはポケーっとしよっと。


 お風呂ってそういう時間だしね。


「はーぴぱぴぱ♪」


 ポケー。


 ポケー……お姉、なんかイヤなことでもあったのかなぁ。

 随分と騒がしいお風呂となってしまいましたね。


 でも何かと何かを間違えて使ってしまうというのはよくある話ですよね。寝ぼけて洗顔フォームと歯磨き粉逆に使ったーとか。

 ……作中のような間違いをする人はさすがにいないと思いますけど^^;

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