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カカの天下  作者: ルシカ
301/917

カカの天下301「カカの転機」

 こんばんは、トメです。


 夕飯の買い物も済み、さぁ調理にとりかかろう、と思ったら……調味料のほとんどが切れていることに気がつきました。不覚です。


 でも今から買いなおしに行くと夕飯が遅くなってしまう……というわけで。


「ほい、メモに書いておいた分のおつかいよろしくな」


「みゅー、トメ兄。ちょっと買ってくるもの多くない?」


「ああ、ついでに戸棚を調べたら、思ったよりいろいろ切れそうだったからな」


「みゅー」


「カカが買い物に行ってる間にできるだけ作っておくからさ、帰ってきたらすぐ夕飯にできるように」


「みゅーみゅーみゅー」


「何の鳴き声だ?」


「ヘゲラッチョ」


 ああ、なるほど。そんな鳴き声なんだヘゲラッチョ。


 説明しよう。ヘゲラッチョとは――カカがどこかで聞いて以来ハマってしまった言葉であり、何をどうしたのか『ヘゲラッチョ=不満虫』ということになっているのだ! 語源、そうなる理由、不満虫という生物……何から何までさっぱりわからない! しかし早い話が不満だと言いたいわけである。


 いつだったか、いきなり「ヘゲラッチョ! ヘゲラッチョ!」と言い出した妹の姿を見たときには「コイツの頭もクるところまでキたか」と思ったものだ。


「仕方ないな。じゃ、お釣りでお菓子を一個買っていいぞ」


「みゅーみゅー!」


「二個」


「いってきます!」


 よくわからん生物『不満虫』は耳障りな鳴き声を止め、ようやくお使いへと出かけてくれた。やれやれ……人の足元見やがって。


 まぁいいけどね、買ってくるのは許したけど今日食べるのは許さないし。おやつは一日一回という法則だけは、泣かれようが鳴かれようが不満虫が現れようが巨大化しようが曲げないのである。や、巨大化したらさすがに考えるが。夕飯だけじゃカロリー足りないだろうし。


 しかしずいぶんと逞しくなったものだ。小さいころのカカはそりゃもう気が弱かったのに……ちょっと、思い出してしまった。


 小さいころの、カカを。




 あのころは、そう。今みたいに家族はバラバラじゃなくて一緒に暮らしていたな。


「とめにーちゃーん!」


「あぁはいはい、今度はなんだ?」


 そしていつものごとく僕にしがみついてくる妹。この頃のカカは本当に可愛かった。すぐ笑い、すぐ泣く。「私最強」って顔に書いてある現在とは大違いだ。


「おとーさんがー」


「はいはい、父さんがどうした?」


「あやしー」


「それは仕方ないんだよ。お仕事なんだから」


 普通なら「お父さんが遊んでくれない」とかダダこねる子に使う言葉なんだろうな、これ。


「仕方ないとか言うな! か、カカ。お父さんはな、仕事はちょっとあやしいかもしれないが家ではとっても」


「怪しいよ、父。あたし授業参観のとき毎回恥ずかしいもん」


「ああ、それは僕も」


「なんでだああああ! 家では忍者っぽいことしてないのに!」


「染み付いてるんじゃない? 服黒いし。鍛えてるからマッチョだし。あたし女でよかったわ、そんなんにならなくて」


「似たようなトレーニングしてるくせに締まった身体しおってからに……いや、貴様らのことなどどうでもいい!」


「うわ、ひど」


「父ってロリコンだっけ?」


「だぁらっしゃい!! 親は子供が可愛いものなのだ」


「あたしらは?」


「長女はバケモノ、長男は冷めたガキ。どう可愛がれというのだ」


 ハッキリしすぎだこのおっさん。


「か、カカ? お父さんだよー?」


「やー」


 そして普通なら生まれたばかりの子供に言いそうなセリフを言って嫌がられる父さん……痛い痛いカカそんなに抱きつかないで、お腹を絞めないで、なんか出ちゃうから。  


「ほらほらパパ君、そんな無理に迫ってもカカ君が怯えちゃうだけでしょ?」


 おっと、ここで母さんの登場だ。このときはまだうちにいること多かったんだよな。


「で、でも」


「でもじゃないの。あとで慰めてあげるから、ちょっとあっち行ってなさいな」


「……はーい」


 いい歳したおっさんが完全に子ども扱いである。


「カカ君、おいで」


 母さんが言うと、僕にしがみついていたカカはテテテと母さんに駆け寄り、また抱きついた。


「むぅ、カカちゃんは本当にトメと母にしか懐かないね。父ほどじゃないけど、あたしも怖がられてる感じだし」


 生存本能がバケモノを警戒してんだろね。


「んー、カカ君も少しでいいからカッ君を見習ってくれればいいんだけどね」


「おねーちゃんをー?」


「うんうん。そうすればもっとトメ君にも好かれると思うよ、ね? トメ君」


「う、え、っと」


「カッ君みたいな子、好きだよね?」


 そういう言い方されると初恋の苦い思い出が蘇ってすんごくイヤなんだけど……ここは頷くしかないよな。カカのためにも。


「そう、だね。もう少し強気な子が好きかな」


「トメにーちゃん、そうなんだ」


「ほら、トメ君もこう言ってるし」


「うん、わかった! 私、おねーちゃんに弟子いりする!」




「それを聞いたときの姉の喜びようったらなかったなー。初めてカカとまともに交流持てたようなもんだし。そして弟子入りしたらいつの間にか必要以上に強気になって、僕と姉の呼び方から『ちゃん』が消え、父さんはカカを苦手にしたまんま赤面症になって消えがちに……ああ、若かりし頃の過ち」


 あのとき僕が頷かなければ、可愛い妹のままだったのかな……


「ただいまー!」


 物思いに耽っている時間は思いのほか長かったのか。もうカカが帰ってきた。


「ぐえ」


 そして腹にもらった体当たり。


「ねえねえ聞いてトメ兄! 私ね、いまゴッスンゴッスン踊りしながら歩いてたのね! そしたら卵が入ってる袋を落としちゃったんだけど、割れなかったんだよ! これはもう私の人生が『割れることはない』みたいな意味だよね! 安泰だね!」


「そんな神社の裏でわら人形に五寸釘を打ち込んでそうな踊りを踊ってるおまえの人生が安泰かはかなり疑問だが……」


「えー!」


 不満げに言いながら僕の腹を揺さぶるカカ。


 その腹への衝撃を感じながら、変わってないこともあるんだよなぁ、などとしみじみ想――ああやっぱちょっとうざいわ。あのころより威力上がってるし。


 やっぱりおとなしい頃のカカのほうがよかったかもな。


 ……え? ロリコン?


 断じて違う!!!


 はい、『トメにべったりだった幼いカカがどんなだったか書いてほしい』とリクエストをもらったので、ちょこっと回想書いてみました。

 カカの転機ですね。でもびみょーに父さんのほうが目立ってるような^^;

 もうちょっとチビカカ書きたかったなー。まぁまたいずれ書きます♪

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