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カカの天下  作者: ルシカ
298/917

カカの天下298「名探偵サエの事件簿」

「サユカちゃん手伝ってー!」


「な、なによ急にっ」


 こんにちは、サエです。


 ただいま昼休みの学校です。とあるツテから素晴らしい情報をゲットした私は、協力を求むべくサユカちゃんに声をかけました。


「ほらほら、読書なんて似合わないことしてないでー」


「う、うるさいわねっ」


 あれ? 本のタイトル……『初恋は実らない』って。


「サユカちゃん……」


「そんな可哀想な人を見るような目で見るなっ! わたしはね、これを読んで初恋に負けないようにしてるの! スポーツの教則本みたいなもんなのっ」


「その教則本だとー、初恋が実らないことを教えてもらってるようにしか聞こえないんだけどー」


「じゃあ、あれよ。ぬいぐるみ写真集見ながら『うちの子のほうが可愛い!』って言うようなものよっ」


「サユカちゃん、そんなことしてるの? ぬいぐるみバカにも程があるよー。なんかくらーい」


「やかましいわっ!」


「飼ってる犬や動物ならまだしも、ぬいぐるみって。さみしー」


「う、うるさいってのっ! とにかくわたしは恋について勉強してるの。恋もしてないサエすけは口出さないでよ」


「濃いことなら結構自信あるんだけどー」 


 たしかに恋のことはあんまり知らないなー、まだ恋してないもん。誰かいい人いないかなー。


「あ、それは置いといて。すごい話があるんだよー」


「なによっ。カカすけが暴れたとかカカすけが落ちたとかカカすけがヘゲラッチョになったとかっ?」


「そんなのいつものことだよー。ヘゲラッチョは特に。とにかく来てよ」


「はいはい、わかったわよっ……そういうわけでイチョウさん、ちょっと行ってくるわねっ」


「はい……」


 あら隣にいたのねイチョウさん。気配がないからわからなかった……それにしてもずいぶんと本の世界に没頭してるみたいだー。サユカちゃんの言葉にもうわの空で答えてるし。


「イチョウさん、そんなんじゃこの先やっていけないよ? 喋ってなんぼの世の中なんだからー」


「はい……」


「喋らなかったら居るのか居ないのかもわかんないんだよー? この世界」


「はい……」


 だめだこりゃ。


「だめです……ヘゲラッチョって国語辞典に載ってません」


「それ調べてたんかいっ!」


「イチョウさん、侮れないねー」


 前言撤回。この世界から消えることはまずなさそうだ。


「とにかく、行ってくるわねっ」


「あ、あの。ヘゲラッチョとはどのような――」


「とは言ったものの、どこいくの?」


「あ、うん。職員室にー」


「あ、あの。ヘゲラッチョとは」


 口では説明しにくくてめんどいので、私とサユカちゃんはさっさと教室から逃げ出した。


 そしてダンダカダーン! と職員室前。あ、これ移動の音ね。カカちゃん直伝の。


「足が痛いわ……」


 この音は足に響くね、膝に悪そう。自重しよう。


「そういえばカカすけは?」


「カカちゃんはトイレで戦闘中だよ。こほん、失礼しまーす。えーとー、あ、いたいた。教頭先生」


 他の先生方は都合のいいことに誰もいなかった。皆どこいったんだろ、まぁいいやー。


「ふむ、なにかね諸君」


 相変わらずご立派なしゃべり方だ。


「実は小耳に挟んだんですけどー、校長先生が帰ってきてるって本当ですか?」


「……どこでそんなものを挟んだのか不思議だが、その通りだ。いつもの狩りとは違って向こうに滞在せずに即帰ってきたようでな」


「なんですぐ帰ってきたんですかー?」


「うむ、それがな。アフリカまでは行ったのだが、狩ろうとしたら現地の人に怒られたらしい」


「なんて普通の理由だろー……」


「それを聞いた職員が全員、同じことを言ったよ。ちなみに校長はヒョウを狩れなかった腹いせに、現地の人の頭を刈ってきたそうだ」


「うひょー」


「それも全員言ったぞ」


「連帯感あふれる学校でなによりですねー」


「まったくだ」


 うんうんと頷き、教頭先生に別れを告げて職員室をあとにする。


「あのさ……わたし、一緒に来た意味あったの?」


「あるよー。ほら、こないだニシカワ君が校長の正体を暴きそうになったとき、捕まってたでしょー?」


「ああ、そんなこともあったわね。それで?」


「私あんなの嫌だもん。だからそうなりそうになったら、『これで勘弁してください』って」


「わたしを差し出すんかい! なに、わたし身代わりっ!? あと『これ』ってなによっ!」


「大丈夫だよー、サユカちゃんおいしそうだから。ネタ的にも」


「ネタってなに!?」


 わめくサユカちゃんは置いといて……


「とにかく情報は確かだった。ということは、トメお兄さんの家にいけば校長に会えるかもだねー!」


「へ? なんでトメさんの家が出てくるのよ」


「ふっふっふー、カカちゃんっぽい破天荒な行動、たまにしか帰ってこないという共通点、それに校長先生がカカちゃんの顔見知りという点からして導かれる結論はただ一つ! カカちゃんのお母さんは校長先生なんだよ!」


「ええっ!? ほ、ほんとなのそれ!」


「きっと間違いないよ。だからカカちゃんの家にいればきっとそのうち会えるよー」


「よしっ、じゃあこれからの放課後はカカすけの家に集合ねっ」


「うん、決まり!」


「……って。これ、いつも通りってことじゃない?」


「……そだね」


 でも待っててよ、校長お母さん!


 私が絶対、正体を暴いてみせるからねー!


 果たして腹黒探偵サエは真相を暴くことができるのか!

 腹黒探偵……本当はサブタイトルにしたかったけど、別にそんなに腹黒いことしてないからお蔵入りに……がっくし(なぜ

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