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カカの天下  作者: ルシカ
297/917

カカの天下297「恋する乙女は本を読む」

「そういや最近さ、昼休みにこっちの教室こないよね。サユカン」


「そうそー。寂しいなー」


「うっ……別にいいでしょっ」


 学校の帰り道、カカすけとサエすけのジトーっとした目にたじたじなサユカですっ。


「もともとクラス違うんだし、いつも一緒にいなきゃならないってわけじゃないしっ」


「でも今まではいつも一緒がよかったんでしょ? 毎日来てたし」


「サユカちゃんは私たちが大好きなんだよねー」


「そんなんじゃないわよっ! ただ暇だからそっちに行ってただけで」


「毎日暇だったんだ」


「かわいそー」


「余計なお世話よっ」


 頭を撫でるなっ!


「んー、でもつまり、ここ最近は暇じゃないんだねー。お昼休み」


「……ええ、そうね。君ら以外にも喋る人できたし」


「お、もしかしてイチョウさんか」


「あー、こないだのイメージアップ作戦のときの人だねー」


 カレー好きってイメージしかアップしてないけどね。


「どんな感じなのー?」


「どんな感じ……そうね。一言で言うと、やりづらいわ」


 今日の昼休みのことを思い出してげんなりしながら、ため息まじりにわたしは言った。




 せっかく話すようになったんだから……と、最近の給食はイチョウさんと食べるようにしてるんだけど。


「お、お魚、おいしいですね!」


「そうね、わたしはお肉より好きだからよく食べるわ」


「そ、そうですか」


 こんな感じで、どうにもぎこちない。なんだかわたしに怯えているような……わたし、何かしたかな?


「こ、このお漬物、おいしいですね!」


「そうね、わたしも家でお漬物はよく食べるわ。深漬けが好きね」


「そ、そうですか」


 ……会話が進まない。


 そんなこんなでお互い給食が食べ終わり、イチョウさんはいつものように本を取り出して読み始めた。


「イチョウさんって本好きよねー」


「あ、はい! わたくし本という本が大好きでして……おうちのお部屋も半分くらい本で埋まってたりしてまして」


「本に漬かってるわね」


「わたくしを食べるのですか!?」


「……は?」


「わたくしは漬物じゃないですよ!」


「いや、知ってるし」


 この子の中でわたしはどんな怪獣なんだ。誰か「わたしが怪獣だ」とでも吹き込んだのか?


「よくわかんないけど、食べないから安心してっ」


「そ、そうですよね、深漬けが好きなのですよね。わたくしなんてまだまだ浅くて」


 漬物から離れなさいって。


「で、でも深く漬かったら食べられるのでしょうか……それはいったいどのようにナニをどうやって……ぽ」


「なぜ赤くなる」


「よく食べるのですよね」


「食べんてっ」


 あー、わたしが話をそらすしかないか。


「ところでさ。この本返すわね」


「あ、読んでいただけましたか!」


「いや、言いにくいんだけど、ちょっと苦手っぽいから途中までしか」


「そうですか……」


 残念そうに俯くイチョウさん。ちょっと心が痛い。


 イチョウさんが本好きということで、仲良くなるきっかけになればと思い、借りてみたその恋愛小説。最近の昼休みは読書にふけるイチョウさんの隣でそれを読んでいたんだけど……とても切ない内容だった。


 切ない恋物語は、イヤだ。


「イチョウさんはこういうの好きなのよね」


「はい! こんな恋がしたいなーとか、こんな風になりたいなーとか。読んでるだけで前向きになれるのです!」


「そ、そういうもんなんだ……」


 わたしが読んだのはとてもじゃないけど「こんな風になりたい」と思えるような前向きな内容じゃなかったけど。


「で、君は今何を読んでるわけ?」


「はい、最近ドラマ化された『初恋は実らない』の原作を」


「思いっきり後ろ向きなタイトルじゃないのっ」


「あぅ」


 そのドラマ、カカすけとかトメさんは欠かさず見てるほど好きらしいけど……


「わたし、それ嫌い。だってそのタイトルの通りだと、わたしは……」


 わたしの、初恋は。


 ……だから嫌いなのよ、切ない物語って。読んでいるうちに、わたしの恋もそんな切ないものになってしまいそうで、怖くて。


「恋をなさってるのですね、岸村さん」


 少し恥ずかしかったけど、頷いてみせる。


「そんなときこそ、この本を読んでみるべきだと思うのです」


 そう言って差し出してきたのは、今の今までイチョウさんが読んでいた『初恋は実らない』の原作本。


「後ろ向きになれってことっ?」


「違いますよ」


 イチョウさんは微笑んだ。


 なぜだろう。


 いつもいつも弱々しく曖昧な表情を浮かべているイチョウさんが、そのときだけは――


「初恋は実らない? そんな迷信に負けるもんか! って、そんな気になりますから」


 とても、頼もしく見えた。




「――前向きなのは本の内容じゃなくて、本人ってことよね」


「ん? なんて言ったのサユカン」


「いや、なにもっ」


 思い出し笑いしながら、わたしは答える。


「サユカちゃん、イチョウさんがやりづらいなら、いつでもこっちに来ていいんだよー」


「ありがとサエすけ、でも大丈夫。今はまだやりづらいけど……嫌いじゃ、ないからっ」


 背中のランドセルに借りた本の重みを感じながら、思う。  


 待ってろ初恋、わたしは負けないっ!


 恋する乙女は強いのよっ!


「カカすけ! 今日はトメさんは?」


「珍しく残業で遅くなるって言ってたから、今日は会えないと思うよ」


「うぐっ!」


 負けないから。


 負けないもんねっ!!


 くそぅ。


 がんばれサユカちゃん。応援してる人は結構いるぞ。


 それはさておき。

 イチョウさんは本キャラです。本が絡むと登場します。

 アヤちゃんは歌キャラです。歌いたくなったら出てきます。

 カレーの人はカレーキャラです。枯れキャラじゃないよ。

 そんな感じに脇が固まってまいりました。


 あ、そうそう。そろそろ人気投票の結果発表ですね!

 ぎりぎりまで票を貯めている方はそろそろ投票お願いしますね。私がカカラジを書き始めるまで、が期限ですので、なるべくお早めに(笑

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