カカの天下292「弱点の避け方」
うーさぶさぶ、カカです。
今日も今日とて通学途中にサエちゃんとサユカンと合流、三人仲良く歩いてます。
「あー、一日中コタツにいたい……」
「それだとコタツ虫になっちゃうわよっ」
「コタツ虫か……何食べるんだろ」
「人の足でしょー」
「「こわっ」」
そう考えると総理大臣なんか丸呑みじゃん。
……ん?
不意にサエちゃんが私の腕を撫でた――や、払った?
「どしたのサエちゃん。私の腕になんかついてた?」
「うん、ついてたー」
「何が?」
「ゆーれー」
「ぶっ!!」
ななななななにを仰りますやらこのお方!?
「そういやサエすけってそういうの見えるんだったわね」
「幽霊も寒いから人肌恋しくてひっついてくるんだねー」
「まままままっさかぁ!?」
「そんなにママが恋しいのー?」
「違う!」
ホントはちょこっと恋しいけど!
「大体寒いからひっついてくるなんて、そんなのハエみたいじゃん!」
ハエは自分の身体が冷たいから温かい人肌にくっつきたがるんだよ!
「わ、幽霊のことをハエなんて……祟られるわよっ」
ガシャン!!
「ぅひあうあ!?」
び、びっくりした……私が歩いていたすぐ隣に皿が落ちてきた!? う、上から……?
「あー、幽霊さん怒っちゃったかなー」
「エエエエ!?」
「いや、なんか上のマンションで夫婦喧嘩っぽいことしてるから、それのとばっちりじゃないかしら」
「あれはとり憑かれてるんだよー」
「そ、そうなのサエすけっ? たしかに聞いたことのない言葉が聞こえてくるけど。ピーとかピーとか」
ピーだけじゃん。
「あれ、なんでかピーしか言えないわ」
放送禁止用語なのかな。ってそれどころじゃない!
「と、とにかくどうすればいいのサエちゃん! 幽霊さんが怒ったら!?」
「うーん、私なんかは幽霊さんがとり憑こうと向かってきたら避けるけどー」
「どうやって!」
「反復横とび」
……マヂ?
それから私は、ことあるごとに幽霊を避けた。
授業中に誰かが筆箱を落とした音に反応して反復横とび!
「おいカカ。何してんだてめぇ」
「幽霊を避けてます」
誰かがバランス崩してぶつかってきたら反復横とび!
「おいカカ」
「幽霊を避けてます!」
「いや、おまえ今ぶつかって倒れたタケダ踏んでるぞ」
反復踏み踏み!
給食できゅうりが出たら反復横とび!
「食前の踊りか、カカ」
「給食にきゅうりなんていう毒をしこんだ幽霊を避けてます」
「地味な幽霊だな。ほれ」
「うぐっ!?」
横とび中にも関わらず、テンカ先生の放ったキュウリ突き(箸につまんだきゅうりを相手の口へ突き出す恐ろしすぎる技)は見事にクリーンヒット。
「ぐ、ぐぞぅ、幽霊め……」
「その言い方だとオレが幽霊みたいじゃねぇか」
「じゃーきゅうり先生め!」
「誰がだ。ほれほれ」
「うぐ、うぐぐぐ!」
反復、きゅう、り……がくっ。
数々の幽霊を避け続け、ついに帰りのホームルームだ!
「さて、これで連絡事項は以上だ……あ、幽霊」
反復横とび!
「先生、そんなこと言ってカカちゃんで遊んだらダメですよー。幽霊さんはもうひっついてるんですからー」
振り払う勢いで加速反復横とび!
「……そろそろやめるか」
「幽霊じゃなくて周りの人が避けるようになっちゃいますからねー。カカちゃん、そんなことしても――」
「幽霊は避けれた!?」
「え、えーと」
「避けれた!? 振り払えた!?」
「いや、だからなカカ」
「避けれたの!? 振り払えたの!? どっち!!」
あー、いや、その……と仲良く困るサエちゃんと先生。
「うん、全部避けたよー」
「そ、そうそう、振り払ったし」
「それが聞きたかった」
細かいことはどうでもいい。
それさえ聞ければ安心なのだ。
「サエちゃん、また幽霊きたら教えてね」
「あ、うん。全部追い払ってあげるよー。心配いらないよー」
「サエ、この話題で遊びすぎるとヤバそうだな」
「はい……カカちゃん、本気の本気で苦手なんですねー」
細かいことはどうでもいい。
心配いらないって、それさえ聞ければ、それで!
カカ、超必死です。
変といわれようと気にしません。周りの目も気にしません。
超必死だから。




