カカの天下291「丸くなってるだけじゃない」
「はぁー、ぬくい……」
「ぬくぬくだなぁ……」
ぬくーっとしてるトメです。
ただいま出したばかりのコタツでカカとぬくぬく中です……まったりまったり。
昨日はまったりできなかったからなぁ、ウーロン茶パーティINコタツのせいで。ちなみにそのとき僕は無難にカカの隣に座りましたとさ。
狭かった。しかしそれ以上に肩身が狭かった。なんでか皆「このチキンが」って感じで睨んでくるから……や、だってそんな冒険する理由ないし、ねぇ?
ともかくそれは昨日のこと。いまはカカと二人でコタツをのびのびと使ってます……
「トメ兄、みかんほしくない?」
「おー、コタツに必須なアイテムだな」
「買ってきてよ」
「ヤダよ」
コタツから出たくないもん。
「コタツに入りながらみかんをむきむきするのは日本の伝統行事だよ? 国民の義務だよ?」
「誰が決めた、そんな義務」
「総理大臣だよ」
……あぁ、なんかいま僕の足に触った毛玉の塊のことか。いつの間にコタツに忍び込んだんだこのネコ。
「ほら、早くみかんくれないとトメ兄の頭をむきむきするよ?」
「すばらしく赤い身が出てきそうだけどやめてくれ」
「じゃあそのヅラを」
「そのネタひっぱるのもやめて?」
そんな事実はないけどなんか悲しいから。
「それじゃ総理大臣をむきむきするよ?」
可愛そうな大臣、みかんむきむきなんて義務を作ったばっかりにご臨終か。
コタツ布団を持ち上げて中を覗き込んでみると、そこには殺気でも感じたのか縮こまっている総理大臣が。ネコはコタツで丸くなるもんなのに、そんな隅で震えて……総理大臣がこれだと先行き不安だな日本。あれ、前に逆なこと思ったような気が。まいっか。
「はやくー、むきむき」
「それだけ聞いてるとマッチョなムキムキに聞こえるな」
「早くしないとムキムキになってトメ兄をやっつけるよ!」
いまやってるトレーニング続けてたらいつか本当にそうなりそうだな。
「もしくは総理大臣がムキムキになるよ!」
なんとなく総理大臣がムキムキだとイヤだな。や、理由はないが……なんかヤダ。日本が暑苦しくなりそうで。地球温暖化が進んじゃうよ。
「最後にはみかんがムキムキに!」
どんなみかんだ。確かにみかんがムキムキになるような世の中になったら地球の最後っぽい気もするが。
「みーかーんー!」
「そんなに言うならカカが買ってこいよ、どうせ暇なんだし」
「む」
いたっ、コタツの中でカカに脚蹴られた。
「なにするっ」
反撃! なんか「にゃう」とか聞こえたけど気にしない!
「いったいなぁ、うぉりゃ!」
んにゃぅ!?
「だっ!? 捻りをくわえるとはなかなかやるな。てい!」
ぎにゃん!?
「ったぃん! 足の指先でつねるなんて……見直したよトメ兄!」
「まだまだ……僕のコタツ技はこれからだ!」
「私だって最終奥義のコタツ投げは隠してるんだからね」
隠してないし。ていうかそれだけはやめれ。
臨戦態勢で睨みあう僕ら。しかしそのとき、予想外なことが起こった。
「……あれ?」
「う?」
僕とカカはぽかんとして、コタツの上に立ったソレを見つめた。
総理大臣だ。
「どしたの、そうり――」
きしゃああああああああ!!!!!
「ひっ」
「うぁ」
モノスゴイ威嚇音。
毛を逆立てまくるネコの姿に、僕とカカは完全にすくみ上がってた。
かろうじて僕とカカがしぼり出した言葉は一つだけ。
「「……そ、ソーリー」」
ダジャレはいらん、とばかりに睨んでくる大臣。
「「も、もうしわけありません総理」」
わかればいい、と言わんばかりにコタツに潜っていく総理大臣。
「……と、トメ兄、私みかん買ってくるね」
「ぼ、僕も行く」
この後、総理大臣にみかんを献上したのは言うまでもない。
前言撤回、やっぱ日本も安泰だ。
ていうかみかん食べるネコもいるのね。
コタツといえばはずせないネコ。というわけで総理大臣の逆襲話です。
あ、言うまでもないとは思いますが一応。ここに書かれている総理大臣という単語はあくまでネコのことを指して言っているのであしからず。日本がどうとかいうのもネコの名前をネタにした言葉遊びであって、政治に口出す気なんかないですよ?(笑
あと、知り合いにいるのですよ、みかん食べる猫を飼ってる人。冬になると一緒にみかんを食べるとか……和むわぁ。