カカの天下290「コタツ記念日」
最近、シャレにならない寒さになってきましたね。そんなわけでついにアレを出すことを決意したトメです!
早く出せ出せと妹に言われ続けてきたけど……これ、出すの面倒なんだよね。しかし、なにはともあれ!
「コタツの設置、完、了!」
「イェーイ!」
「おめでとーですー!」
「トメさんお疲れさまっ!」
なぜかコタツを設置するというだけで呼ばれてきたサエちゃんとサユカちゃんも大喜びだ!
「愛してるよ、コタツ!」
「私もだよー、コタツー!」
「両想いねっ、コタツッ!」
誰がどれに告白してるんだか、さっぱりわからん。
「で、でもわたしは、その、コタツよりも、と、トメさんのほうが……!」
「でもトメ兄って生ぬるいよ」
人肌ってのはぬるいもんなんだよ。悪かったな熱い男じゃなくて。
「とにかくコタツ! 入っていい?」
「おぅ、スイッチ入れたからそろそろ温まってくるだろ」
「じゃ私一番風呂!」
「あ、ずるいー」
「わたしもっ」
滑り込むようにコタツへ突っ込んでいくカカ。そしてそれに続くサエちゃんとサユカちゃん。
「風呂じゃないだろ」
「似たようなもんだよ……はぁー、極楽じゃー」
「骨身にしみるー」
「ビバノンノンッ」
ババくさいなコイツら。
……ん? なんかドタドタと外から騒がしい足音が。
「コタツはここか!」
扉を吹き飛ばしかねない勢いでやってきたのは予想通り、姉だった。ほんとに吹き飛ばすなよ、寒いんだから。
「なんであんたはいっつも話してもないことを都合よく察知できるんだ」
「あたしにはコタツセンサーがあるんだよ」
「へー、そう。どのへんにあるんだ?」
「大脳と小脳の間」
「ぐ、具体的だな」
もしかしてホントにあんのか?
「とにかくあたしも入る!」
「はいはい、勝手にしろ」
「わーい」
「お姉、なんで私にくっついてくるの」
「コタツのぬくもりもいいけど、人肌のぬくもりもほしいのさ」
「それ二股だよ! コタツさんに謝れ!」
あー騒々しい、っていつものことだけど。さて僕も……ん?
「おじゃましまーすっと。おー、コタツだコタツ」
「……なにしにきた、テン。まさかおまえにもコタツセンサーが?」
「んあ? なんだそれ。トメ、おまえバカっぽいぞ」
「んだと! これはな、姉が」
「なんだそれ弟。バカじゃないの?」
こ、この……!
「オレはな、カカが今日はコタツ記念日だって言うから来たんだよ」
「……コタツ設置するってだけで来るのか、おまえは」
「だってうちコタツねぇもん。おらおら、オレにも入らせろ」
おい、普通の四角テーブルのコタツに五人も入るなよ。僕の場所が……
「おほほ、コタツ会場はここかしら!」
近所のオホホおばさん!? っていうか会場ってなに!?
「あらあらトメさん。本日はお呼びいただき、ありがとうですわ」
……カカのやつ、コタツのことどんだけ触れ回ってるんだ。
「こ、コタツはここかいのぅ……」
いつぞやの近所のおじいさんまで!
「あのですね、おじいさん。ちょっと心苦しいんですけど、もうコタツは満員で――」
「うちのコタツは娘夫婦と孫のもんじゃ……誰もいないときにしかコタツに入れん……わしゃあ寒ぅて寒ぅて」
違う意味で心が苦しい!
「どうぞ入ってください! えぇほんと好きなだけ!」
「トメさん、わたくしもいいかしら?」
「おばさんも自宅でコタツに入れない理由が?」
「おほほ! 出すの面倒でして」
ぅおい。
「コタツって人気者だね」
「じゃカカちゃん。もし子供ができたらコタツって名前にしよー」
「……なんで赤くなるのカカすけ」
「テンちゃん、今度ここでコタツ入りながら熱燗とかどうよ」
「お、いいねー。お供するぜ姐さん」
「おほほ、やっぱりコタツは和みますわね。ところでウーロン茶はないかしら?」
「おぉ、心が温まるわぃ……」
……や、あんたら。よくそんなぎゅうぎゅう詰めで和めるな。コタツの魔力か?
「僕も、入りたいんだけど、なぁ」
『…………』
あれ? なんか僕の漏らした一言で皆が静止した。かと思えば――
バンバン! と隣を叩くサユカちゃん。
それとなく隣を空けるカカとサエちゃん。
横に転がって隣の隙間を塞ぎ、入れないようにするテン。
なぜか「ここに来い」と言わんばかりに股の間を広げる姉とオホホおばさん。
死んだように眠るじーさん。って大丈夫かおい!?
「……ぁ、買い物あったんだっけ」
とりあえず逃げた。
帰ってきてもそのままだったら、果たしてどうするべきか。
寒くなってもなかなかコタツ出さない家庭、ありますよね。うちはそうでした。まだ我慢できるし、コタツ布団を出すのが面倒だから、ということでズルズルと……
出したら最強ですけどね!
ええもうホントに。
コタツの魔力ですよ。コタツは魔法使いですよ。RPGにでれば魔王も一発で骨抜きですよ。
あぁ……コタツほしい(実家暮らしなときはともかく一人暮らし中の今はない笑