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カカの天下  作者: ルシカ
287/917

カカの天下287「姉の役割」

 ちっす、カツコだよ。またの名を姉だよ。あだ名は姐だよ。文句あっか。


 うし、ないね。さてさて、今日は仕事が早く終わったので我が家に遊びにきてみたよ。ちょっとした用事もあるし。


「やっほー! 者ども出あえー!」


「……くせ者が言うセリフじゃないぞ、それ」


 居間を覗くと、けだるそうに挨拶する弟君が。


「おっす、姉」


「なにしてんのさ弟」


「仕事から帰ってきたとこだからな。カカは遊びに出てるし、ごろごろしてた」


「不健康だねぇ、運動しなよ。たとえばサンバ踊ったり」


「運動不足だからって、いきなり部屋でサンバを踊り出すやつがどこにいるんだ」


「あたしはやってるよ。情熱的に。でっかい葉っぱを頭につけて」


 昔から街を歩いててでっかい葉っぱが目に入るとテンション上がるんだよね。だからついつい千切って持ち帰ってしまうのだ。たまに「コラー!」っておっさんが追いかけてくるけど。しかしあのおっさんも「コラー」に飽きないのかね。もう10年以上「コラー」って言ってるよ。たまには「コーラ」とか言ってみればいいのに。


 コーラ飲みたくなってきた。


「……踊るのは百歩譲っていいとして、窓のない部屋でやれよ。もし近所の人に見られたら」


「シャル・ウィ・ダンス? って言ってやるさ」


「いきなりサンバ踊ろうって誘われても困るだろうに」


「そうかな。こないだ見られたときにそう言ってみたら友達できたよ。一緒に踊った!」


「……この街の人ってつくづくノリいいな」


「もちろん二人とも葉っぱつきで。しかもその人すごいよ。花屋さんらしくてさ、わざわざ店からひまわり持ってきて踊ったんだから」


「つけたんか、それ」


「うん、股の間に」


「なぜに」


 ノリで!


「二人して」


「だからなぜに」


 とことんノリで!


「楽しかった!」


「そらそうでしょうさ。そんなにはっちゃければ」


 そういえばひまわりって最近は花屋にいけば一年中手に入るらしいね。風情がなくなったもんだよね。


「あ、そうそう。これ、お土産ね」


「なんだ、またビールか」


「おぅ、たまには姉弟で飲もうよ」


「……前みたいなノリにならないならな」


 あー、こないだのあたしらトリオ結成でテンション爆発したときのことね。あれはやりすぎたと思ってる。でも反省はしていない。


「あとね、『そこ』のチェックにもきたのだよ」


 う、と呻いて耳を押さえるトメ。


「や、別にさ、自分でやってるし。この歳だし」


「いいからいいから。なんのためにあたしが母さんにテクを習ったと思ってるの」


「……仕事が忙しくなっていった母さんに代わって僕らの耳を守るため、だろ。何度も聞いたよ」


 そう、あたしが今日ここに来た目的……それは、おふくろさんの究極奥義、耳掃除をするため!


「たしかに母さんの耳掃除はヤバいくらい気持ちいいけどさ。お花畑見えるし」


「あたしのだって三途の川くらい見えるでしょが」


「耳かきに毒とか塗ってるわけじゃないよな。殺すなよ」


「でも気持ちいいっしょ?」


「……む」


「この上なくスッキリするっしょ?」


「……や、まぁ」


 ふ、母さん直伝の耳掃除の誘惑に勝てる者などいない!


「おし、やったるよ。えーっと耳掃除道具は、っと……あったあった。ほれ、転がって。ここらへん。んで頭あげて」


 寝転がったトメの頭を明るい場所に持ってきて、後頭部を持ち上げてあたしの膝を入れる。これで膝枕完成!


「さーて、やったるぞぃ」


「あー、はずかしー……」


「いいじゃないのさ、誰もいないんだし。姉弟二人だけのときくらい甘えときな」


「たしかにカカには見せれない格好だな」


 この弟は妹の前――いや、人前だとやたらとあたしに厳しいけど、多分こうやって甘えたりする面を絶対に見せたくないからだろう。恥ずかしいんだろね。


 やれやれ、難儀で愛しい弟だよ。


「あー、うー」


 気持ちよさそうな声だしてまー。


「あー……母さん、何してるかなー」


「マジメな人だからね。仕事ばっかでしょ」


「父さんはいいよな、母さんがどこにいてもすぐ会えるんだから」


 なにせ忍者。いつでもどこでもいけるからね。


「きっと耳掃除してもらいに、会いに行ってるんだろねー、あー」


「違いない。さて、そろそろ本気出すよ」


「う……さ、三途の、川、が……」




 トメの耳掃除を終えた後、しばらくしてカカちゃんが遊びから帰ってきた。


「おかえりー」


「ん、お姉。なにしにきたの」


「カカちゃんの耳を狙いにきた!」


「食べるの!? 私のミミガーを!」


「ふっふっふ……うまそうな耳だ!」


「近寄るな! 出てけ!」


「で、耳掃除はいいの?」


「……トメ兄は?」


「買い物いったばっか」


「あ、んじゃおねがーい」


 渋ってた顔をあっさりと引っ込め。「やってやってー」と寄ってくる妹。


「トメいても別にいいじゃないのさ」


「やだよ、恥ずかしい」


 この弟妹はホントにもー。


 素直じゃなくて可愛いんだから!

 

 珍しい姉視点のお話です。

 いつもハチャメチャで煙たがられることも多い姉ですが、トメともカカとも結局は仲はいいです。

 

 しかしトメもカカも『姉と仲良し』というのが恥ずかしいらしく、そういうところはなかなか見せません^^;ほんと難儀なことで。



 あと、注意を一つ。

 耳掃除に嫉妬しないように!

 

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