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カカの天下  作者: ルシカ
286/917

カカの天下286「サユカの任務、相棒編」

「もしもし……またですかっ」


『すいませーん。でもなんか、クセになっちゃってー』


 はぁ……とため息なんかついちゃったサユカです。


 電話の向こうからは聞きなれた間延びした声。そう、サエすけの母親、サカイさんだ。


『ほら、この間は勤労感謝の日だったのに、わたしだけ祝ってもらえなかったじゃないですかー。トメさんとかは祝ってもらえてたのに……だから寂しくてー』


 むー、それは仕方ないことよね。サカイさんが近くにいるってサエすけ知らないんだから。


『ショックでわたし、三日ほど仕事休んじゃいましたよー』


「働いてないじゃないですかっ。そりゃ感謝もされませんよ」


 私は呆れながらベッドにちょこんと座りなおした。


 胸に抱くのはうさぎのぬいぐるみ、うさたんだ。そのもふもふの頭に自分の顔を埋め、長い耳を指でいじくりながら電話する。きもちいー。手触りがなんとも。


「それで、今度は何が聞きたいんですか。昨日も夜中まで散々サエすけのこと喋らされて、寝不足なんですけどっ」


『それは大変ですねー』


「他人ごとのように言わないでください!」


『いえいえサユカちゃん。たとえ寝不足が私のせいでも、私は眠くないんですから他人ごとには違いないんですよー?』


「切りますっ」


『ああごめんなさいー! そうですね、眠いのならー、最近発売した『うさぎコーヒー』がおすすめですよー』


「……うさぎ」


 手元にあるうさたんに視線を落とす。


『そのコーヒーはですねー、うさぎの皮をはいで』


「聞きたくありません!」


 バイバイうさたん。今の話忘れるまで隠れててね。


 ようこそケロたん。今度の相棒は君よ。


『そうですかー、おいしくて眠気覚めるんですが……あ、そうそう。お聞きしたいことなんですけど。皆さんクリスマスはどうやって過ごすんですかー?』


「クリスマス……ですか。そういえばもうすぐですね。サカイさんの小さいころはクリスマス、どうしてました?」


『私ですか? そうですねー、あまり特別なことはせずにケーキを食べるくらいだったような……あー、一度だけ妙なクリスマスをしたことがありました』


「へぇ、どんなですかっ」


『そのときに仲良かった友達の家の伝統儀式らしいのですが、66匹のカエルのお尻にストローを刺して次から次へプッと』


「ストーップッ!! それクリスマス関係ないです!」


 ばいばいケロたん。ようこそワンたん。食べるほうじゃないわよ。犬さんよ。


『そのとき出たのは犬のようなパウンドケーキでして、それはきっとパウンドとハウンド(狩猟犬)をかけたダジャレなんだと今ようやく気づきましたー』


「……サカイさん、わたしの部屋覗いてません?」


『そのときは頭からガブッと』


「聞いてくださいっ!」


 ばいばいワンたん! 次はガーたん(怪獣のぬいぐるみ)、君に決めた!


『あ、カツコちゃんだ』


 怪獣が来た!?


 どうなってるの……ぬいぐるみを胸に持ってくると示し合わせたかのようにその話題が。このままだとぬいぐるみを抱いて寝れないじゃない!


『そういえばカツコちゃんは勤労感謝に何かしたの? お母さんにとか。あれ、そういえばカツコちゃんのお母さんって……へー、性格は全然似てないんだー』


「あの、もしもし?」


『あ、ごめんごめんー。カツコちゃん来たから、そっちに話し相手になってもらうねー。夜遅くにありがとー』


「……サエすけの話してませんけど」


『それは昨日たくさん聞いたからいいのー。今日は単にヒマで』


「今度から着信拒否していいですか?」


『そう言わないでくださいよー。サエとは話せないから寂しいんですよー。若いエキスがほしいんですよー』


 ……寂しいって言葉、反則だと思うわっ。


『話してるうちにサユカちゃんも自分の子供みたいに思えてきて……親の愛を受け取ると思って勘弁してください♪』


 また恥ずかしいことを……あら、部屋の外に気配が。


「サユカー、いつまで起きてるのよ、早く寝なさい」


 お母さんだ。


「はーいっ! サカイさん、こっちの親の愛もうるさいもんで切りますよ?」


『まぁ! それは愛対決しろと――』


「言ってませんおやすみなさい」


 ぽちっとな。


 まったくもう、お話するのは別にいいんだけど……一緒に寝るぬいぐるみの常連さんが使えなくなったじゃないのっ。


 どうしよっかなー。この際小さいぬいぐるみでも……あ。


 そこでわたしの目にとまったのは、いつぞやカカすけ達がプレゼントしてくれたハートのネックレス。机の上に飾ってあるその赤いハートの中心には、愛しのトメさんのお写真が。


 ……一緒に、寝ちゃう? あえて考えないようにしてたけど。


 もそもそとベッドから起き上がり、ネックレスを手にとる。


 トメさんの写真……そ、そうよね。せっかくあるんだし。誰も見てないし。


 そう、だ。


 どうせなら。


 く、くち、くちづけを!


 写真に、なんて馬鹿みたいだけど! でも誰も見てないし! 見てないわよね!?


 本当に見てないわよねっ!? 見たら殺す! 誰だろうと!


 ちなみにトメさんに見られたら私が死ぬ!


 ……さて、と。


 ごくり。


 そーっと、そーっと……写真を口元へ近づける。


 もうちょい、もうちょっと。


 あと、数ミリ……


「やっぱダメ!!」


 また失敗してしまった……くそー、この写真のトメさんが格好よすぎるからいけないのよっ! もっと変な顔の写真なら、ってそんな写真飾るのはどうも、いやでもトメさんだから全然オッケーだし、いやいやせっかく格好いい写真があるんだから――


 そんな感じでネックレスを手にベッドでゴロゴロしながらもやもやしてるうちに、またもや夜更かししてしまった。


 恋する乙女が寝れないって、本当なのねっ。


 ……いつの間にか寝てたけど。


 いやー。

 書いててちょっと恥ずかしかった^^;


 なんにせよいつぞや『サユカちゃんの私生活を覗きたい』とリクエストくれた方、ようやくお応えさせていただきました!

 リクの文が違う? キニシナイキニシナイ。

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