表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
281/917

カカの天下281「こーちょーぱにっく」

「サエすけ聞いたっ? 校長が帰ってきたって!」


「らしいねー」


 一言で返事してしまいましたが、実は私サエも興味津々だったりしますー。


 放課後に入った途端、クラスにいる生徒の大半は教室の外へ飛び出していきました。それというのもいまサユカちゃんが言った通り、この貴桜小学校の校長先生が帰ってきたからです。


「校長……あるときはモミジ狩り、あるときはりんご狩り、そしてあるときはワニ狩りと、いっつもなんか狩りに出かけていてほとんどの生徒がその姿を知らない、幻の校長!」


 単なるサボり魔のような気もするけど。


「それが今、帰ってきているとっ」


 興奮しているサユカちゃんの気持ちはわかる。多分この小学校の生徒全員がわかると思う。


 ことあるごとにチラリズムしつつ姿を見せない謎につつまれた校長……その実態をあばく! こんな面白いイベントに生徒が飛びつかないはずがない。


 はずがない、と思ったんだけどー……


「カカちゃんは探しに行かないの? こうちょー」


「今忙しいの」


 真っ先に飛びつくかと思っていたカカちゃんは、どうやら興味がない様子。


「何してるのー?」


「手紙書いてるの。勤労感謝のやつ。トメ兄にはぷすっと感謝したし、お父さんにはテーブルにうまい棒の束と手紙置いといたら一晩で消えてたからオッケ。あとはお母さんだけ」


「そういえば、カカちゃんのお母さんって――」


「ほらっ、カカすけが行かないならサエすけ行くわよっ。誰よりも先に校長を見つけてやるんだからっ」


「わわ、そんな強く引っ張らないでー」


「いってらー」


 手元に視線を落としたままひらひら手を振るカカちゃんを教室に置いて、私はサユカちゃんと共に校長探索へ行くことになった。


「さてっ、まずはどこを探す?」


「うーん、校長先生の特徴とかってわからないのかな」


「特徴ね……うーん、狩りばっか行ってるから狩人よねっ」


「狩人。弓もってウッホウッホ言ってるのかなー」


「そんな人がいたらわたしらより先に警察が見つけそうだけど」


 そもそもそんな校長やだー。


「んー、ちょっと待ってねー」


 校長探しに躍起になる生徒で騒がしい廊下を歩きながら、私はきょろきょろと見回し……目当ての顔を見つけた。


「ねーねー、そこの人」


「サエ様! じゃなくてサエさん!」


「今わかってる校長の情報おしえてー」


「はいっ、えっと、とりあえず小柄な女性だそうです。あと、髪は黒いそうで、弓は持ってないそうです!」


 弓て。みんな考えることは同じだね。


「ありがとー」


「いえいえお役に立てて光栄です! では」


 ぎこちない笑顔で去っていく男子さんに手を振っていると、サユカちゃんがおずおずと声をかけてきた。


「さ、サエすけ? 今の誰? 六年生だよね、あの人」


「私のファンクラブの人だよ。顔見たことあったからー」


「な、なるほど」


 一回ファンクラブ集会とかいうのに行ったことあるんだよねー。それはさておき。


「とりあえず小さい女の人で、髪は黒くて、残念ながら弓は持ってないんだって」


「こだわるわね、弓」


 だって残念だもん。


「ふーむ、小さくて、黒い……じゃ、こことか?」


 蓋をパカリ。


「サユカちゃん、たしかに中は黒くて小さかったら入るかもしれないけど……そんなゴミ箱の中に人がいるわけー」


「人がいたわっ!?」


「どんだけー」


 流行の言葉を言いつつゴミ箱を覗いてみると、たしかにそこには人がいた。


「ニシカワ君?」


 川だっけ。革だっけ。忘れたー。 


「な、なんでこんなところに入ってるのよっ」


「かくれんぼー?」


「ぷはぁ! 違うよ! 普通のかくれんぼなら、こんな手も足も口も縛られたりしないだろ!?」


「普通じゃないかくれんぼ。趣味なの?」


「違う!!」


 とりあえずニシカワ君を引っこ抜いて、事情を聞いてみると……


「屋上で、校長っぽい人をみかけたんだ……そしたら気がついたらこんなところに」


 事情みじかいなー。


「なんでそんなことになるのよっ、校長って一体ナニモノ!?」


「姿見られたら困ることでもあるのかなー」


「や、単にかくれんぼを楽しんでるだけだと思うよ」


 あれ、カカちゃんだ。


「手紙書き終わったの?」


「うん。でさ、お探しの校長だけど、もういないみたいだよ」


「「「えぇーっ」」」


 すごく残念そうにするサユカちゃんとそれを聞いた周りの生徒たち。


「次はヒョウ狩りに行くんだってさ。本当かどうかは知らないけど」


「まじかよー、ぜってー見つけてやろうと思ったのに」


「ヒョウかよー。かっけーな、ちきしょー」


「ウヒョー!」


「誰だ、くだらないこと言ったヤツ」


 ぞろぞろと解散していく校長詮索隊。私も残念だ。今から屋上に行けばまだ間に合うかもーとか思ったのに。


 ……屋上?


 あれ、カカちゃんの歩いてきた方向って、教室じゃなくて屋上のほう……


「ね、カカちゃん」 


 校長を血眼になって探している人に聞かれると面倒そうなので、一応こそっと聞いてみた。


「もしかして……校長先生のこと知ってるの?」


 カカちゃんは一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにニヤリと笑ってこう言った。


「な、い、しょ♪」


「えー!」


 この後、いくらしつこく聞いてもカカちゃんは答えてくれなかった。


 校長って……どんな人なんだろー。


 ていうか、仕事しなくていいのかな校長。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ