カカの天下279「さあ、おどろけ!」
「……お姉、これないってさ」
「仕事が忙しいんだねー」
あのバケモノがどんな仕事してるのかいまだに知らないんですけどね。あ、どうもカカです。学校はもう終わったので、サエちゃんとうちで遊んでます。サユカンは家族で出かけるそうで今日は来てません。
「むぅ……じゃ、どうやって厄介ごとを持ってくればいいかな。昨日の占いがハズれちゃう」
「カカちゃん、悪い占いの結果なら起こらないほうがいいんじゃないのー? トメお兄さんも言ってたんでしょー?」
「うん。占いの結果が悪かったら、それに注意することが大切なんだって」
「だったらわざわざお姉さんを呼んで厄介にしなくてもー」
「サエちゃん……日本にはね、こんなことわざがあるんだよ」
サエちゃんの肩に手を置いて、まっすぐ見つめながら私は言った。
「それはそれ、これはこれ」
「それ、ことわざだっけー?」
「言葉の技は全部ことわざだよ」
「そうなのかな」
とにかく!
占いというものが、色々気をつけるためにあるのはわかった。
でも占った本人としては、結果が外れるのはなんかムカつくのである。
「うー、でもどうしよう。姉がこれないんじゃ……テレパシートメ兄はどこにいるかわかんないし、お母さんは論外だし」
「仕方ないなー、助けてあげるよ。あのさカカちゃん。占いの結果ってさ、家族が厄介ごとを持ってくる、だったよねー?」
「うん、だから姉に」
「カカちゃんが厄介なこと起こせばいいじゃないの」
私が?
あ、私も家族か!
「なるほど! じゃあ私が厄介ごとを――」
はて。
「厄介ごとってどうやって起こすの?」
「いつも通り起こせばー」
「いつも? はて?」
「……いつも自覚なしに起こしてたんだねー」
サエちゃんが何を言ってるのかよくわからない。だって私は厄介なことを起こしたことはないはずだ。楽しいことなら起こしまくるけど。
「とにかくー、自分がトメお兄さんだったら『これは厄介だなー』って思うことをすればいいんだよ」
「トメ兄だったら……」
仕事から帰ってきて、どうなってたら厄介だと思う?
んー……
「思いついた。もし私がトメ兄で、家に帰ってきてさ」
「うん」
「おほほ」
「近所のオバサンが上がりこんでたら厄介だよね!」
「なるほどー」
「おほほほほ! 確かにビックリでございますわね!」
近所で見つけたおほほオバサンは楽しそうに笑ってくれる。私が言うのもなんだけど、心広いなーこの人。
「でもさー、これだけだとまだインパクトが足りない気がするー」
「そう?」
じゃあ……
「近所のおじいさんをプラスしてみました」
「ふぉふぉふぉふぉ」
「おほほほほ!」
なんかすごいことになってきた。
「かあさん、飯はまだかのぅ」
「惜しい! 私はカカさん」
「はい、お茶が入ったよー」
「ごちそうさまじゃのぅ」
「おじいさん、今から飲むんでしょ」
「おほほほ! あたくしウーロン茶大好きですのよ!」
「口調のわりには庶民的なんですねー、おばさん」
みんなでわいわいとお茶を飲んでいると、トメ兄が帰ってきた。
「な……なんだ、この光景は」
「あ、トメ兄おかえりー」
「おかえりなさい、トメお兄さん」
「おほほほ! おかえりなさいですわ、トメさんとやら」
「ふぉふぉふぉ、トメさんや。飯はまだかいのぅ」
「え、いや。そんなおじいさんにぴったりハマッてる台詞言われても」
ふっふっふ。困ってる困ってる。
「トメ兄、どう!?」
「……なにがさ」
「厄介でしょ!」
「あのなカカ――」
「ご厄介になっておりますわ」
「へ、あ、これはご丁寧に」
「厄介者で……すまんのぅ……うぅ」
「ああ! おじいさん大丈夫ですよ! 家族になんて言われようと、あなたの居場所はきっとありますから!」
うん。
トメ兄あたふた。
大成功!!
「お茶がおいしいですなーカカさんや」
「そうですな、サエさんや」
一仕事終えたあとの一杯は最高だ。
でもなんだかんだで楽しいし。
あんまり厄介なことでもないよね、これ。
……ま、いっか。
それはそれ、これはこれ。
すばらしい言葉だと思います!