カカの天下270「この顔にピンときたら逃げましょう×3」
「……最悪だ」
僕は呆然と立ち尽くしていました……あ、どうもトメです。
ちょっと聞いてくださいよそこの人!
た、大変なのですよ。
テンにメールで呼び出されて来てみれば、そこにはなんと!
「三十番テンカ! サユカのマネやりますっ」
「おー、やれやれ!」
「やんやーやんやー」
「髪の毛を後ろ手でポニテにして、目を少しうりゅっと潤ませて、相手をちらちら上目使いにみながら……べ、別に君のためにやったわけじゃないんだからねっ!」
「ぶはははは! にてねー!」
「かわいいよー先生さーん」
そこにはなんと――と、とてつもなく恐ろしいトリオが完成していた!!
「あ、弟だ」
「おぅトメ! ちゃんと来たな」
「トメさん、ばんわー」
なんだこのカカサエサユカ三人組の大人バージョンは!?
「あ、あんたらいつの間に仲良くなってたの!?」
「「「んー、なんか気が合って」」」
それはなんというか物凄く納得できる理由ではあるが。
「あたしらも初めて三人で飲んだんだけど、そしたら際限なく盛り上がっちゃってさ」
「で、トメも呼んじまおうってノリになったわけだ」
「それでノリにまかせて、さっきの恥ずかしいモノマネしてたわけか、テン」
「おぅ。酒を飲むときは恥なんか捨ててなんでもやるぞオレは」
「よく言った! おねーさんも同感だよ。酒は楽しけりゃなんでもいいのだ!」
「トメさんもなんかモノマネやってー」
そういやさっき三十番とか言ってたな……どんだけやってんだ。これじゃ他のお客さんにも迷惑が――
「おいおい。次はまだかー!」
「早くやれやれー! 次はそのあんちゃんか!?」
なんでうちの近所の人ってこんなノリいいんだろう。
「トメさーん」
「あのね、来たばっかりであんたらのチョモランマみたいなテンションについていけるわけないっしょ」
一応説明しとくとチョモランマってのは別名エベレスト、世界で一番高い山ね。
「仕方ないな! あたしが見本を見せちゃる! 三十一番! 姉!」
名前言えよ。誰の姉だよ。
「待ってました姉貴!」
「やっちゃえ姉さん!」
「お姉さま頑張ってくださいまし!」
どんだけ弟妹いるんだよ。
「馬のマネやります。ぶるるるる!」
顔をぶんぶん振り回して異音を発しながら僕に迫る姉。こえぇよ。
「ばふんばふんばふん!!」
「馬そんな鳴き声違う」
「馬フン?」
や、テン。たしかに馬のアレはそれだけどさ。
「ばっふーん♪」
「なにそれサカイさん」
「うっふーんの『ば』版ですー」
その言葉にぐりんと首をまわして反応する姉馬とテン。
「ほう、『ば』版!」
「ばばん!」
「ババン!」
「ババンババンバンバン!」
「ハービバノンノン!」
「BAN! BAN! BAN! BAN!」
三人だけじゃなくて周囲のお客も店員も盛り上がりまくって……あーもー何がなにやら。
バンバン盛り上がる居酒屋の大騒ぎを眺めながら、僕はため息をついた。
カカサエサユカの大人版とは言ったけど。
曲がりなりにも『大人』ってだけでこっちのほうがタチ悪い。
あいつらが大人になったらこんなんなるのかなぁ……
しっかり教育せねば。
「三十二番! トメが姉のモノマネします!」
「ちょっと待たんかワレ!!」
「んだよ、やれよトメ!」
「シラフでそんなんできるかっ!!」
「あ、お酒が足りないんですねー。はい」
持たされるグラス。
「なーんで持ってるの♪」
「なーんで持ってんだ♪」
「なーんで持ってるんですかー♪」
「「「そ・れ・は」」」
『飲みたーいーから持ってるの♪』
全員で合唱すんな!!
「トメが飲むってさ!」
『ハイハイハイ!!』
「五秒で飲むってさ!」
『ヘイヘイヘイ!!』
「ほーら一気♪ 一気♪ 一気♪ 一気♪」
さらに無茶な注文つけるなああああ!!
――数時間後。
一気飲みの嵐にあった僕は完全にくたばっていた。
こいつらキケン。
見かけたら肝臓にご注意を……ごふっ。
死んだ。
だから姉のモノマネがどうだったとかは聞かないように。
ここにカカ天トリオ大人verが生まれてしまいました。
この三人、組み合わせるとモノスゴイ勢いで話がすっ飛んでいく感じです。怖いです。でも面白そうではありますので今後もたまに出していきます!
ま、今回は酔っ払いですしね! シラフならそんなに妙なことには……ならないわけないか。この人らだと。