カカの天下268「デンジャーカッパッパー」
「はぁ……」
昨日デパートで犯罪者扱いされた胸の痛みがまだ少し残っているトメです……
身分証明だのなんだのしてようやく開放され、皿も同じ柄のものを新たに包んでもらい、無事受け取ることができました。
誤解が解けたあと、デパートの警備員さん達はその旨をその場のおばちゃん達に「この人はヘンタイじゃありませんでした!」と力説してくれたし、館内放送で『本日食器コーナーで捕まったヘンタイ様は、実はヘンタイではないことが判明しましたのでここに連絡いたします』とか流してくれたし……これで世間体もバッチリなはずだ。
でも一日にこう何度もヘンタイと呼ばれれば凹むのも仕方ないってもんだ。はぁ。
「トメ兄、トメ兄」
「なんだよぅ」
おまえの相手する気分じゃないんだよぅ。
「頭にお皿をのせて……カッパ」
「昨日の今日でその皿を危険にさらすな!!」
相手する気ないのにせざるをえない!!
「かっぱっぱ〜♪」
「なぁ……頼むからその皿で遊ぶのやめてくれないか?」
「皿が割れたらカッパじゃなくなるよ」
「昨日の今日で割ってたまるか!!」
その皿を手に入れるまでにどれだけの苦労をしたと……ううぅ!
「私はカッパですシリーズ、そのいち」
「話聞けよ」
「水かき」
パーに開いて差し出される手。指と指の間にはセロハンテープ。
「わぁ可愛い水かき♪ とでも言うと思ったかこのカッパ娘」
「シリーズそのに、くちばし」
唇をすぼめて突き出しただけだろが、ったく。
その唇をつかんで引っ張ってやる。ぐいっとな。
「んむむむむむむむ!」
適当に痛がらせたあとパッと離す。カカはよろめいて――あ、皿が頭の上にあったんだった!
しかしカカは尻もちをつきながらも、見事なバランス感覚で皿だけは落とさなかった。
「ううぅ……唇が伸びてチュパチュパ星人になったらどうしてくれるの!?」
「キスがしやすそうだな」
ずっとそれだとマヌケだが。
「そうなったら毎日腐るほどキスしてやるからね!」
「はん、やれるもんならやってみ――」
というか別に全然オッケーというかむしろ超カモン。人として腐りそうだけど。
……あれ、いつの間にかカカがいない。
と思ったら部屋に行ってたのか、やがてドタバタと戻ってきた。
「カッパは仲間を呼んだ!」
「何のゲームのナレーションだ」
「カッパの友達、デンジャーケロリンズがあらわれた!」
「うあああああ」
大波のように放たれるデンジャーケロリン人形の嵐!
みどり! 視界が緑に染まる!
「しかもなんかぬいぐるみっぽい温かさがない!? なんか少しひんやり冷たくてぬめってる!?」
「デンジャーケロリンはリアルを追求しています」
「カエルの人形がそんなもん追求したって捨てられるだけじゃ!」
「捨てられたケロリンはカッパに進化し、捨てた主に復讐するのです」
「そんな本当にデンジャーなストーリー作らなくていいからこれどけろ!」
どうやってもってきたのか、大量のケロリン人形は僕の身体を見事に埋め尽くして、マジで動けない。や、動くとひんやりするナニカに触れるから怖くて動けないだけだが。
「こんなのどっから持ってきたんだ」
「サユカンの今日の忘れ物」
「……サユカちゃんはどうやって持ってきたんだ」
「台車。ほら、一輪車の」
ああ、農業で使われてるやつね……ってそんなもんまで使って持ってきて何したかったのサユカちゃん。
「とりあえずこれどけろ。皿もはずせ」
「かっぱっぱ〜♪」
「ダメだ……頭の中までカッパになってる」
や、本当のカッパが頭悪いかどうかは知らんけど。
仕方ない。
「カカ、おまえカッパなんだよな」
「かっぱっぱ〜♪」
「じゃーもちろんキュウリが大好きなんだよな」
「かぱ――」
「今日の夕飯はキュウリづくしだな」
「何言ってるのトメ兄カッパなんかいるわけないじゃん」
「このカッパの仲間見てるとキュウリ食べたくなってくるな」
「何してるのトメ兄そんなカエルに埋まってしょうがないなぁ助けてあげる」
即、皿を取って人形の山を崩してくれるカカ。
やっぱカカに言うこと聞かせるのには食べ物の好き嫌いが一番だな。
テーブルに置かれた皿の無事を確認し、ホッと一息つく。
「さら、われなくてよかった」
「私がゆーかい魔だとでも思ってたの?」
「……それはもういいよ」
ゆーかいだの皿だの……そういうのはもうさらさらゴメンだ。
しつこい?
カカ天は目をさらのようにして読んでください。
や、すいません。ほんとサラしつこいですね(笑)
でも子供のころに一度はやりません? 皿を頭にのっけて『カッパ』
大人になったらそんなことしないですけどね!
……ほ、ホントですよ? 話作った拍子にノリでのっけたりなんかしてませんからねっ!