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カカの天下  作者: ルシカ
264/917

カカの天下264「病院の天下」

「えっと……あったあった。ここね、『病院』って」


 ちっす、あたしカツコ。わかりやすく言うとトメとカカの姉だ。


 今日は今度サカイちゃんと飲みに来る予定の居酒屋『病院』の下見にきたのだ。


 飲み仲間に聞いて知ったこの居酒屋、本当は今日のうちにサカイちゃんと来る予定だったんだけど……仕事の都合でダメになったそうだ。ちょっと寂しいけど、「仕事で」というのがダメ人間から脱却しつつある感じがするので友人としては良しと思っておこう。


「いらっしゃーい! ご案内しますので、こちらへどうぞ」


 ふむ、『病院』と言いつつ、中も店員さんも結構普通だね。


 案内されて席に座り、おしぼりもらって手を拭きながらメニューを開く。


 おお、メニューは病院な感じだ。


「とりあえず生ひとつ」


「かしこましました」


「まさか尿瓶でくるとかないよね?」


「あー、そういう案もあったんですけど、残念ながら却下されたんですよー」


 そうか、あたしも残念だ。いっぺんあれでビール飲んでみたかったんだよね。どんな味するか。


 メニューを眺めてるうちにビールがきた。普通のジョッキだけど泡がクリーミーだ。ちゃんとうまい入れ方してるね。


 それをぐいっとあおり、おつまみを適当に注文する。


 白子の脳みそ盛りってどんなのだろー、と期待しつつビールを飲みながら待っていると……


「あのなぁおっさん、あんた親ならちゃんと子供のこと見とけよ!」


「赤の他人のおまえさんにそんなこと言われる筋合いはない!」


 なんだか後ろからもめてる声が聞こえてきた。振り返ってみると、どうやら女性客の一人が家族連れの客に注意してるらしい。


「筋合いならあるわ! あんたのガキがちょろちょろしてたおかげで店員が動きづらくて、あげくのはてにオレのとこにくるはずだった白子の脳みそ盛りを落としちまったんだよ!」


 む、それは許せんな。


 にしても威勢のいいねーちゃんだ。注文する品も一緒だったし、気が合うかな。


「そ、それは私のせいじゃない! 子供のせいだ!」


「子供を居酒屋につれてきた親のあんたのせいだろが! 連れてくるなら連れてくるでちゃんと監督せんかこのたわけ!」


 おー、すげーまともなこと言ってる。


「院長店長! この子供がうろちょろしないようにお子様ランチでも作ってあげな」


「あいよー」


「それ食べておとなしくしてるんだぞ、そこの子供。あ、値段はもちろんおっさん持ちな」


「そ、そんな勝手に――」


「この店ではオレが法律だ」


 おー、すげー勝手なこと言ってる。


 でも子供に食べるもんを与えておとなしくさせるっていうのはいい采配だ。それをあっさり店長が了承して、さらに他の客が拍手なんぞを送っているとこを見ると……本当にこの店の主みたいな立場なんだな、あのねーちゃん。


 ふむ。


「ちょっと待った!」


 気に食わんね、むふふ。


「そっちのおっさんの話はそれでよし、解決、もう喋るな。でもね……そこのあんた!」


「オレになんか用か」


「あたしが来たからにはあたしが法律だ!」


「は? てめぇ何様だ」


「あんたこそ何様だ!」


「二人とも何様だよ……」


「「お客様だ!!」」


 ボソッともらした店員を黙らせ、もう一度向き合う。


「見たところ初めてこの店にきたみてぇじゃねぇか。そのわりに随分と勝手な口叩くんだな?」


「はん、こちとら生まれたときから『あたしがいるとこあたし最強』って決まってんだ」


「この店はオレの天下だ!」


「あたしの天下にするのさ!」


「オレは名前もテンカなんだからな!」


「あたしはカツコだからあんたに勝つわ!」


「上等だ! 勝てるもんなら勝ってみやがれ」


「じゃあまずは武勇伝勝負よ!」


「オレはこないだ警視庁で――」


「あたしなんか国会議事堂で――」




 三十分後。


「――とか言ってるんだぜ? どうだ、おもしろくて可愛いだろ」


「はん、こっちだって可愛さじゃ負けてないよ。あたしの妹なんかこないだむきゅむきゅだったんだよ?」


 いつのまにか打ち解けて二人で白子をつついていた。


 これだから居酒屋はやめれない。


 ちなみに今のは可愛い子勝負だ。


「変な妹だなー」


「あんたの生徒もね」


「「はぁ……まったくカカ(ちゃん)ときたら」」


 ん?


 なんか名前が重ならなかった?


「あれ……あんた、もしかして!」


「あ、思い出した!」


「カカちゃんの誕生日のときのなんちゃってフランケンシュタイン!」


「そ、そうそう! そういうてめぇはおみこしカボチャ仮面!」


「いやー、気づかなかったわ」


「……ちょっと待て。てめぇはカボチャの仮面をすっぽりかぶってたから、オレが気づかないのも無理ないが……オレは頭にネジ刺してただけだぞ。なんですぐに気づかないんだ」


「だってあたしネジしか見てなかったもん。ネジに話しかけてたもん。あのネジ男前だよね? 尖ってて」


「そりゃネジだからな」


 あー、そっかそっか。どっかで見たことあると思ったんだよな、うんうん。


「さて……明日も仕事だし、今日のところは帰るかな」


「えー、帰っちゃうのかテンちゃん」


「携帯の番号とアド教えたろ。また飲もうぜ」


「おー! じゃ今度あたしの友達入れて三人で飲もうぜぃ」


「おう! じゃーあのときのお礼に今日のところは奢ってやるよ」


 あのとき? ハテ?


「んじゃな、姐さん」


「ん、おお。さんきゅ!」


 あらら、また一人妹増えちゃった。


 あたしの兄弟分も随分増えたなぁ。


「んぐんぐ……んー、よき出会いに乾杯♪」 


「あの……私になにか?」


「相手しなさい、院長店長」


「……はいはい。やれやれ、テンカ先生よりすごいのがいるとは」


「何か言った?」


「おかわりいかがです?」


「もらう」


 奢りで浮いた分、もっと飲んじゃお。


 ひじょーにたくさんの要望がありました姉とテンカ先生のお話、いかがだったでしょうか。

 やー、二人の喧嘩ハチャメチャですね(笑)


 まだ二人は出会ったばかりで大した話はしてませんが、なんかこの二人が揃ったらなにやってもいいような気が……やばいやばい、病院の天下はともかくカカの天下は乗っ取られないようにせねば^^;

 

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