カカの天下263「むきマロ」
「甘栗おいしいね、トメ兄」
「そだな。あむあむ」
あむあむあむトメです。
今日はカカと二人でテーブルを囲み、ひたすら甘栗を食べてます。
ぱき、と歯で殻をかみ割って。
殻をむきむきして。
ひょい、と口へ放り込んでパク。
これが正しい栗の食べ方ですね。
むきむき。
むきむき。
「マッスル!」
「なんだいきなり」
「ムキムキしてたら叫びたくなって」
「なぁカカ。いつも思うんだが、その突然何かを叫ぶのって病気じゃないのか?」
心の。
「ムキムキ病?」
とてつもない病気が生まれてしまった。
いったいどんな病気なのか、聞いただけでは想像がつかない。
「ああ! 私はムキムキ病にかかってしまった!」
ああ、妹がノッてしまった。
「栗をむきむきして食べ過ぎたんだ! もう私は身も心も栗……」
それは美味そうだ。
でも食べにくそうだからでかい栗は放っておこう。目の前の小さい栗でいいや。
ぱき。
「あん、かじられたん」
むきむき。
「ああぁん、服がむかれたん」
ひょい、パク。
「裸の私を召し上がれん!」
「黙って食えや!!」
「だって私は栗だもん」
おそるべしムキムキ病。
ぱき。
「ぐぁ、頭蓋骨が割れた」
むきむき。
「ぐああ、皮膚がはがれた!」
ひょい、パク。もぐもぐ。
「私の身も心もぐちゃぐちゃにいいい!!」
「だから黙って食えや!!」
ホントにおそるべしムキムキ病。
「ムキにならないの、トメ兄」
「じゃあおまえはムキムキになるな」
「ムッキー! って感じに怒ってくれるなら」
どこまでムキムキにとりつかれてんだこいつは。
「どうやったらムキムキの呪いが解けるんだ……」
「私にムキムキさせなきゃいいんじゃない?」
「なるほど!」
僕はカカの目の前にある皿を奪い、カカの分の栗もむき始めた。
僕はカカの代わりに栗の殻をむく。
むきむきと。
ひたすらに。
そしてそれをカカは食べる。
もぐもぐと。
ひたすらに。
むきむき。
もぐもぐ。
むきむき。
もぐもぐ。
……あれ?
僕、体よく皮むき係やらされてないか?
「カカ」
「むきゅ?」
リスのように頬に栗を詰め込んだカカは可愛く小首を傾げる。
「自分の分は自分でむけ」
「むきゅう……」
残念そうにうなだれるカカ。ふっ、僕としたことが、まんまとしてやられたもんだぜ。
むきむき。
もぐもぐ。
「おいしいね、トメ兄」
「うまいな、カカ」
そんなやりとりがあっただけの、まろやかなマロンタイム。
……まろマロって別にシャレじゃないよ? もぐもぐ。
あー、おいし。
ほのぼのと栗を食べる……それだけのお話です^^
でもこういうなんでもないお話がカカ天の根本という感じがしてすごく好きなのですが……読者の皆様はいかがでしょうか?
進んでいる途中の物語もありますが……こうやってのんびりおいしいものを食べながら、カカ達と一緒に少しずつゆっくりと日々の物語を過ごしていきたいと思います。
なので「あれはどうなった?」とか「あそこはどうなる?」とかあっても、のんびり気長にお待ちください^^
その話の続きを待ってる、と知らせてくれれば、いずれは絶対書きますので(笑)
ではでは。
むきむき。