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カカの天下  作者: ルシカ
261/917

カカの天下261「お見舞いだってさ、がんばれタケダ」

「我輩はタケダである!」


「名前はまだない」


「あるわっ」


「知らなかったー」


 たしかに公開はしてないがあるのだよ! というわけでタケダだ!


 今日は一大事! なんとカカ君が風邪で学校を休んだというではないか!


「カカ君の容態はどうなのだ、サエ君!」


「んとねー、電話で聞いたトメお兄さんの話だとー」




『カカ、今日学校いけるか?』


『んー……いくー……』


『まだちょっとだるそうだな……よしカカ。これ、なんて読む?』


『んー……定が焼き生食』


『焼いてんのか生なのかどっちだよ。ダメだこりゃ。休め』




「こんな感じらしいよー」


 むむぅ、さすがトメさん。独創的な容態の確かめ方だ。しかしどこに『生が焼き定食』の文字が書かれていたのかが少し気になる。


「あいやわかった、そこまでひどいのならこのタケダ、お見舞いにつかまつろう!」


「でもさタケダ君。風邪ひいてるときって身体が弱ってるし、面倒な人と会うのは疲れるから嫌がられると思うよー?」


「相も変わらずきっついなー! カカ君やサエ君の誕生日とかいろいろあって仲良くなってきたかと思ったのだが」


「誕生日ねー、歌を歌ってくれたりおめでとうって言ってくれたのは嬉しかったけど……プレゼントがねー」


「なんだ、何か問題があったか? うちの親がやってる病院の診察券だぞ。面倒な手続きや手数料が浮いて、なかなかにいいプレゼントだと思うが」


「女の子の誕生日に診察券をプレゼントなんて有り得ないよー。タケダ君が診察してもらったほうがいいよ。頭の中身を」


「脳に問題が!?」


 そこまでおかしいか!? だって病院に気軽にいけるようになるのだぞ! 病院は百薬の長というじゃないか! 絶対に喜んでもらえると思ったのだが……


「い、いやいやその話は置いておこう。今はカカ君へのお見舞いの話だ」


「そうだったね。行って嫌われるか、行かないで忘れられるか、どっちがいいのー?」


「その二択しかないのか!?」


「だってカカちゃん、最近タケダ君のこと目に見えて嫌ってるっぽいもん。なぜかはわからないけど」


「むむむ……いや、男たるもの行動が大事だ! やらないで後悔するより――」


「やって自爆するほうがいいよねー」


「そ、そう、そう……」


 ば、爆発するのか……いや、恋は爆発だという言葉もあるしな! 怖いが頑張ろう!


「そうだ、お見舞い品として何かおいしいものを持っていけばきっと大丈夫だ!」


「あー、カカちゃんモノに釣られやすいからね」


「エイで鯛を釣るのだ!」


「エイエイおー!」




 そのエイを購入し、いざカカ君の家へ!


 来たの、だが。


「あー、カカはいま姉に連れられて病院いってるよ」


「そ、そうでありますか……」


「タイミング悪いねー」


 がっくし。せっかく勇気をふりしぼって突撃したのに……いたのは俺の未来の兄貴だけか。


「とりあえずもらえるもんはもらっとくぞ。あ、ちゃんとタケダ君からって言っとくから」


「お、お願いします!」


 というわけで――残念だが本日は解散、か。


「サエ君はこれからどうする?」


「タケダ君で遊ぼうかなー。暇だし」


「……俺、で?」


 その後。


 俺はサエ君にもてあそばれ――もとい、遊ばれた。


 簡単に言えば、他愛もない話をしながら色々とからかわれ続けただけなのだが……どうしても俺はこの子に口で勝てん。


「でもカカちゃんがいなくて、かえってよかったかもねータケダ君。会わなかったら好感度下がることもないし」


「上がるかもしれないだろう!」


「それはないんじゃ――」


「おやキンジロウ。帰ったのか」


「父上!」


 散歩しながら喋っているうちに、いつのまにか我が家の近くまで来ていたようだ。


「そちらはお友達か? こんにちは」


「こんにちはー……キンジロウって名前なのかータケダ君」


 そんなびみょーな目で見るなサエ君! いい名前じゃないか!


「あ、そうそう。おまえがいつも話してるカカちゃん。さっき診察にきてたぞ」


「なにぃ!? ここにきたのか! なぜ……あ」


「タケダ君、まさかとは思うけどカカちゃんの誕生日にも……」


「……だ、だって喜んでくれるかと」


「好きな女の子の誕生日プレゼントに診察券……やっぱり君が診察受けたほうがいいよー。心の」


「心が病んでるとまで言いたいのか!?」


「うん。それじゃ好感度も上がらないよキンちゃん」


「その呼び方はやめろ!」


「ほんとほんと。変だぞ、息子」


「プレゼントに診察券すすめたのは父上でしょ!」


「まさか本当にやるとは思わなかった」


「うぉい!!」


 うぅ……しかし! いかに前回の診察券がダメだったとしても、今回のお見舞い品で好感度アップのはずだ!




 ――そのころ、トメとカカは。


「タケダ君?」


「ああ、サエちゃんと一緒にきてな、なぜかお見舞いでエイひれをくれたぞ」


 その品を選んだ原因が『エビで鯛を釣る』を読み間違えたなどとは、もちろん彼らは知る由もない。


 そしてカカはお見舞い品どころではなかった。


「さ、サエちゃんと、二人で?」


「あ、ああ」


「……あんにゃろぉ! 不幸になれタケダ!!!」


 翌日。


 カカの風邪は治った。


 代わりになぜかタケダ君が風邪をひいた。


 結局カカと会ってないからうつるはずはないのに……


 ミステリーである。

 

 ただ一つ、わかることは……タケダ君が報われないということだけであった。


 タケダ君の名前初公開!

 けっして二ノ宮さんの名前からいただいたわけではありません(笑)とあるネタのためにこの名前となりました。そのネタ、つまり名前の秘密を明かすのは……まだまだ先となるでしょう。

 ま、とりあえずガンバレタケダ。

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