カカの天下259「お見舞いだった、よね?」
「雷門なのに雷落ちなかったんだよー」
「えー、じゃあその門にせものかな」
「そんなのしょっちゅう落ちてたら雷門が地獄への門になっちゃうでしょっ。あ、そっか。帰りたかったのねサエすけ。故郷に」
「んふふー。どゆ意味かなサユカちゃん」
「悪いことする真っ黒な人はそこに住むんでしょっ?」
「じゃーサユカちゃんとケロたんは天国でお花に囲まれて住むんだねー」
「あ、サユカンいまちょっと『それいいな』って思ったでしょ」
なんか賑やかだなー。
「ただいまー」
「トメさん、お邪魔してますっ」
「お邪魔してまーす」
「おかえりトメ兄」
おかえりましたトメです。
今日は日曜日、そしてカカは風邪で寝込んでいるということで色々と買い物に行っていたのですが、その間にサエちゃんとサユカちゃんが遊びにきたみたいです。
それにしてもサユカちゃんの頭の上に乗ってるいつかの忌まわしきカエル人形が妙に気になる……誰も気にしてないからツッコまなくていいのかな?
「トメお兄さんも改めまして、この前はプレゼントありがとうございます」
「ん、ああ。いいよそんな。たいしたものあげてないし」
「いえいえー。使い心地よかったですよ、高級耳かきセット」
喜んでもらえてよかった。四千円も出して買ったかいがあったというもんだ。
「サユカちゃんもありがとね、写真」
「む、何の写真あげたのサユカン」
「……秘密」
「でも百枚以上あってびっくりしたよー」
「……だって何回撮っても『あの服でも撮って』だの『この表情で撮って』だのうるさくてうるさくて結局何時間かかったことか……まったくもうあの人は……」
「サユカちゃん? 何をぶつぶつ言ってるのー?」
「えっ? いやっ! なんでもないっすよ!!」
「ねー、何の話なのー?」
ふむ、いい感じに盛り上がってはいるんだけど……
「さて、サエちゃんサユカちゃん。楽しんでるとこ悪いけど、適当なところで切り上げて帰ったほうがいいよ。カカも調子は良くなってるけど治ったわけじゃないし」
「でもカカちゃんのことだからジッとしてるわけありませんよー?」
「わたしらがヘタにいなくなると、目を離した隙に家を抜け出してなんかやらかしますよっ」
「……お二人さんや。私をなんだとお思いで?」
素晴らしき友情だなぁ。
「その点は大丈夫。これから一緒に撮りためたビデオ観るつもりだから」
「何を観るんですかー?」
「最近話題の恋愛ドラマ、『初恋は実らない』だよ」
「あ、それ知ってるわっ」
「私も知ってますー。女優さんが綺麗なんですよねー」
不健全なタイトルなわりに人気なんだよなー、これ。
「とにかく、これ観るから大丈夫だ。観るよなカカ」
「ん、これは観とかないとね」
「だからサエちゃん、サユカちゃん、今日のところは――」
「……トメさんの初恋って、どうだったんですか?」
……ぅえ?
なんでサユカちゃん、目がキュピィンって光ってんの?
「わ、気になるなーそれ」
「そういえばそういう話って聞いたことないな。トメ兄、どなの?」
「は? や、たしかに実りはしなかったが……」
「その話を詳しく聞いたら帰りますっ!」
「ええぇ? そんな面白いもんじゃ……」
「その話を聞かなきゃ帰りませんっ!」
「そうだそうだー。トメお兄さん、私たちにカカちゃんの風邪をうつしたくなかったら、おとなしく白状してください」
どんな脅迫だよっ!?
「トメ兄、白状しないと私、風邪治さないよ?」
だからどんな脅迫だよっ!?
「トメさん。わたし、すごく聞きたいですっ」
だからどんな脅迫――って脅迫じゃないよ素直だよっ!!
「そんなに聞きたいのか?」
あー、わかったわかった。
わかったから三人そろってそんな首が取れそうなくらい頷くな。
はぁ……お見舞いタイムがなぜこんなことに。
「話が終わったらさっさと帰るんだぞ」
「「「はーい」」」
三人仲良い返事だことで。
「あれ、返事したはいいけど私どこに帰ればいいんだろ」
「カカすけ、そんなのどうでもいいからトメさんに注目だよっ!」
「一緒に雷門から地獄へ帰ろうかー。多分カカちゃんもこっちの人だしー」
「え!? 一緒に……サエちゃ、そ、その話もっと詳しく――」
僕が帰っていいか? 部屋に。
……まぁ、そういうわけにもいかないようで。
僕の初恋の話をしなくてはいけないようだ。
「言っとくけど、そんな面白いもんでもないからな」
話すのは次回な、というわけで続く……続かなくてもいいけど。
はい、というわけでまたまた続きます。
先日からちょこっと匂わせてたトメの初恋のお話です。カカラジでその話が出たときから書かなきゃ書かなきゃと思っていたのですが……こんなところに持ってきてみました(笑)
次回はそのお話ですよん。
トメはおもしろくないとは言いましたが、はてさて……