表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
254/917

カカの天下254「かなしいカボチャ」

「ただいまー」


 おかえりー、の声が聞こえなくて寂しいお兄ちゃんなトメです。うあ、お兄ちゃんとか自分で言うと気持ちわる。


 さて、靴はあるのに返事がないとはどういう了見だあの妹……ん?


 いつものように玄関にあるホワイトボードを見てみると、そこには……


『本日の夕食はカボチャ定食!! 居間にあります』


 そんな普通ぽいことが書かれていた。


 普通っぽい……


 カカ、病気か?


 心配しつつ、とりあえず玄関へあがる。


 そして居間を覗くと――


「さぁ召し上がれ!!」


 テーブルの上に乗っているカカの姿を見て僕石化。


「召し上がれ?」


「……あ?」


 もう一回言われて我に返る。


「何を召し上がれと?」


「カボチャ定食な私を」


 そう。


 カカはカボチャ定食になっていた。


「その格好はなんだ?」


「可愛いっしょ」


 可愛いかと聞かれればとてつもなく可愛いと言わざるをえないが。


「そ、その格好はなんだと聞いてる」


 べ、べつに頬の緩みを我慢してるわけじゃないんだからな!


「なにって、だからカボチャだよ。下から言うと、まずはカボチャの靴下!」


 ニーソックスのオレンジが眩しいゼ。


「カボチャパンツ!」


 丸出しだぞ。


「カボチャのTシャツ!」


 黒い三日月な目がキュートだね。


「カボチャの手袋!」


 小カボチャに手を突っ込んだだけだろが。


「カボチャの仮面!」


 あ、去年僕が作ったやつだ。


 腐ってる。


 におう。


「明日はこれでサエちゃんを脅かすの!」


 まぁ確かにそのスカートはき忘れた格好――じゃなくてカボチャだらけな格好ならインパクトあるだろうさ。


「なるほどね……とりあえず仮面は作り直してやるよ」


「わ、ありがと。臭かったんだよ、これ」


 だろうな。よくかぶるよこんなの。


「カカ、ずいぶんと浮かれてるな。そんなに明日が楽しみか?」


「当然! ちゃんと皆に声をかけて計画立てたんだよ! ハロウィンなところはちょっと被っちゃうけど、せっかくだし私のときよりもっと盛大に――」


 そのとき、突然電話が鳴り響いた。


 浮かれてるカカは元気よく「私が出るー!」と電話へとすっ飛んでいった。


「はい、もしもし! 笠原ですが――あ、サエちゃん?」


 お、明日の主賓か。これはこれは……


「明日? えっと、何の話だったかなぁ」


 おー、ごまかしてるごまかしてる。


「……え。明日から、旅行?」


 ……なに?


「そう、なんだ……おじさんとおばさんからのプレゼントで……何時から行くの? そう、そっか……じゃあしょうがないよね。うん、ほんとは覚えてた……けどわかった。見送りにいくね! いやいや、やっぱりそういうのは当日に祝わないとさ。うん、うん……わかった。じゃ、また明日ね」 


 がちゃり、と電話を切ったカカは……目に見えて落ち込んでいた。


「カカ……サエちゃんは」


「明日から旅行なんだってさ!」


 わざと明るい感じに言ってみせるけど、悲しみが隠しきれていない。


「あーあ、せっかくいろいろと用意したのに……全部、ダメかぁ」


「えっと、あれだ。ほら、旅行から帰ってきてからってわけには」


「こういうのは当日じゃないとだめだよ。さ! そうと決まればサユカンとか姉とかに電話しないと! 明日は皆で見送りだ!」


 威勢よく言って電話に向かうカカ。


 でもその背中は震えていた。


「おっきなプレゼントの箱に私が入ってさ、飛び出すの。私がプレゼントだよ、食べてー、みたいな感じで。おもしろいと、思わない?」


「……ああ、サエちゃん。喜んだだろうな」


「はぁ……せっかくのサエちゃんの誕生日。ちゃんと祝ってあげたかったのに」


「祝ってやればいいだろ。こういうのは気持ちが大事だし」


「うん……そうだよね。サエちゃんも『お祝いの言葉がもらえるだけですごく嬉しい』って言ってたし。でも……でもさ」


 そうだよな。


 わかってるよな、そんなこと。


 でも、盛大に祝ってあげたかったんだよな。


「カカ。暗い顔は今日だけにしとけよ。そんな顔で見送られたら、サエちゃんだって誕生日の旅行を楽しめないからな」


「うん……あ、サユカン? 実は明日、サエちゃんが――」


 カカの電話する声を聞きながら、思う。


 両親からのプレゼントで旅行っていうのはいいと思う。


 でもさ、タイミング悪いぞ神様よぅ。


 こんな展開、誰も望んでないだろ。


 ……責任とって、なんとかしろよ!


 さて、気づいていた方はいましたでしょうか。

 そう、カカの天下の最初のほうを見ればわかるとおり……ハロウィンと文化の日の間にサエちゃんの誕生日があったのです!

 ちなみにその間にある「めくりめぐり」の話は後日談を混ぜた単独話なので、細かい日にちについてはツッコまないようにお願いします^^;


 しかしその誕生日もカカのときのようにはいかないようです。旅行行きが変更になったりはしません。このままカカは落ち込んだまま、サエちゃんを盛大には祝えないのでしょうか。

 ――明日へ続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ