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カカの天下  作者: ルシカ
251/917

カカの天下251「貸し借りは忘れずに」

 どうも、授業中なカカです。


『もうすぐチャイムが鳴るなー』なんて思いつつテンカ先生の声を聞き流しています。


「いいかー、ここの部分はテストに出すから気をつけ!」


……え。


気をつけ? 気をつけろじゃなくて?


「礼!」


 あ、やっぱ気をつけでいいんだ。


 おお、慌てて皆が礼をするのと同時にチャイムが鳴った。すごいぴったりだ――と思っている間に、テンカ先生はダッシュで教室を出て行ってしまった。


 他のクラスメイトと一緒に唖然としていると、サエちゃんがひょこひょこ私の席に寄ってきました。


「テンカ先生、なにをあんなに急いでるんだろうねー」


「なんだろね」


 サエちゃんは顎に手をやり、にやりと笑った。

「私が思うにー、女だね」


「それを言うなら男でしょ」


「……え? あ、そっか。テンカ先生って女の人だったっけー」


 あははー、と笑っているサエちゃんは冗談で言ったのか本気で言ったのかはわからない。


「とりあえず追っかけてみるね」


「いってらっしゃーい」


「サエちゃんはいかないの?」


「私はトイレで忙しいのー」


 そっか。それなら仕方ない。さぞかしいろいろあるんだろう。


 私は教室を出て、テンカ先生のダッシュした方向へ走った。テンカ先生はドアを開けっぱなしにして走っていったから方向はわかる。


 でもどこにいったかはわからない……誰かに聞き込みしようかなー、と思ったそのとき。


「んしょ、んしょ」


「お、ろっくおん」


 めっけた。なんかすごいたくさんのプリントを抱えてる。


「テンカ先生、何してるんですか」


「おぅカカ。見ての通りプリント運んでるんだよ」


「いっぱいありますね……手伝いますよ」


「おぅ、さんきゅ。ほい」


 どっしりとっ!!


「ちょと先生! なんでほとんど私のほうに持たせるの!?」


「あ? だってオレ、女だもんよ」


「私だって女だ!」


「そなのか? 知らなかった」


 サエちゃんと似たようなこと言いやがったこのセンコー!


「とりあえずそれを一年から三年のクラスまで配って、職員室にもう半分あるからそれを四年から六年のクラスに配るんだ」


「……なんでこんなの一人で運んでるの」


「デストロイヤー教頭に借りがあってな。今日一日逆らえないんだよ」


「借り、ねぇ」


「おぅ、人生は義理と人情だからな。オレは借りだけは絶対に返すことにしてるんだ」


「ちなみにどんな借り?」


「んとな、昨日職員室に電話があったんだよ。一年生の保護者でな、『ちょっとあぁた!? うちの子、箸の使い方がなってないんですけどぉ! お宅の学校ではどんな教育をしてるんザマスか!?』って」


「ざ、ザマスなんて言う人いるの!? 見たい! 聞きたい! 捕まえたい!」


「悪い、ザマスはそれっぽいかなと思ってオレが付け加えただけだ」


 ちぇ。


「で、そのトボケたおばはん、どったの?」


 最近増えてるらしいね、そういう風になんでも学校のせいにする親。


「ああ、そのあんまりな質問にオレも呆れたんでな、『あのですね、子供にご飯の食べ方を教えるなんてサルでも親が教えますよ? そんなこともできないなんてあなたはサル以下の親ですか。……あぁもう、そんなキーキーとサルみたいに喚かないでください。サル以下って言われたからサル目指してるんですか?』とか答えたんだけど」


「すごく先生らしい」


「だろ? でも向こうのおばはんメチャクチャ怒っててさ」


 そらそうだ。


「訴えてやるだのなんだの言い出して、さすがにこりゃマズイだろうと慌てたわけよ」


「テンカ先生でもそんな風に思ったりするんだ」


「だって訴えられたりしたらオレの給料がマズイだろ」


 そうだよね、うん。それでこそテンカ先生。


「んで困ってたらデストロイヤー教頭が代わってくれてさ」


「助け舟出してくれたんだね」


「そうそう。『テンカ先生。それじゃ甘いです』ってな」


 ……はい?


「教頭すごいぞ。こんなん言ってた。『申し訳ありません、奥様。サルという例えが正しくありませんでしたね。サルはもともと頭のいい動物ですし、それを例えに出しても私どもが何を言いたいのかわかりにくいでしょう……』と、ここでオレも首を傾げたわけだ。てっきり謝ると思ってたからな」


 さすが常識デストロイヤー。


「続きはこうだ。『よろしいですかな? 自分の子供に食事の仕方を教えるなど犬畜生や豚の親にでもできます。つまりあなたは自分が豚以下だと公言されておるわけですな、はっはっは。訴えたければやってごらんなさい。ただしそれはあなたが豚以下だと日本中に示すことと同じです。日本に向かってブーブー叫ぶのと同じです。それでもいいならやってごらんなさいな』と」


 ……この学校の先生ってたくましい。


「そう言い終わるころには向こうさん沈黙。最後に『ああ、申し訳ありません。あなた様がどちらの生徒さんの保護者様か確認するのを忘れていました。失礼ですが――』って言って向こうが電話を切って、終了! ってわけだ。電話の相手が誰だかわからない、ってことにして話をチャラにしたわけだな」


 難しいことはよくわからないけど、とりあえず教頭がすごいってことはわかった。


「――よし、っと。これで最後だな」


 なにげに喋りながらも教室を回ってプリントを配っていた私たちは、ようやく紙束の重量から解放された。


「さて。あとは高学年! がんばるかぁ」


「私も手伝います」


「お! いいね。義理と人情だな!」


「だから貸し一つですね」


「……ぉい」


「重かったなぁ、プリント」


「む」


「借りは絶対返すんですよね?」


「う……」


 ふっふっふ。


 なにしてもらおっかな〜。


 最近こういう変な親増えてるみたいですね。『親』になろうとしない親。嘆かわしいことです。と言いつつ笑い話に使ってしまいましたが(笑)実際身近でそんな親がいたら笑えませんね。

 教頭に『豚以下の親』呼ばわりされないように頑張りましょう皆様^^;

 

 あと、昨日カカラジを載せたにも関わらず、感想欄にもメッセージでもすでに多数の投票があり、感激しております! 受付はまだまだやってますので、いつでもお気軽に投票くださいね^^

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