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カカの天下  作者: ルシカ
246/917

カカの天下246「よい酔い仲間」

「「おつかれ、かんぱーい!」」


 ぐびぐび、トメです。


 先日の誕生会を手伝ってくれたお礼もかねて、今夜はテンを飲みに誘いました。僕のおごりで。


「んぐ、ふぅ……別にいいんだぜ? おごりじゃなくても」


「や、でもせっかく協力してくれたんだしな」


「あれはあれでオレも助かったんだぞ。テストをまともに書かないカカの成績、さっぱりわからなかったからな。通信簿どうしようかと思ってたとこだったんだ」


 先日のカカの誕生日。


 ハロウィンをやるなら暗くなってからだろう、でもそれまでカカの足止めをどうするか……と悩んでいたところでサエちゃんが思いついたのが、テンによる足止めだった。


 曰く、「カカちゃんの成績の話を出せばきっと協力してくれますよー」ということだったのだが……それが見事にテンの悩みのタネを解消する機会になったわけだ。さすがだ。


「それでも協力してくれたことには変わりないだろ」


「律儀だねぇ。ま、そいじゃ遠慮なく。おーい、ねーちゃん。大腸ウインナー追加」


 相変わらずこの居酒屋『病院』のメニューは食欲をそそらない品名ばかりだ。しかし美味しいから文句が出ない。もしかして名前とのギャップでなおさら美味しく感じるのかな。


「あ、そういやさ。昨日、夏休みの作品展示会行ったんだけど」


「ほぉ……そんな面倒なとこにトメが自分でいくはずないな。カカに引きずられて行ったってとこか」


「察しの通りだよ。それでさ、テン。カカ達の作品の題名、勝手に変えたんだって?」


 テンは「当然」と頷く。


「あいつらバカ正直に『トメ兄の〜』とか『トメお兄さんの〜』とか書くんだぜ?」


「そりゃ確かに恥ずかしいが……」


「まったく、身内がタイホされてもいいのかね」


「ちょっと待った。なぜにそれで僕がタイホされるのだ?」


 名前を出しただけでタイホって、そんな悪名高くなった覚えは無いぞ。姉じゃあるまいし。


「あのなぁ、トメ。考えてもみろよ。そりゃーあの三人が姉妹だったら一人の兄貴のことを思って作品を作るのもアリだろうさ。でもな、可愛い女子小学生が三人、一人のいい年した男のことを思って作品を作ったとなれば……」 


「……この上もなく不穏な言い方だな」


「でもそう思うやつもいるかもしれねぇだろ。トメが女子小学生を三人も手込めにしてるとか噂たったら即タイホだぞ」


「そんな極端な噂たつわけない、と言い切れないんだよな、今の世の中」


「そうそう、特にサエ。血も繋がってないのに『お兄さん』なんて呼ばせてる時点でアウトだ。なんだその羨ましい話は。ふざけんな」


「や、別に呼ばせてるわけじゃ……ってなんで怒ってるんだおまえ」


「妹は一人じゃ足りないのかシスコン。どっかのゲームみたいにそんなの十二人つくる気か? それこそふざけんな。そんなにいらねーだろ。二、三人よこせ」


 ……こいつ、酔ってきてるな。段々危ない話になってきたから矛先を変えよう。


「そういやさ、こんなに夏休みの作品発表が遅れたの、カカのせいなんだよな」


「あー、おぅ」


「迷惑かけてすまなかったな。あいつ面倒くさがりだから」


「いや。別にあいつは工作サボってたわけじゃねぇし。カカの努力はオレも認めてるぞ」


 ん? サボってなかった? 努力?


「どういうことだ」


「なんだ、知らねーのか。カカが提出するのが遅れたのは、納得いくまで何度も作り直してたからだよ。できる限りいいモノを作りたい、ってのはカカの目的を考えればわかるから、オレも教頭も見守ってたんだよ」


 カカの、目的?


「ま、それも適当なところで切り上げてサエサユカの二人と合わせたところを見ると、何か他にいいモノ見つけたんだろうが――」


「まてまて、何の話をしてるんだ?」


「何のって――」


 その言葉を聞いて、僕はようやく思い出した。


 そう、か。そういえばそうだ。そろそろ……そんな時期だった。


「そういやさ、カカのやつ最近僕の手伝いしたがるんだよ。小遣いつきで」


「ああ、そりゃ間違いねぇな。目的はソレだ。ちゃんと見守ってやれよ、おーにーさーん!」


「はいはい……そうだな。カカもだけど、僕の隣にいるヤツもこないだみたいに潰れないか見守らないとな」


「むっ、オレは酔ってないぞ!」


「酔ってるヤツは皆そう言うんだ」


「じゃあ酔ってないヤツはなんて言うんだ」


 ……そう言い返されるとなぁ。


「でもテンが酔ってるのは確実だろ。段々キャラ壊れてきたぞ」


 こないだわかったけど、こいつは酔うと果てしなくテンションが上がっていく。


「今日もウコン飲んでないのか?」


「おぅ」


「なぜに」


「この間のが気持ちよかったからだ」


「気持ちよ――なんか仮にも女にそう言われると恥ずかしいんだが」


「あれ、オレが女だって覚えてたのか?」


「今思い出したよ」


「はっはっは、そーか。ま、この間みたいに酔い潰れても家まで返してくれるヤツができたからな。これで遠慮なく、気持ちよく酔っ払えるってもんだ」


「はいはい……この飲みは前のお礼だからな。とりあえず飲みたいだけ飲めよ。付き合うから」


「よし! トメも飲め!」


「はいはい……」


 この夜、僕とテンは主にカカ達のことを肴にしながらたらふく飲んだ。


 宣言どおり(?)テンは潰れて、前回のようにテンの自宅まで送っていくことになったけど……楽しかったからよしとする。


 いい先生を持ったな、カカ。


 いい飲み仲間ができたな、僕。


 トメとテンの飲み話でしたー。

 二人のラブラブ希望、との声がいくつかありますが……この二人はどっちかというと男同士の仲みたいな感じになってますね。まぁしかし男と女、仲いいことはいいですし、今後何があるかはわかりませんが……

 

 ところで今回は作中でぼかしている部分がありますね。

 そう、そろそろあの時期なのです。鋭い人ならもうすぐ何があるか気づくかもしれませんが……気づいてない人のために胸の内に秘めておいてください^^

 気づかない人はそのままでいいですよ。トメとテンが何の話をしているのか、近々わかりますから^^

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