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カカの天下  作者: ルシカ
245/917

カカの天下245「テーマはもちろん? そのに」

「ただいまー、っと?」


「トメ兄、待ってたよ。いこ」


 どうも。仕事から帰ってきた早々、妹に腕を引っ張られてるトメです。


「どこいくんだ?」


「いいからGO!」


「おおお?」

 



 部屋で一息つく間もなく連れてこられたのは……市民会館?


 その入り口にはサエちゃんとサユカちゃんが待っていた。


「おーいっ、サエちゃんサユカちゃーん」


「あ、カカちゃん。トメお兄さんこんにちはー」


「カカすけ三十分ぶり。トメさんこんにちはですっ」


「あ、ああ。こんにちは……」


 なぜこんなとこに連れてられたのかワケがわからないまま挨拶する。


「あ、あの、トメさん! 今日はわたしの全てを見てください!」


 ……はい?


「サユカン、脱ぐの?」


「サユカちゃん、いやーん」


「えっ!? ちょっ、なんでそうなるの!?」


「や、そういう風に聞こえたから」


 すいません。僕も一瞬そう思いました……


「違うわよっ、わたしの全てをかけた作品を見てくださいってことっ!」


 や、さっきのじゃそこまでわからんて――作品?


「なにか作ったの?」


「あれー、説明してないのカカちゃん」


「うん、問答無用で連れてきた。あれ見ればわかるっしょ」


 カカが指差したのは市民会館の入り口、そこの立て看板にはこう書かれていた。


 『夏休み児童、生徒作品展示会場』


「夏休みの作品って……ずいぶん前の話だぞ」


 もう十月後半だってのに。展示するの遅くないか?


「なんかね、これ仕切ってたのデストロイヤー教頭らしいんだけど」


「あー、カカがたまに話してる教頭な」


「その教頭が『全員提出するまでは展示会はやらん!』って言い張って引き伸ばしてたから、こんな遅れたらしいですよっ」


「デストロイヤーとか言うわりには創造に積極的だな」


「私が破壊するのは腐った世の中だーっていつも言ってますからー」


 なるほど。時間がないからと妥協することが多い世の中を破壊したわけだな。あくまで子供全員に創造する機会を与えた、と。


「にしてもこの時期にやるってことは、よっぽど作品を提出するのが遅れた生徒がいたんだろうなぁ。迷惑なやつだ」


「どうもすいませんでした」


「カカかよ!!」


「だってさー、私が一回作ったトメ兄、壊されちゃったし」


 は、僕?


 ……あぁ、そういえば夏休みのとき。僕を見立てて作ったとかいうのを総理大臣が壊したんだっけ。


「あれから結局作らなかったのか?」


「や、ほら。一回やったのをもう一回、ってむしょーに面倒に思わない?」


 それはわかるけど……


「ま、いいや。とにかく入って見てみよう」




 そんなわけで市民会館に入る。


 貯金箱や妙なオブジェ、ポスターなどが所狭しと展示されていた。僕らの住む区域で提出された全ての作品が集められているらしい。


 上に貼られている案内板を頼りに、カカ達の学校の展示場所を探す。


「お、めっけ」


「わたし達の、ちょうど三つ並んでるわねっ」


「どれどれ……」


 カカ達の視線をたどると、たしかにそこには似たような物体が三つ並んでいた。


 ダンボールと紙粘土で作られた貯金箱、らしい。


 下の作品名の欄にはそれぞれ、『友情』『愛』『希望』との文字が。


「この妙な物体のどこが題名の通りなのかはさっぱりわからないけど、なんか意外と普通だね」


 もっと変な題名だと思ったのに。


「あれ、これ私達が書いた題名じゃない!」


「三つとも変わってるっ」


「さてはテンカ先生……勝手に変えたねー」


 あれ、そなのか?


「じゃ元々はなんて題名だったんだ?」


「私の作品はですねー、『トメさんの友情』です」


「は? 僕の?」


「はい。貯金箱だけに」


「なんで貯金箱が僕の友情に繋がるんだ?」


「大人の社会は、お金の切れ目が縁の切れ目なのでー」


「イヤなこと言うなっ!」


 あながち間違っちゃいないから嫌だ……お金ないからって飲み会に行かなかったりしてると、付き合いが悪いって言われて友達が離れていったりするんだよな……


 や、別にそれが理由で妹しか遊び相手がいないとか、そんなことはないんだからなっ!


「それで、わ、わたしの作品が……『トメさんの愛』です」


 あい? ていうかまた僕?


「このそびえ立ってるのが愛を表してます!!」


 え、えーっと……『立ってる』とかいう言われてこれを見るとびみょーにアレに見えるんだけど……他意はないよな? サユカちゃんだもんな? まさかアッチの意味で『立ってる』とか言ってないよな。まさかな……


「サユカちゃんのえっちー」


「なんでよっ、よくわかんないけどサエすけが『愛があれば立つんだよー』とか言ってたからこんな風にしたんでしょ!」


 ……なるほど、サエちゃんが元凶か。マセてるな。しかし同じ子供でもサエちゃんがそういうこと言っても違和感ないのはなぜだろう。


「私のは」


「はいはい、どうせ『トメの希望』だろ」


「ぶっぶー。『トメ兄の絶望』だよ」


「対義語かよ!!」


「実はこの貯金箱、底に穴が空いてるの」


「……そりゃたしかに、ずいぶん貯めたと思ったら穴が空いていて中身がカラだったら……絶望だな」


「トメ兄の人生みたいだね」


「もしもし妹君よ、それどういう意味?」


「貯めたお金を私に奪われる人生。こないだ私が割っちゃった窓ガラス代、早めにお願いね」


「……そういえば請求書きてたっけ」


「暴れんぼうな妹もつと苦労するね」


「……ああ、ただいま絶望中」


 そんな感じでわいわいと作品を鑑賞している中で、僕はタケダ君の作品を見つけた。


 作品名『もどかしい』


 とってももどかしそうな貯金箱だった。わかりやすく言うとお金が入りにくそうだった。入れる人は確かにもどかしいだろう。


 ……いろいろあるんだろうな、タケダ君。 


 最近、誕生日のお話で突っ走ってきたので、ここらへんで普通っぽい話でクールダウンを(笑)

 

 ちなみにこの話、別に『そのいち』書いた後に『そのに』書くの忘れてたとか、そういうわけじゃありませんので。

 断じてありませんので。

 ……信じてください!


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