カカの天下244「魔法から覚め…るまであと五分だけ…」
「ふぁ……」
昨日大騒ぎしすぎたかな……ねむ……だる……カカです。
ぼんやりしたまま身体を起こし、周囲を見渡しました。
でっかい部屋、敷かれまくった布団、そしてそこに雑魚寝する皆……そか、昨日あのまんま全員ここに泊まったんだっけ。
ぽふ、と再び柔らかい枕とお布団に倒れこむ。
昨日は楽しかったぁ……
どうせ今日は日曜日だし、昨日の余韻に浸っていてもいいよね。
昨日……どんなことがあったんだっけ。
「そうそう……むにゃ……何等分かに切ったせんべいを、食べた後――」
「チョコせんべいって意外といけるね」
「いけぅー!」
姉とタマちゃんはまるで本当の母娘のように、仲良くサエちゃん味のせんべいを食べていた。私も食べてるサエちゃん味……おいし。サエちゃんだもん。
「こ、こらタマちゃん。チョコの部分ばっか食べないの!」
「シューはケチだね」
「けちー!」
「お、お姉様も言ってやってください――ってお姉様もしてるしっ!?」
「ん、このチョコだけ舐めた後のふやけたせんべいがまたイケるのよ」
「お行儀が悪い……ですけど、まぁお姉様がそういうなら……」
「ふやけてるー」
「……なんで僕のほうを見ながら言うんだい、タマちゃん」
シュー君のことをふやけたヤツだと言ってるんじゃないかな。
「んー、桃ソースかかったせんべいは、いまいちだなぁ」
「うぅ……トメさんにまずいって言われたっ」
「なんでサユカちゃんが落ち込むのん」
だってそれサユカン味だし。
「あむ……カカちゃんの先っちょ、おいしい」
や、たしかにサエちゃん、私味のせんべいの先っちょ食べてるけど……なんでかその言い方ドキドキするなぁ。なんでかわからないけど。
「あ、あの、サエ君、僕にもカカ君を食べさせて」
「言い方がなんかヤだからヤ」
そうだそうだ、出直して来いタケダとかいうヤツ。
「そうそう、魔女カカちゃん」
「ん、なに幽霊サエちゃん」
「今日はカカちゃんが魔女で、皆の主なんだよー。だからしもべに命令とかしてみたらー?」
「ほほぅ」
あれ、なんか皆固まった。
なんで皆サエちゃんのことを「余計なこと言いやがって」みたいに睨むんだろう。
「そだね、せっかく皆おもしろい衣装着てるんだし。それにを活かさないとおもしろくないよね」
「や、僕は着てるだけで充分おもしろいと思うんだけど」
「俺はおもしろい衣装着てないぞ!」
「タケダ君は一般人役でしょー。一人だけ普通の格好してるんだからー」
「なにをっ! ほら、あそこのテンカ先生だって普通の格好してるじゃないか!」
タケダ君が指さす先には、せんべいの他に用意された料理をマイペースにむしゃむしゃ食べているテンカ先生の姿が。
話を振られたことに気づき、こちらを向いたテンカ先生の格好は、確かに一見普通の格好に見える、が――
「むぐむぐ、っくん。オレだってしてるぞ仮装。ほれ、頭にネジついてるじゃん」
持ってるフォークで自分の即頭部にちょこんとついているネジを指す。
「これでオレもフランケンなシュタインだぞ」
「ネジひっつけただけでしょが! フランケンさん怒りますよ!」
「怒られてから謝る、それが学校クオリティ」
「それ、どっちかというと生徒がすることだぞ。テン」
しーらね、と我関せずに再び食べ続けるテンカ先生……よほどお腹減ってたのかな。
「なにはともあれ! 魔女の命令を発表します!」
放っておいたらいつまでも雑談しそうなので、流れを切って大声をあげた!
「吸血鬼サユカンが!」
「わ、わたしっ!?」
「ミイラ男トメ兄に!」
「僕か……なんか王様ゲームみたいなノリだな」
「襲いかかって血を吸う! 吸う場所は吸血鬼におまかせ!」
「ぇ、ぇ、えええええええ!?」
「ちょっと待て!! 吸血鬼が血を吸うのはわかるが、なんで相手がミイラ男なんだ!?」
「その包帯がなんのためにあると思ってるの?」
「どんだけ出血する予定なんだ僕は!?」
「ぷしゅー」
よからぬ展開に慌てるトメ兄と違い、顔を真っ赤にして機能停止するサユカン。吸うところを想像でもしたのかしらん。
「ふふふー、さすがカカちゃん。この配役の意味を一目で見抜くとはー」
「計算済みなのかこれっ!?」
「カボチャーズ、二人を無理やりにでも血をチュッチュさせるのだ!」
「イェス、ボス!!」
魔女の命令は絶対! シューカボチャはサユカンを、姉カボチャはトメ兄を抑えにかかる。
しかし――
「おりゃ」
「なっ、あのお姉様の羽交い絞めから抜け出した!?」
驚愕するシューカボチャ、悔しそうに顔を歪める姉カボチャに……不敵な表情を浮かべるミイラ男トメ兄。
「ふっふっふ……そう簡単にはいかないぞ。僕はな、三歳のころから姉に絞め技されながら色々されてきたんだ!」
……大変だったんだね、トメ兄の人生。
「違う! あたしはあんたが0歳のころから絞めていた! あんたが覚えてないだけで!」
「コノヤロウ!」
おー、姉弟決戦だ!
「いいぞー」
「やれやれー」
「やんや、やんや」
すっかりパーティの余興になってるね。私が望んでたのと違うけど、おもしろいからいいや。
「いくぞ、アネアネビーム!」
目から光線を出す姉!
「なんの、トメトメカッター!!」
包帯をカッターのように飛ばすトメ兄!
そして包帯がなくなり素っ裸になるトメ兄!
「く、究極奥義HENTAIか!?」
「いただきまーすっ♪」
「うわぁ、トメお兄さんの裸をみたサユカちゃんが本当の吸血鬼にー!!」
「カカ、いくら日曜でも寝すぎだ。そろそろ起きろ」
……んあれ、いつの間にか寝てた。
今の、どこから夢だったんだっけ?
「トメ兄、トメトメカッターできる?」
「なんだそれ?」
……やっぱあそこは夢か。ちぇ。
ま、いいか。
今日から私は、10歳だ!!
前回の続きを希望される読者様がいましたので、ほんの一部を書いてみました^^
いい終わり方だったから余韻とかイメージ壊れるかなぁと思ったけど、こういう形ならいいんじゃないかなーと^^
トメトメカッター!
……ちょと気に入ってます(笑




