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カカの天下  作者: ルシカ
242/917

カカの天下242「誕生日計画、発動前夜」

「……はぁ」


 こんちわ、ゆーうつなカカです。


 それというのもね、聞いてくださいよ。


 明日は私の誕生日なのにね、誰も覚えてくれてないみたいなのですよ。


 しくしく……


「明日どっかいこう」とか誘おうと思ったのに、サエちゃんもサユカンも休み時間はすぐどっか行くし、帰りはさっさと帰っちゃうしで結局誘えず……


 めそめそ……


 こーなったらせめてカレーの人にだけでも祝ってもらおうと『明日誕生日なんだー』とかメール送ろうかとも思ったんだけど……考えてみれば学校の連絡網とかにも生徒の誕生日が載ってたりするから、それを機会に私の正体がバレる危険がある……


 うーうー。


 あ、これは不満な音ね。うーうー。


「はぁ……これでトメ兄が覚えてなかったらグレるぞ」


 ……あ、でもそういえば前にサエちゃんにしてもらった心理テストで「心の奥に思っていることは口に出さないほうがいい」って言われたんだっけ。


 これって心理テストじゃなくて占いの結果みたいだなぁ。


 ま、いいや。ともかく、タダでさえ親友二人が覚えてくれてなくてガッカリ中なのに、これ以上イヤなことになってほしくない。


 でも誰も祝ってくれないのはいやだ!


 まるで私いらない子みたいだし!


 ……言わなきゃ、いいんだよね。




「ただいまー」


 よし、帰ってきた。


 トメ兄は帰ってくると、まず玄関に設置されているホワイトボードに目を通す。


「……なんだこれ」


 さぁ、私からのメッセージを受け取るがいい!


 ちなみに私が書いたのは……まず、タマゴの絵。その横に殻が割れて生まれた赤ん坊の絵。


「ん、と……桃から生まれたももたろー、か?」 


 桃じゃない! 上のタマゴの殻は上の部分がとんがってないでしょ!


「ん、これもしかしてタマゴか」


 気づくの遅い。


「バカだなあいつ。人間ってタマゴから生まれないのに」


 ……そなの? じゃ、どうやって生まれるのさ。


 今度聞いてみよう。


「で、その横には……」


 その横にはでっかく『日』と書いた!


 『生まれた日』という私のメッセージを受け取れ、トメ兄!


「――ああ、タマゴの特売日か!」


「ちっがぁう!!」


「お、カカいたのか。ただいま」


 思わず飛び出してしまった。


「それ!」


「それって、このホワイトボードか?」


「それ、明日なの!」


「そっか。タマゴの特売日は明日なんだな」


「特売日から離れろこの主夫!!」


「誰が主夫か!!」


 ああもう、たんじょうび、って言葉を伝えるのにはどうすれば……


「カカ、さんじょう!!」


「さっきから参上してるだろ」


「セイジ食堂の様子はどうだった?」


「はんじょうしてたぞ」


「私の上にあるのは!?」


「てんじょう」


「そんな感じの日だよ!」


「どんな感じだよ」


 ここまで『たんじょう』に近いヒントを出してもまだわからないかっ。


「ねえ、明日――」


「明日がどうかしたのか?」


 やっぱ覚えてないみたい……でも直接言うわけには……


「あ、明日、明日は、その」


「だから明日がどうしたんだよ」


 明日は私が生まれた日なんだよ!


「明日はオンギャー!! わかった!?」


「なにをわかれと!?」


「うぅ……オンギャー!!」


 私はヤケになって赤ん坊のように叫んでから自室に引きこもった。


 うぅ……グレてやる……


 こうなったら意地だ。


 明日誰か祝ってくれるまで、絶対誰にも誕生日だって言わないんだからね。


 それで誰も祝ってくれなかったらグレてやるもんね!


 お酒もたばこも飲んでやるんだから!!




「あー、もしもしサエちゃん? こっちは明日まで大丈夫そうだよ」


「さすがはトメお兄さん。ずっと一緒にいるお兄さんが一番バラしてしまう可能性がありますからね、心配してたんですよー」


「サエちゃん、うまく吹き込んだみたいだな。カカのやつ、あの様子だと意地でも自分から誕生日だなんて言わないぞ」


「ふふふー、いえいえそれほどでも。ではトメお兄さんはそのままとぼけ続けてください。私もサユカちゃんも準備、頑張りますのでー」


「まだサカ――じゃなくてサケイさんのとこにいるのか?」


「今夜は徹夜になりそうなのでー」


「……わかった。カカを寝かせたら僕もそっち行って手伝うよ。子供が徹夜なんかしちゃダメだからな」


「ありがとうございますー。お言葉に甘えてお待ちしてます、ではまたー」


「ふぅ……カカは幸せものだな。しっかし、あのサケイってじーさん誰なんだろ。サカイさんどこ行ったのかな」




「ほれシュー! ぼやっとしてないで手と肩を動かせ」


「はい、お姉様! ふふふ……あのプレゼント、カカちゃん喜んでくれるかな」


「なんか言った?」


「いいえ、なにも!」


「何か隠してる?」


「い、いいえ……」


「あたしに隠し事すると、握りつぶすよ?」


「どこを!? いえその、カカちゃんに飛びっきりの誕生日プレゼントを買わせていただいた次第で……」


「へぇ、やるじゃん! 皆いろいろやってるのねぇ。あたしもコレ、頑張らないとね!」


「弱いな僕……でもほめられたからいいや、っとぁああぁ」


「本番は明日だっ、まだまだ練習するよー!」




「ぺたぺたぺったんぺったんこ。はぁ……これって地味な仕事だわー。じゃなくて地味じゃー、か。おじいさんの真似忘れないようにしないと……娘の頼みだし……娘の……娘のっ! よっし、やる気出てきた! ぺたぺたぺったんぺったんこ〜♪ 娘の胸も〜ペッタンコ〜♪」




「……サエ君、これでいいのか」


「おー、タケダ君うまーい」


「へぇ、タケダやるじゃんっ」


「ふっ……母上の手伝いでこういうことは結構しているからな」


「男らしくないことはうまいんだねー」


「うぐっ、サエ君! カカ君を祝うために力を貸してと、君に頼まれたから俺はわざわざ――」


「サエすけっ、無駄口叩いてないでさっさとこれ仕上げるわよっ」


「うんー、グー」


「言ったそばから寝るなっ!」


「う、うんごめん……」


「まったくもう……スー」


「グー」


「こらサエ君サユカ君、二人とも寝るんじゃない!!」


「やかましいっ」


「タケダ君のくせにー」


「なっ、君らっ」


「ほい、助っ人登場。続きやっとくからおまえら寝ろ」


「トメさん!」


「じゃお願いしまグー」


「寝るのはやっ」




 不貞腐れて眠るカカも含め、思うことはただ一つ。


 ――明日がいい日になりますように。


 いよいよ明日ですね。

 さてさて、どうなることやら……


 ちなみにたばこを飲んだら死にますので、くれぐれもやらないように。

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