カカの天下240「買い物一つで運命決まる」
「今日の夕飯はなーにっかな♪」
「何にしようかね」
もうお腹がすいているのか、食べ物がたくさんある商店街を歩くカカは楽しそうです。
そんな元気な妹とは反対に「お腹へった……だるい」と元気のない僕、トメです。
夕飯の買い物にきた僕ら二人、カカはうきうき、僕はダラダラと商店街を散策します。
そんなとき、ふとお魚屋さんの張り紙が目に留まりました。
「お、そろそろブリが旬だな」
「ぶりぶり?」
「続けて言うな」
なんか下品だから。
「今日はブリでいいか?」
「いつでもブリッとするスタンバイはできてるよ」
「だからその表現やめれ」
なんでかトイレが浮かぶじゃないか。
「すいませーん」
たくさんブリが並んでるけど、僕は魚の選別なんかできない。だからいいのを選んでもらおうと、手近なお魚屋さんのおっちゃんに声をかけた。
「あいよっ、なんだいにーちゃん」
「えっと――」
「ブリッと一発ください!」
僕の声を遮ってエライことを言ってくれるカカ。ええかげんにせぇへんとしばくで?
「えっ!? こ、ここでかい? いやぁ、大胆なお嬢ちゃんだなぁ……」
「ノらなくていいですから」
なんで恥ずかしそうにお尻押さえてんだおっちゃん。
「はっはっは! いやな、似たようなことを言った子供がほかにも二人くらいいたもんで、ついなっ」
豪快に笑うおっちゃん。
まさかとは思うけどその二人、最近カカが感染したんじゃないかと疑われてる「サ」がつく二人じゃなかろうな……まさか、ねぇ。
「改めまして、おっちゃん。いいブリくださいな」
「おっちゃん、いいのブリブリしてくださいな」
「カカ、おまえもう黙れ」
「いいじゃねぇかよ! 冗談の一つくらいよ。人が悪いなー、にーちゃん」
「悪いのはこの妹の性格です」
「違うよ、トメ兄の育て方が悪いんだよ」
「んだとぅ」
そんなこと言われたらちょっと本気で凹むだろうが!
「まぁまぁお二方。このブリに免じて仲直りしねぇか?」
む、綺麗な切り身。おいしそうだ。
「照り焼きにでもして食いなよ!」
「照り焼き……ちょっと時間かかるんだよなぁ」
「てりてり!」
「蒲焼でもいけるぜぃ!」
「ほー、ブリの蒲焼はしたことないな」
「かばかば! ん、ばやばやのほうがいいかな?」
「じゃ、それをもらおうかな」
「毎度!」
「まいまい!」
いちいちブリブリみたいに繰り返すカカ。子供かおまえは。
……あ、そうか。絶賛子供中だった。
「お」
切り身を包んでいた魚屋のおっちゃんが、何を思ったのか店頭に並ぶパックを一つ手に取った。お魚屋さんで一旦作ったブリの照り焼きだ。
そしてそれをカカにも見せるようにして、言った。
「もし照り焼きが食べたかったらよ! これをチンするだけってのもありだぜ!」
「ちんち――」
「やめんか二人とも!!」
悪ノリする二人に思わずツッコンでしまった。
「おもしろかったからこれおまけなっ!」
楽しそうに笑いながら、切り身と一緒にブリの照り焼きを袋にいれてくれるおっちゃん。カカもたまには役に立つ。
「じゃーね、ブリブリおじさん!!」
「ぶっ!? あの、お嬢ちゃん? さすがにそのあだ名は――」
無駄にでっかい声で叫びながら手をふるカカに、さすがのおっちゃんも大慌てだ。
すまないおっちゃん。あんたはこれからずっとブリブリおじさんだ。
「――あらカカちゃん。今日はうちで買っていってくれないの?」
そう、先日レモンを買ったときに名付けられた、この果物屋のおねーさんのように……
「あ、どうもモンモンおねーさん」
「ね、ねぇカカちゃん。いい加減そのあだ名はやめてくれないかしら?」
「や」
商店街に妙なあだ名が増えていく……
ま、いいや。僕のせいじゃないし。
今回はちょーっと下品な話でしたが^^;
昨日、ブリを食べたんで書いてみました(笑)
これ読んでブリ食べる気を失くす人出たら……お魚屋さんごめんなさい!!
ごめんなさいブリブリおじさん!!